第6話
僕の存在。
魔物である僕が日本に滞在しているという大きな問題が解決した僕は心置きなくご主人とダンジョンに潜っていた。
「テイムの契約って凄いわね……!なんとなくスライムちゃんの考えていることがわかるわ!」
テイムの契約。
魔物と人が結ぶこの契約の効果は多岐に渡る。
なんとなく互いに何を考えているのかわかるようになることからはじまり、互いの位置の把握、魔物における主人への攻撃を制限、魔物の殺意抑制、魔物の人への敵意抑制など。
様々な効果がある。
基本的には魔物が下で、主人となる人が上となるため、人は自分よりも遥かに弱い魔物でないとテイム出来ない。
僕の方が強く、ご主人のほうが遥かに弱い状態でのテイムの契約は珍しい……というか、前例がないことであろう。
『このなんとなくに慣れて。テイムしたてだとなんとなく漠然とわかっているだけで、全てわかっている、わかってくれていると勘違いして失敗するアホがいるから』
「な、なるほど……私も気をつける。今日は配信してなくて気楽だからね。存分に魔物と戦ってこの感覚に慣れるよ!」
『良いよ。その意気』
僕はやる気を漲らせるご主人に頷く。
今、僕たちはダンジョンにやってきているが、その様子を配信していない。
なので、ご主人も仮面をつけずに素顔でダンジョンにやってきている。
「魔物ー、魔物。魔物ー」
元気にパイプを振り回しながらご主人は気分良く前へ前へと進み、自分の前に立ちふさがった魔物と戦って倒していく。
ご主人も最初の頃と比べたら随分と強くなった。
今のご主人であれば魔物に囲まれても問題なく対処出来るだろう……そろそろ三階層へと降りてもいい頃合いかな?
「……ん?」
僕がそんなことを考えていると、ご主人が足を止める。
「今、誰かの悲鳴が聞こえたような……ッ!スライムちゃんもそう思うよね!うん!こっちの方向から、で合っているよね?うん。合っている。同意してくれてありがと!スライムちゃん!悲鳴を見過ごすことなんて出来ないもんね!助けにいかないと……いざと言うときはお願いね!スライムちゃん」
『ご主人が死にそうな状態になったら手助けに入るよ』
「ありがと!それじゃあ行くね!」
ご主人は僕を頭に乗せた状態のまま、悲鳴が聞こえてきた方向に向かって走り出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます