第34話

 どこに終わりがあるのかもわからないどこまでも続いていく白いだけの空間。

 そこに立つ一人の女性。

 黒と紫を基調とした露出の激しいドレスを身に包んだその女性の相貌は実に美しく、その真っ赤な瞳は怪しく光っている。

 床にまで届くほどに長い三つ編みの白銀の髪を持ち、その手には黒い日傘が握られている。

 

 どこか神秘的で人から外れたような美しさを持った女性は僕へと胡乱げな視線を向けてくる。


「良いじゃないか、久方ぶりの再開だぞ?そこは歓喜すべきところではないかね?」


『……はぁー』 

 

 それに対して千代田区ダンジョン……もといアレナは僕の言葉に対して深々とため息を返すだけで終わる。


「そこまで露骨にため息を吐かなくとも良いじゃんか」


『別に貴方は自分に対する部下の態度で気分を損なうような人間じゃないでしょう?』


「まぁ……というか、別に君は僕の部下でもないけどね?基本的に僕は仕事ないし」


『部下の如く私を駒のように使っておいて良くも言いますねぇ!……むむ。貴方はお姉さまから信頼されていますしぃ?そりゃ当然色んなことを頼まれるわけですよ!』

 

 僕に対して嫉妬全開で忌々しそうに吐き捨てるアレナに対して僕は苦笑を返す。


「そこはもうちょっと僕が特殊だから仕方ないじゃんか」


『それでも不満なものは不満ですけどね!新入りの癖に簡単に私を追い越していって!』


「それは僕の種族が優秀だからね」


『私だってそこそこいいはずなんだけどなぁ……スライムはズルい』

 

 僕がアレナと会話を弾ませていると、自分の両肩がご主人と珠美の二人から同時に捕まれる。


「誰なのかな?イムちゃん。その女」


「一体どこの誰なの?その女性……私はそんな子知らないんだけど」


『……』


 ここまで放置されていた二人が笑顔のまま疑問の声を上げる。


「あぁ……そうだね。ごめん。紹介するのが遅れた。彼女はアレナ。ここ、千代田区ダンジョンのコアだよ」


 そういえば紹介するの忘れた。

 まずは二人への紹介が先だったね。


「「……へ?」」

 

 僕の言葉にご主人と珠美は同時に固まった。

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