半妖に恋をした陰陽師
花燐
第1話
半妖に恋をしていた陰陽師①
第0章〜設定集〜
・中高一貫校である光山学園に転入した高校一年生。
・京都の高校に通っていた。千本鳥居の方が実家。
・母親が狐の妖怪(安倍晴明の母親、葛の葉の遠縁)、父親は勘当された陰陽師一族の息子な半妖。簡単な術は教わっている。
・人間時はごくごく普通の髪色と目をしている。
・妖怪の姿は金髪に金色の目。狐だから瞳孔は縦気味。ちゃんとミミもシッポもある。もふもふ。
・話し方はまったりゆったり。語尾が伸びる。
成績も素行もいい。あとめっっっちゃかわいい。
本人に聞いた!質問コーナー!!
Q.篝火界人くんについて
A.「ふふ、幼馴染だったんよ〜〜〜。私が引っ越してからは会えなくなっちゃったけどね。」
Q.半妖に目覚めた、とは?
A.「半妖は産まれた時からじゃあ無いんよ〜〜。まずはね〜、小学校くらいの年頃になると妖怪の姿に変わり始めて〜、中学卒業して高校半年目〜くらいに人間の姿と行き来できるようになる……、って感じかなぁ〜〜? 私の場合は、だけど!」
✄-----------------‐✄----------------✄-------------‐✄
・中高一貫校である光山学園に高校から通う高校一年生。
・父親が陰陽師一族の安倍家の息子、母親は一般人な現役高校生陰陽師。
・髪は背中の中ほどまで伸ばしており、常時ポニーテールに纏めている。 目の色は黒がかった緑。
・妖怪退治を既に始めているが格好に頓着しないタイプのイケメンな為、普通にTシャツジーパンで札や御幣を持ち歩きしている。 ちなみに退治道具は学校時もカバンに忍ばせている。
・得意な術は攻撃的なものが多い。 実は札無しの祝詞だけでも術の使用が可能。
・話し方というか口が悪い。あと見た目の特徴だとピアスバチバチに開いてる。左右合わせて10個くらい。あくまで合わせて10個。あとこの間舌ピも開けたらしい。 余談だが、頭は良い。成績は良いが素行が悪め(教師主観では)。
本人に聞く!質問コーナー!!
Q.狐尾美菜実さんについて
A.「美菜実は俺の大事なヒト。」
Q.陰陽師といえば狩衣などだと思うのですがなぜ着ないのですか?
A.「動きにくいじゃねぇかよ、狩衣。それにいくら活動時間が夜中だとは言え、警察がいるんだ。絶対にお世話になりたくないからな。真面目に説明しても信じて貰えないし。 」
篝火
・界人の父親であり現役陰陽師。 四十路近くでありながら、とても若々しい見た目(二十代後半くらい)をしている。
✄--------------‐✄---------------✄--------------‐✄
第1章~転校してきた謎の少女~
第1話〈出会い〉
ココは私立光山学園高等部。
夏の暑さのまだ残るこの学園に一人の少女が転入してきた。少女の名は狐尾美菜実。
人間ではなく、狐の半妖だ。 半分人間、半分妖怪の血が流れる彼女は、社会勉強の一環として、普通の人間が通うここの学園へとやってきた。
本来半妖は妖怪にも人間にも忌み嫌われている存在だが、時代が進むとともにその風習は薄らいでいっている。 その為か、彼女のように人間社会に溶け込んでごく普通に生活を送っている半妖も珍しくない。 だが少なくとも、未だに良くない印象をもっている人間がいることも確かだ。 なので半妖も半妖で、自ら進んで正体を明かそうとはしない。
もしバレたりしたら、差別、迫害、いじめなどに合う確率も、下手したら研究材料として捕獲され、非人道的な扱いをされ殺されてしまう可能性だってある。 出来るだけ伏せておくのが通常だ。
そしてこれは運命か必然か、そんな彼女の転校してきたこの学校には、かつて妖怪、半妖の天敵でもあった現役陰陽師の篝火界人が在学していた。 現代の若者らしく、だるい授業に身を投じ、毎日を適当に生きている如何にも今風な若者だった。
9月某日 私立光山学園高等部 一年A組教室内
篝火界人が在籍しているここA組の教室では、ホームルーム前特有のガヤガヤとざわついていた。
男子生徒はふざけあったり、スマートフォンで音楽を聴いたり動画を見たり。 女子生徒はコイバナやなんてことのないガールズトークに花を咲かせている。 A組の生徒が各々集まってワイワイしている中、教室のスピーカー越しにキンコンカンコンと、よく聞くであろう予鈴のチャイムの音がA組及び校内全域に鳴り響いた。
タイミングを見計らっていたのかは分からないが、それと同時に教室の前方のドアから担任の教諭がガラガラという音を立てながら入室し、ざわついている生徒に"席に着けー"と若干けだるそうな口調で着席するよう促した。
「おら、さっさと席に着け〜〜。 今日から、このクラスに転校生がくるから紹介させろ〜。」
「えーっ! 転校生!? 男? 女? 」
「なんでこんな微妙な時期に?! 」
担任が転校生といった途端に、静まり返っていた教室内が再びわいわいがやがやとにぎやかになっていった。 確かに教室の外には人がいるような気配がしている。 教室のドアの小窓には女の子ぐらいの身長をした人影がちらちら見え隠れしているのが確認出来た。 おそらくその人影こそが、噂の転校生なのだろう。
しかし、その転校生の気配を良くは思っていない生徒が一人いた。 現役陰陽師である篝火界人である。 界人は机に肘をつき、拳を自身の顔に当てて、不機嫌そうに教室の外から漂うただならぬ妖気を感じ取っていた。
(廊下から凄く薄いけど、妖怪のニオイがすんだよな……。 転校生って……まさか妖怪? イヤイヤ、いや………、でも先生が見えてンだよな。 見えているということは妖怪じゃないはず……。 )
曲がりなりにも陰陽師のはしくれである界人は、転校生の正体について思考を巡らせた。 様々な可能性を一つ一つ当てはめていき、最終的に辿り着いた答えは"半妖"という結論だった。
(は、半妖……? 何だって半妖がこの学校に転校なんざしてくんだよ。 まぁ、どーでもいいけど。 )
「よし、もういいだろ、狐尾。 いいぞ、入って来い。 」
先程まで扉の前で動いていた影が動きを止め、がらがらと扉を開けて入って来た。
教室にいて、入り終えるのを見守っていた生徒たちは息を飲んだ。 入って来た少女が、あまりにも美人だったからだ。
「狐尾、 美菜実です。 よろしくお願いします。 」
(っ、狐尾……? )
へにゃ、とどこか妖しげでけれど誰もが見惚れるようなかわいらしい笑顔で紡がれた言葉。その雰囲気全てに生徒たちは見惚れていた。
だが、一人だけ見惚れない生徒がいた。 先程、 美菜実の事を「半妖」と結論づけた現役陰陽師の界人だ。
(狐尾……、どこかで……。美菜実……?
み、なみ……、みぃちゃん……?! )
がたん、と音を立てて倒れる椅子。
その音に驚いたクラスメイト達の視線が界人へと集まる。 だが、そんなのを気にせず立ち上がった界人は呟き、少女まで歩みを進める。
「うそだろ……?!」
彼は、そのどこか見覚えのある笑顔と聞き覚えのある名前についてずっと思考を巡らせていた。
そして、思い出した。
「みぃちゃん……。みぃちゃん!!!!」
みぃちゃん。
その幼心で名付けたであろう渾名を美少女に向かってかけてみる。
界人が幼い頃、幼稚園児だった頃に仲が良かった少女。よくよく見れば、美菜実にも「みぃちゃん」の面影がある。
その、みぃちゃん、というあだ名を聞いた美菜実もまた、思い出す。
「かぁくん……?!かぁくんなの……?」
界人は驚きのあまり、さらに前へ足を踏み出そうとした。 ぱんぱんっ、と変に静まり返った教室に響く手を叩く乾いた音。
界人や界人に注目していたクラスメイト達が咄嗟に前を見ると、呆れた顔をした教師が叩いていた手を腰あたりに戻しながら言った。
「感動の再会してる所悪いなぁ。 後にしてくれや。 とりあえずホームルームを始めっからさ。 あー、そういや狐尾の席決めてなかったな……。 」
知り合いなら席が隣のがいいだろ?
変な気を効かせてくれたのか、教師は美菜実の席を界人の隣に指定する。
惚けていた美菜実ははっ、と我に返るととてとてと、界人の隣……窓際の一番後ろの席に座った。
「よし、狐尾も座った事だし、ホームルーム始めるぞー。 おい、篝火。 いつまで立ってやがる。 いい加減座れ。 」
「あ、あぁ、すみません……。 」
そこから先、界人は授業にあまり身が入らなかった。 当然だ、幼い頃別れた幼馴染が突然陰陽師の自分が忌む妖怪の血を継いでいた「半妖」であったのだから。
同日正午 私立光山学園高等部内食堂
(小さい時はあんな妖怪っぽいオーラなんて出ていなかった。 ただの、普通の、ちょっとだけかわいい女の子だったのに。 なぜ……? )
界人は、いつも食べている食堂の蕎麦をただひたすらに口に入れて咀嚼する、という行動を無意識に行いながら頭の中ではずっと考えていた。
だからだろうか、目の前に考えている人物……美菜実がうどんの乗ったおぼんを持って座った事にも気づかなかった。
「かぁくん、ココ空いてる? 」
小さな頃から変わらないへにゃり、とした笑顔でそう聞いた美菜実。 だが、考え事に夢中になっている界人は気が付かない。 気が付かないのをいい事にそのまま界人の前の席へと座る。
(むう、かぁくん、何考えてるのよ〜〜。……、まさか気付いた?)
焦れったくなった美菜実は手を界人の方へ伸ばし、その頬を人差し指でつんつんっと押してみた。
「かぁくんのほっぺ、やわこいねぇ。 ふふふ。 」
すっかりお気に召したのか美菜実は頬をつつき回す。
「……さっきから誰だよ…………。 んえ、みぃちゃん? 何してんの? 早く食べないと時間無くなんぞ。」
界人はほんの少しイラッとした様な顔で目の前の彼女を見る。
「もぉ、やっとこっち見たんだから!ねぇ、かぁくんてば、何をそんなに考えてたの? 」
美菜実は伸ばしていた手を自分の方に戻し、箸を握ってうどんを啜る前にそう聞いた。
界人は黙った。 いくらなんでも美菜実が「半妖」だと決め付けるのは早すぎる。 そう思ったから考え事を口には出さず、ただひたすらに蕎麦を啜った。 だが、さすがに何も答えないのはまずかろう、と思い一言だけ言った。
「なんでもない。 みぃちゃんは気にすんな。 」
美菜実は不服そうにむう、と口を尖らせたが、界人の醸し出す雰囲気に飲まれたのか、それ以上何も言わなかった。
美菜実は、お通夜のように暗くなってしまった雰囲気に耐えられなくなったのか明るい話題___2人が食べているものだ___を話し始めた。
「ねぇ、かぁくん。 ここの食堂のご飯、美味しいね! 」
美菜実は先程自分の中に浮かんだ「界人が自分の正体___半妖である事に気がついている」という考えをとりあえず捨て、再会を楽しむことにしたのだった。
「ん、だろ? 蕎麦も美味いから次は蕎麦も食べてみてくれよな。 」
(みぃちゃん、いつか話してくれよ。君の、正体を……。 )
自分へ蕎麦の勧誘をしている界人が、そんなふうに思っている事など一欠片も思わずに。
美菜実が転入してきたこと以外は、普段と変わらないごく普通の一日であったその日の夜。
学生である界人は陰陽師一家の篝火家で唯一、夜のパトロールが免除されている。 しかし、その日の当番であった父親が昼間のうちに怪我をしてしまった。 その為、界人に白羽の矢が当たったのだった。
「ッ、父さん。 怪我、平気? 」
腕に包帯を巻き、布団に横たわる父へそんな言葉をかける。 眉毛を下げ、申し訳なさそうにその人は界人へと言った。
「悪いなァ、界人。 明日も学校だってのにパトロール変わってもらっちゃってよ。 」
「大丈夫だよ。 ささっとしっかり見回ってきて、早く寝るから。 父さんは怪我を治すのに集中して? 」
じゃあ行ってくるね、と襖を閉めながらそう言って界人はパトロールへと赴く。
光山商店街、界人や美菜実の通う私立光山学園へ向かう途中にある商店街だ。 真っ直ぐの道に立ち並ぶその商店街を抜けると、目の前が学園である。
自宅の屋根から住宅の屋根伝いに来た界人は、そんな商店街の入口といえば、なゲートの上に立つ。
「うーん……、特に妖怪の気配が増えてる訳でもないし、今日も平和です……っと。 あ、みぃちゃんの気配。 こんな夜中に何してんだろ……、昼間より妖怪のニオイが濃いけど……。 」
パトロール日誌へそんなふうに書き込みながら辺りを見回す。 とある所を見た瞬間、妖怪を写すその瞳に、幼馴染であり転入生でもある美菜実の姿がうつる。
その姿には、確かに昼間にはなかった金色のモヤのようなものがかかっていた。
チラッ。 界人が見ていたのは一瞬だったはずだが、金色のモヤを纏った美菜実と目が合う。
「はァ? え、今目ェ合ったの? 嘘だろ??? 」
ぱちぱちと瞬きをしたその瞬間、目を開いた時には目の前に美菜実が立っていたのだった。
「界人くん、ここで何してるの? 」
篝火界人は絶望する。 想いを寄せている目の前の少女の姿は、どう足掻いても。 どんな逃避をしようと。
金色の狐耳と狐尾を持つ人狐の姿なのだから。
「ァ、み、ちゃ? その、それ、何、、? 」
美菜実の耳と尾を指さして口をはくはくと動かす界人。 パニックからか、過呼吸を起こしかけていた。
ぴこぴこと可愛らしく動く耳や尻尾。
よく見れば瞳孔も狐らしく縦になっている。
半妖に恋をした陰陽師 花燐 @Godeater_tourabu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。半妖に恋をした陰陽師の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます