外れスキル【ご主人様】で甘やかし上手なチートお姉ちゃんをメイドにしたら、いつの間にかスキル効果【メイドの土産】で姉の分まで経験値をもらって最強になっていた僕
ご注文その11 僕のために争うのはやめてぇ! ……普通これ性別逆じゃない?
ご注文その11 僕のために争うのはやめてぇ! ……普通これ性別逆じゃない?
遠くの空ではゴロゴロと雷の音が轟いている。
まるでいじめっ子が気まぐれに発する怒号のようにも聞こえて、過去のトラウマから思わず身震いをしてしまう。
「ど、どうしてルイン、君がいるの……? マルコの家にいるはずじゃあ」
声まで震えて情けないったらない。
そんな僕を鼻で笑いながらルインは理由を説明し始めた。
「いやなマル豚の家に行ったらよう、あいつ『昔の俺とは違うんだ、もうあの時みたいに子分じゃないんだしお前の言うことはきかない!』なんて生意気言ってきたからムカついてボコろうとしたんだが、家族まで出てきちまったから通報される前にお前ん家に避難してきたんだよ」
マル豚――マルコはすごい。
少し太っていたというだけでマル豚という蔑称がつけられ、子分扱いをされながらも僕と同じようにルインにいじめられていたというのに、今ではそうやって彼に反抗できるまで成長しているだなんて。
それに引きかえ、僕は……。
「更に大きくなってるけどルインくん、だよね? 久しぶりー、五年ぶりくらいかな?」
暗く沈みがちな僕に代わって、マナ姉が朗らかに話しかける。あえてそうすることで話の矛先を自分に向けさせようとしてくれているんだ。この辺りも昔のまんまだ。なにもかも同じ光景過ぎて、いっそ笑いたくなるよ。
「お、俺のこと覚えてくれていたかマナミィ。それにしてもなんだよ、その格好は? まさかエトラの趣味か」
「そうなのー。実は現在私、エトくん専属のメイドさんなんだよー」
「……へぇ、エトラ専属のメイドねぇ」
ルインの蔑むような、あるいは憤怒のまなざしを向けられる。僕にはそれを面と向かって受け止めるほどの度胸はなく、つい顔をそらしてしまう。
まして剣の稽古と称して痛めつけられたのが昨日の今日だ、いまだダメージの残る体のせいもあってすっかり彼に対して怯えてしまっているわけで。
……かっこ悪いな、僕。
こんなダサい姿本当ならマナ姉には見せたくないけども、自分の意思に反して体は正直な反応だ。
『これがお前の本質だ』って誰かに言われているみたい。
「私もさっき旅から帰ってきたところなんだけど、ルインくんの方はどうしてこの町にいるの? あ、もしかして里帰り?」
「いや、お前に用があってきたんだよ」
「私に用?」
怪訝そうな声をもらすマナ姉。
それがどんな内容であれ、明らかによくない用件であることは彼の人柄を考えれば明白だ。
しかし用件を伝える前になぜかルインはこほんと咳払いをし、「あー、あー」と喉の調子を確かめてから、
「――単刀直入に言うぞマナミィ、俺の女になれ」
そんな衝撃的な一言が告げられる。
俺の女になれ、というのはどう考えても彼なりの粗暴な告白に違いない。
いつの頃からかは分からないけど、どうやらマナ姉に思慕の念を抱いていたようだ。
「ガキの時どいつもこいつも俺にビビっていた中で唯一堂々と接してきたのはお前だけだった。こいつは強い女だって思ったさ、だから俺はいずれお前を自分のモノにすると決めた」
そこでルインは「だが」と言葉を一旦区切り、
「昔からお前はなにかある度にエトラエトラ。耳にタコができるくらいでよ、俺のことなんかまったく眼中にねぇし。面白くねぇったらありゃしなかったぜ」
ひょっとしてルインがことさら僕をいじめてきたのは、そうやって自分に興味を向けさせようとしてのことだったのか。
「姉が弟のことを気にかけるのは当然でしょ」
「だけど義理の姉だろ? お互いに成人したんだ、もういい加減そんなにせもんの家族ごっこから解き放たれて自分の人生を謳歌してもいいはずだって、お前もそう思うだろエトラ?」
「ぼ、僕は……」
「エトくんに振る話じゃないよ、自分の人生は自分で決めるから。誰かに強要されたわけじゃなくて、私は私の意志でエトくんと一緒にいるの」
「そうは言うけどよ、強い男と交尾して子供を生むのが女の一番の幸せってもんなんだ。その点俺ならエトラなんかよりずっと強いし、冒険者として金を稼ぐだけの甲斐性もある」
「エトくんの方がいじめっ子のルインくんより強いよ」
「俺がそこのクソザコより弱いって? おいおい、冗談キツいつっーの」
そう言ってルインはひとしきり笑ってから、
「――なら、勝負しようぜ。もし俺がエトラに負けたらお前を諦めて大人しく引き下がるさ。だけど俺が勝ったらお前は俺のモンだ、マナミィ」
「そ、その勝負、僕たちに受けるメリットなんてないじゃないか」
聞き流せない提案にようやっと口を挟む。
「別に断ってくれてもいいんだぜ? マナミィにはなにもしないからよ。……まあ、お前はどうなるか分からないけどな、エトラ」
体のいい脅しだ。
「けどよ、マナミィ曰くお前はこの俺よりも強いんだろ? ならなんの問題もないじゃねぇか、大事な姉に寄り付くハエをサクッとぶっ叩きゃーいい」
それができるんならな、口にこそ出さないが暗にそう言っているように聞こえた。
……でも、悔しいけど無理だ。
図らずもルインと剣を交わしてみて、少なくとも今の僕なんかじゃ彼には敵わないと分かった。
よって、この勝負は受けてはならない。
ルインもマナ姉にはなにもしないと言っているし、それなら僕が我慢すればいいだけだ。
臆病者と馬鹿にされたっていい、断ろう、うん、そうしよう。
なのに――。
「いいよ、その勝負受けてあげる」
「ま、マナ姉⁉」
せっかく断るつもりでいたのに、なんで引き受けちゃうんだ。
まさかマナ姉は僕が負けることを期待しているのだろうか。
「よし、決まりだな。なら勝負は明後日にするか、不調を言い訳にされたくないしな。つーことでよ、それまでにお前もちゃんとコンディションを整えておけよ。お前の実力、楽しみにしてっからよ」
こうしてなし崩し的に因縁の相手と再戦する運びとなったのだった。
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