クリスマスSS-④ クリスマス争奪クイズ大会2(陽菜視点)

 ところ変わってみおちゃんの配信室。


 マンションの一部屋を使っているのでスペースは十分。みんなで物置に改造されてるクローゼットからクイズ大会に必要なものを取り出して準備する。

 折り畳みの一人用の椅子に長机。クイズに答えるためのピンポンって押すスイッチ(名前は知らない)。あと○と×が書かれてる札に1人に1枚の小さなホワイトボード。

 クイズ番組とか使われてるフリップっていうのは高価なのでホワイトボードで書いて消せるようになっている。


 なんでこんなものがあるのかというとみおちゃんとゆうきくんたち、それにネットアイドルの女の子を呼んでクイズ大会をして配信したことがあるんだって。私は知らなかったのに恭介くんが見学したという情報が解せない。

 もちろん今回は身内の勝負事だから配信機材の接続はしてないよ。これで準備は完了。


「はい、それではクイズ大会を始めます」

 司会進行は今回のクリスマスにクリスマスイブの権利をすでに確保してクイズ大会で順番を競う必要がないしずくちゃんだ。

 ここにきて今さら疑問に思うんだけど今回のクイズのテーマって何なの? クリスマスネタだと私はちょっとこの世界の常識と違う部分があるから不利かもしれない。


「ルールは簡単。今からを出題します。解答者は陽菜ちゃん、みおちゃん、ひよりちゃん、まるちゃんの4人だけど恭介さんにも答えてもらいます。恭介さんの答えを正解として恭介さんと解答が被ったら3ポイント、他のみんなと解答が被ったら同じ答えだった人数分(本人も含む)のポイントが入ります」

 え~と、無駄に凝ったシステムだね。それで向かい側の席に恭介くんが座らされてるんだ……でも顔が見えないように上半身のところに衝立があるのは?


「恭介さんの表情を見てカンニングできそうな陽菜ちゃんがいるので恭介さんの顔は隠させてもらいました。もしも万が一ブロックサインなどのカンニング行為が認められた場合は失格にします」

「さすがに俺と陽菜でもブロックサインなんて準備してないって。そもそも今回のクリスマスに1人ずつで二人っきりの時間を作るって陽菜が言い出したことなんだしズルまでする理由がないから」

 しずくちゃんの警告に恭介くんがフォローしてくれる。うう、気遣いがありがたい。


「まあ、陽菜っちはズルするタイプじゃないし」

「陽菜ちゃんがズルするところは想像ができないな」

「陽菜ちんは正直なんだよ。そこは安心なんだよ」

 皆の言葉が嬉しい。この言葉が貰えたなら私はもう最後でもいいかも? 棄権しちゃうとか……


「それじゃあクリスマス争奪クイズ大会~恭介さんのことを一番理解できてるのは誰?~ を開催します!」

 しずくちゃんの宣言でクイズ大会が始まった。て言うか、そのタイトルなに? 絶対に負けられない戦いになっちゃうよ!?


「第一問! 恭介さんの誕生日はいつですか?」

 これはジャブってやつだね。ほら、全員の手がスラスラ動いてる。


[6月6日]


 これは全員の答えが一致。恭介くんの解答(模範解答?)と4人が一致ってことで一気に7点入る。

 うわぁ……このクイズって一問間違えたら追いつくの大変だ。


「一気に7点なんだよ。いつものテストもこのくらい点数が簡単に入ると嬉しいんだよ」

 まるちゃんがちょっと悲しくなるようなことを言っている。もっともまるちゃんは集中したときの記憶力は抜群なのでしずくちゃんの作ってくれる予想問題の模範解答集を暗記することで赤点は回避できるんだけど。


「それじゃあ次々にいくよ。恭介さんの……」

 そこからはみんなほとんど間違えずに正解を重ねていく。まるちゃんがケアレスミスで、ひよりちゃんがカタカナ言葉を知らずに日本語で書いて他のみんなとの一致ポイントを取り逃したりしたくらいであんまり差がついてない。

 現在のトップはみおちゃんと私。


 でも……決着をつけないといけない。

「それじゃあ15分ほど休憩をはさんで後半戦をするから。恭介さんもお疲れ様。ここから先はきっと差がつくから安心してね」

「そうなのか? みんなが俺のことをよく知ってくれてるのは嬉しいけどなんか恥ずかしいよ、このクイズ」

 恭介くんとしずくちゃんが話している。恭介くんが照れてるのは仕方ないよね。私もまさか恭介くんを題材にしたクイズ大会になるなんて思いもしなかったし。

 正解というより恭介くんがどう認識してるかっていう問題もあるので不正解が出てもいいはずなのにここまでみんなよくついてきている。


 休憩時間、しずくちゃんがオレンジ色と黒の幾何学模様の表紙のスケッチブックにサラサラと何かを描いていた。考えてみると今日のクイズ大会は急きょ決まったものなので、即興でクイズの問題をどんどん作っちゃうしずくちゃんが一番恭介くんマニアなのかもしれないけど。


「それじゃあ15分の休憩タイムは終了して後半戦を始めます。それでは皆さん席にどうぞ」

 しずくちゃんが声をかけて私たち4人が解答席に戻り恭介くんは特設の正解席に移動する。


「それでは後半戦をはじめます。まずはこれ!『恭介さんのは何㎝』ですか?」

 しずくちゃんが言った瞬間、頭の中が「?」マークで埋め尽くされる。

「し、しずくちゃん!? 今って言ったんだよね?」

「しずく? 俺の聞き間違いだよね? 聞き間違いだって言って」

 私と恭介くんの願いむなしく返事は無情なものだった。


「うん、恭介さんの身長は4問目で聞いたでしょ? おちんちんの長さで『ちん長』は何cmかっていう問題だよ」

「「!?」」

 しずくちゃんからの追い打ちに私と恭介くんが絶句する。


「さあ! 解答席の皆さんは手元のホワイトボードに答えをご記入ください」

 司会者がノリノリです。衝立の向こうの恭介くんはきっと真っ赤になって自分のボードに数字を書き込んでいるだろう。もしかしてこれってクイズを建前に堂々とセクハラしてるだけなんじゃ?

 そんな恭介くんに向かって私たち4人が解答ボードを並べる。


[20㎝](私)

[19.6㎝](みおちゃん)

[19.6㎝](まるちゃん)

[19.6㎝](ひよりちゃん)


「おおっと、ここで解答が別れましたね。それでは恭介さんの『正解』を見てみましょう」

 しずくちゃんがなぜか正解の部分を強調している。

「えっと……正解は『20㎝』この一年でちょっと成長したから」

 衝立からこっちを覗き込んで恭介くんが真っ赤になってる。ここまで恥ずかしがってるのは珍しいかも。ちょっと可愛い。写真撮りたい。


「ええ~、違うんだよ。きょーちんのちんちんは19.6㎝なんだよ」

「そうだよ。しずくだって一緒に測ったから分かってるでしょ? 朝勃ちの恭っちのおちんぽをみんなで限界までフル勃起させて測定したじゃん!」

「わ、私は寝ている恭介のを測るのはよくないと止めたんだぞ。確かに結果に関しては興味津々で教えて貰ったので同罪だろうが」

 ちょっと待って……私と恭介くんが寝てる時にそんなことをしていたの? 司会者のしずくちゃんの方をみんなが見ている。


「えっと……ルールで決めたように恭介さんが『書いた解答』が正解だから。この場合は陽菜ちゃんが恭介さんと一致で3点、他のみんなが3人一致で3点。全員に3点加算です」

 ちょっ、ひょっとして最初からしずくちゃんの手のひらの上だった? 私と恭介くんの答えが一致しても他のみんなの書いた答えが一緒だと同点って狙ってるんじゃ!?

 疑いのまなざしを向ける私と恭介くんの視線をしずくちゃんがさらっと受け流している。


「それでは最終問題はイラスト問題です。この問題で正解したら一気にポイント3倍……なんてベタなことはないけど一応この問題で決着がつかなかったら同点で1位同士でじゃんけんして優勝決定ってことで」

 しずくちゃんの鶴の一声だけどそれでいいんだったら最初からじゃんけんで良かったんじゃ?


「はいっ、ここに4枚のイラストが描いてあります。ホワイトボードに貼るのでよく確認してください」

 そういうとホワイトボードにマグネットでさっき描いていたイラストを貼り付けている。

 ちょ!? そこに張り付けられたのは4つの乳首のラフイラストだった。鉛筆のみで描かれた乳首。


「ん……っと、あっ……」

 恭介くんが声を上げている。いや、分かるよね? これって私たち4人の乳首だ。おっぱいは描かれてなくて膨らみの上(膨らみのない人もいるけど)のぽっちの部分だけを見事にピックアップして描かれている。流石はしずくちゃん。イラストが上手い……とか言ってる場合じゃないって。


「陽菜ちゃん、このイラストはなんでしょう?」

「えっと、それは……わ、私たちの乳首」

 答える私も真っ赤だよ。しかもちょっと感じてる時の、恭介くんとエッチしてる時のむにゃむにゃ勃っちゃってる時の乳首だし。


「ここで問題です。恭介さんが一番好きな乳首はどれでしょう。A~Dからお答えください」

 しずくちゃんが最終問題を発表する。た、確かにこの問題なら全員違う答えを出すだろうから恭介くんの解答次第で優勝が決まるけど。うう、恥ずかしいけど私の解答は……


「さあ、解答がそろったみたいです。それでは一斉にホワイトボードをオープン!」

 しずくちゃんの合図で手元のボードを上げる。


私[A]

みお[C]

ひより[B]

まる[A]


 そして恭介くんの解答は……「A」!

 嬉しいけど死ぬほど恥ずかしい……Aのイラストは私のだから。


「はい、最終問題の得点は陽菜ちゃんとまるちゃんが5点、みおちゃんとひよりちゃんが0点。というわけで優勝は陽菜ちゃんで決定しました」

 しずくちゃんが宣言して壮絶なクイズ大会が終了して25日の夜、恭介くんと過ごすのは私に決まったのだった。

 うう、勝てたのは嬉しいけどなんだかいろんなものを無くしたクイズ大会だった気がするよ。

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ちょっとした小話

陽菜「なんでまるちゃんはAの乳首を選んだの?」

ちなみにA:私 B:まるちゃん C:みおちゃん D:しずくちゃんで自分の乳首を選べたのは私とみおちゃんだけだった。

まる「自分の乳首って言われてもどれだかよく分からないんだよ。女子の乳首なんて気にしたことがないから分からなかったんだよ」

恭介「ひょっとして貞操逆転してて女性の裸に価値がないから気にしてなかったってこと?」

ひより「そうだな。いきなり乳首がどれかとか言われても日頃から観察なんてしてないから分からなかったぞ」

まる「そうなんだよ。恭ちんのおちんちんを選べって問題ならまるも間違えないんだよ」

陽菜「しずくちゃんは日頃から観察力と記憶力がすごいから描けたって感じなのかな? だったらちゃんと自分のを選べたみおちゃんは?」

みんなの目線がみおに集まる。

みお「ち、違うし。あーしはオナニーしすぎて自分の乳首とか舐めたりとかしてないし!」

しずく「みおちゃん……頑張れば頑張るほど私たちの立場が悪くなるから諦めよう」


そんな会話がクイズセットを片付けながら交わされたとか交わされなかったとか。


※長くなったけど分割すると新年になっちゃうのでそのまま公開。

よいお年を。

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