第7話
悲鳴が聞こえてきた方向に向かって走るご主人。
「……ッ!んのッ!こっち来ないでッ!!!」
「大丈夫ですか!」
声がしてきたところにたどり着いたご主人は声を張り上げる。
「……ッ!?和葉ッ!?」
「珠美さん……?」
二階層には相応しくない強力な魔物数体に囲まれ、絶体絶命のピンチを迎え、悲鳴を上げていた少女……それは少し前にご主人へと話しかけてきた珠美であった。
「って、キャッ」
予想外の邂逅に思わず呆然としてしまった二人。
そして、そんな状況でも一切空気を読まない魔物が容赦なく珠美への攻撃を加え、彼女は慌てて逃げる。
「あっ!スライムちゃん!お願い!」
『任せて』
今、珠美の前にいる魔物はご主人並びに珠美じゃどうあがいても勝てない類の相手だ。
ここは僕が出るべきだろう。
「ぷぎぃ」
ご主人の頭の上にいた僕はその場でジャンプ。
体から自身の体で作ったカッターを何十と飛ばし、その体を一切の容赦なく切り刻む。
「ぎゃぎゃ?!」
「ガァァァァァァァァァ」
「……ごぉ」
僕の攻撃に何の対抗策も取れない魔物たちはあっさりと全滅した。
「えっ、つ、つよ……」
あっさりと魔物を倒した僕に珠美が顔を引き攣らせながら畏怖の視線を送ってくる。
「ぷぎぃ」
「珠美さん。大丈夫ですか?」
そんな珠美へと慌ててご主人は駆け寄って声をかける。
「え、えぇ……大丈夫よ。そのスライムのおかげでね。助けに来てくれてありがと。和葉」
「いえいえ……これくらいは当然のこと、です」
ご主人は若干の緊張を滲ませながら彼女の言葉に頷く。
「あっ、ドローン墜ちてますよ。何かの動画の撮影ですか?あぁ、そういえば高校でそんな感じの宿題が出て……」
そんなご主人は戦いの余波にやられてか、力なく地面に落ちているドローンに気づいてそれを拾い上げる。
「あっ、待って……今、配信中だ」
「へ?」
仮面をつけていない僕を頭の上に乗せるご主人は呆然と声を漏らしながら自分の手にあるドローンへと視線を落とす。
ドローンにつけられたカメラはつやつやと輝き、目の前にあるものをバッチリと映している。
……ご主人は、珠美が自分と同じ配信者である可能性など一ミクロンも考えていなかったのだろう。
「ぷぎぃ」
僕は固まるご主人を無視して呑気に鳴き声を一つ上げ、ご主人の頭の上でもぞもぞ動きながら自身のベストフィットポイントを探る。
運命的な……例え、裏で仕組まれていたとしても周りから見ればまさに運命的でご都合主義的な、実に物語らしい
ようやくご主人の物語は二章を迎え、本格的に物語を膨らませていくことになるだろう。
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