第11話
スライムでありながら、ブラッドウルフをひれ伏させた僕に、それの飼い主である和葉。
礼二が無様な姿を晒しているときは、クラス中にそれを笑う雰囲気が出来ていたが、それが過ぎ去り……少し経った頃。
よくよく考えればあれだけブラッドウルフを顎に使ったスライムってなんかヤバくね?
という雰囲気がクラスの中で出来上がり、すっかり誰も和葉に寄り付かなくなっていた。
「ふんふんふーん」
僕の性でご主人がぼっちになっちゃったのかと危惧したが、それでもご主人は授業中に鼻歌を歌うほどにご機嫌だった。
……元よりご主人はぼっち体質のいじめられっ子だったのだろう。
「……スライムちゃん。帰ろうか」
ちょっとしたひと悶着があった僕の初めての学校は。
ご主人の楽しそうな、友達とキャッキャワイワイするような青春の一コマを見ることは出来なかった。
「ぷぎぃ」
ご主人の友達百人計画も指導する必要があるのかもしれない。
コネは力だ……金や、才能。権力。
時としたらそれら三つの力すらも上回るのがコネなのだ。人と人の繋がりに信用。信頼。
たとえ、ご主人がコミュ障で人見知りの陰キャだとしてもコネは作らせておくべきだろう。
■■■■■
ご主人を陽キャにする。
そんな僕の野望は置いておいて、まずは今のこの現状。
ご主人の極貧生活をどうに死かしなければならない。
「よし、準備完了」
防具も何もなく、ちょっとだけ錆びついたナイフに、落ちているのを拾ってきたのかな?と思うようなパイプを持って準備完了だと宣うご主人。
どう考えてもダンジョンに潜る装備じゃないご主人の装備を見て舐めているのかと、叱りを入れたくなるのを我慢し、僕はこれまでずっと温めていた企画を出すことに決める。
「……ぷぎぃ!」
僕は鳴き声を上げると共に自分の体から白いプラカードを出す。
「え、えっと……ご主人、動画を撮ろう……?ん?えっ……こ、これはスライムちゃんが……?」
そう、文字が書かれたプラカードを。
『機材は僕が持っているから……ご主人は僕の言う通りに従って、色々やってくれればいいよ!一緒にトップ配信者を目指そうね!あっ、一応この仮面もつけておいて』
僕が体から吐き出す大量の配信用機材に仮面。
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええ!?」
明確な知性を見せた僕を前に、自分の前に広げられた高価な機械の数々を前にご主人は驚愕の声を上げた。
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