第13話

 五層のボス。

 それは牛頭人身の怪物、ミノタウロスである。

 3mを超える高い背丈から繰り出される巨大なハルバードによる一撃は人類を心の底から震え上がらせ、恐怖のどん底へと叩き落とす。


「『祝福』」

 

 そんな怪物を前にするご主人と珠美であるが……あくまで平常心は失わない。

 ご主人は自身が持つスキルを発動させる。


「今回のは速度!」


「了解ッ!」

 

 ご主人のスキルである『祝福』。

 その効果は単純で自身並びに味方へとバフをかけるというもの……どんなバフがつくかはランダムでキャンブル性が高いスキルとなっているが、それでも自分だけでなく味方までバフ出来るというスキルは強い。

 バフの倍率もかなり高いし。


「二人でかく乱しながら行くわよ!」


「りょ、了解!」 

 

 刀を持つ珠美と巨大な斧を持つご主人が機敏に動きまわり、ミノタウロスへと襲い掛かる。


『いやぁー、今回の祝福は大吉だね。ミノタウロスの攻撃は強力だが、大振り。避けるのはそこまで難しくない。相手の攻撃を避けやすくなる速度へのバフは実に良い』

 

 必死にご主人と珠美が戦っている中、僕は傍観者を決め込んでいた。


コメント

・やはり祝福の効果は高いな……ギャンブル性がなければなぁ。

・ミノタウロスこえぇ

・スライムは戦わないのか……。

・ボス戦でポテチとコーラを広げている図。世界初では?

・働けw


 コメント欄を見ながら僕はポテチをコーラで流し込む。


『僕が戦ったら瞬殺ぞ。ミノタウロス風情じゃ相手にならない』

 

 僕はコメントに対して言葉を返しながらご主人様と


「ガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!!!」 

 

 いつまで経っても攻撃が当たらないことにしびれを切らしたのか、攻撃の対象をご主人と珠美の二人から僕へと映す。


『こっちには来るなよ?』


 こっちの方へと向かってくるミノタウロスを自分の体で包み込んで捕縛し、僕への恐怖を強制的にこれ以上ないほど叩き込んでから二人の前へと返却する……これでもう僕に向かってくるなどと言う愚行は犯さないだろう。


「……そこまでの神業を見せられているとちょっとやる気を失うわ」


「……私たちって要るかな?」

 

 サクッとミノタウロスを対処した僕に対して二人は頬を引き攣らせながらそんなことをつぶやいた……なんか理不尽!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る