第35話

 アレナこと千代田区ダンジョン。

 目の前にいる女性がダンジョンのコアであると告げられたご主人たち二人は困惑の表情を浮かべる。


『辞めなさいよ?それ。いきなり説明もなしに衝撃の事実のみを伝えるやり方。物語としてそちらの方が面白くなるとかいう謎の理論で驚かされる側は溜まったものじゃないわ』


 そんな二人に対して……というより僕に対してアレナは呆れたような声で返す。


『初めまして、二人とも。私はアレナ。人間たちの間では千代田区ダンジョンと呼ばれているものよ』


 そして、アレナは僕を無視して二人へと自己紹介の言葉を告げる。


『ダンジョン、と言っても安心してちょうだい。何も私は貴方たち二人を害するつもりななんてないから』


「……ッ」


「……ふぅ」


 ご主人たち二人へと安心するよう呼びかけるアレナであるが、それに対して二人は警戒で返す。


『ま、まぁ……それもそうよね。ダンジョンです。なんて言う相手を信用するわけないか。私としてはあのクソスライムよりも信用されていないという事実に仕方ない、というか当たり前のことと言えども傷つくけど』


 そんな二人に対してアレナは苦笑しながらしょうがないことだと割り切りながら僕への敵対心を見せる。


「僕の用意したサプライズは何もアレナのことじゃないんだよ。彼女の話は一旦終わり。深堀は後でいくらでもできるからね」


『……サプライズ。まったく、悪趣味ね』


「ふふふ。さぁ、本題に入ろうか」


 僕は眉をひそめながら言葉を漏らすアレナを無視して話を続ける。


「僕からのサプライズ……それは過去の英雄の凱旋だよ!かつては日本の希望として君臨していた勇者。そして、その勇者が落ちると共に台頭してきた二人の少女……奇しくも両者ともに希望となった者たちの道は、再び結ばれる」


 僕は言葉を止め、その場で足踏みを一つ。


「……ッ!こ、こ……は?」


 すると、この場にひとつの光が降り。

 半年前にいなくなり、既に死亡扱いとなっていた気絶している勇者パーティーの面々。


 そして。


 膝をつき、顔に苦悶の表情を浮かべながらも意識を保っている人類最強にして日本の英雄、勇者がこの場に君臨するのだった。

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