第18話
僕が知性を持っているという宣言に、政府から発表された僕という存在についての対処法は日本中で大きな驚きを呼んだ。
様々な意見が噴出し、対立し……当然、アイオーンチャンネルの知名度もバク上がりした。
いい意味でも悪い意味でも。
「おぉ……凄い」
「いつの間に……こんなことに」
そんな最中、ずっとセキュリティゼロのスラムのボロアパートに住んでいるわけにはいかない。
ということで、僕たち一家はスラムから抜け、街の高層マンションへと引っ越してきたのだった。
「凄いよ!イムちゃん!景色が良いし、広くて綺麗ッ!キッチンとかすっごぉい!」
アイオーンチャンネルの収益並びにダンジョンから採取して売り飛ばして資源の数々によって得られた金銭はとんでもないことになっている。
「……にしても、銀行?というものにたくさんのお金があるというのに実感が湧かない。スラムで生まれ、自分を拾った男に捨てられ、病が故に水商売も出来ずに肉体労働をしていた私がまさか……このようなところに」
ご主人の母、枯葉さんが新しい家の中心でぼーっと立ち尽くす。
「……信じられない」
「お母さん!やったね!これで、これで私たちも幸せに暮らせるよ!」
そんな枯葉さんをご主人が抱きしめ、涙ながらに口を開く。
「えぇ……そうね。あぁ、ありがと、和葉……」
親子の抱擁……実に素晴らしいものであるが、ちょっと口を挟みたいことがあったので、水を差すようで悪いが介入させてもらう。
『金は人生に豊かさをもたらし、余裕を生む。金の存在は大きい……けれど、お金が全てではないことは理解しといてね。良い家に住んで良い食事を毎日たらふく食うことが必ずしも幸せにつながるわけじゃないからね。家族は大切にするんだよ?』
僕は二人の前にそう文字を書いたプラカードを一つ置き、自分は自分で視線を壁の方へと向ける。
「……ぷぎ」
僕は自身の体をこれ以上無いほどに小さくする。
そして、魔法を使って壁へと肉眼どころか顕微鏡で確認しても認識出来るか出来ないか怪しいほどに小さな穴を一つ開け、自分の体をその穴に通す。
「ぷぎ」
もう二度と帰ってくることはない……そう思っていた前世の家へと入った僕は大きさを元に戻して地面へと体をつける。
そう。
ご主人一家が引っ越してきたのは前世における僕のお隣の家であった。
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