多々良恭介誕生日SS(陽菜視点+ヒナ視点)
6月6日18時 ~多々良恭介誕生日当日~
(陽菜視点)
「恭介くん誕生日おめでとう!」
「「「「「「「「誕生日おめでとう!」」」」」」」」
パンパンパンッパーンッ!!!
私の合図でみんなが誕生日おめでとうをいうとクラッカーを鳴らす。クラッカーの中のリボンがパーって広がって恭介くんに絡みつくように乗っかっている。
恭介くんの目の前には吹き消されて細い煙を立ち昇らせている「1」と「8」のローソクの刺さった大きなバースディケーキ。
「ありがとう……みんな忙しいのにこんなに集まってくれて本当に嬉しいよ」
恭介くんが満面の笑みを浮かべている。こういう時に素直にありがとうっていうところが恭介くんっぽくて本当に可愛いと思う。
「恭介さんのお祝いをするために受験勉強を一日休むために昨日までしっかりやってるし」
「恭介だって私やのどかと一緒に竜王旗に向けて今日までしっかり稽古をしてきただろう。体を休める日は必要だぞ」
「今日はまるのババロアを食べて欲しいんだよ。ババロアはまるの大好物なんだよ」
「あーしはそこまでいつでも忙しいってわけじゃないし……どっちかって言うと
「きょーすけのために配信を一日休むのは告知済み! 心配しないでいいから一緒にいて欲しいな」
「恭介先輩、『先輩のためにお祝いする健気で可愛いゆうかちゃん』ってことでもっと人気出るから大丈夫です! あ、でもアイドルは恋愛禁止ですよ」
みんなそれぞれ恭介くんに声をかけてる。今日は恭介くんのお家のリビングで誕生日のお祝い。
いつものみんなにゆうきくんとゆうかちゃん、日奈子さんとうちのお母さん……ゆうきくんがいるものの女性率がとっても高い。
今は夕方の18時だからもうちょっとしたら恭介くんのお父さんが帰ってくるとは思うけど。
「は~い、じゃあケーキはいったん下げてみんなで誕生日のご飯にしよう」
私が仕切っちゃってるけどいいのかな? いいよね、恋人だもん。
恭介くんがふ~ってやって吹き消したローソクをケーキから抜いてからケーキを下げる。
テーブルの上に並んでいるのは日奈子さんとうちのお母さんが二人で作ってくれた晩ご飯。いや、ディナーって感じ。ミニハンバーグとかトンカツ、唐揚げにシューマイって……何というか普通ならメインのおかずがドンドンって感じで大皿に盛ってある。好きなように取って食べられるようになってるけど全部恭介くんの大好物だね。
本当は全部私が作ってあげたかったけど、今日は平日の木曜日だから仕方ない。
「やっと18歳になった! これで陽菜と結婚できる」
恭介くんが若干気が早いことを言っているのでちょっと赤くなってしまう。私が18歳にならないとだから6月の25日だよね?
「こらこら、陽菜ちゃん。陽菜ちゃんも18歳になったらって顔してるけどお母さんも日奈子さんも今すぐの結婚は反対よ。
「でも、お母さん……」
私がお母さんに一言いいかけたら日奈子さんが口を開いた。
「そうね、親としては2人が結婚するのは凄く嬉しい。それに2人の気持ちはよく分かってるしね。でもね、陽菜ちゃん。今結婚すると周りはヘタをすると変に勘繰っちゃうと思うの。だからって隠して結婚するよりもちゃんと結婚式を挙げて祝福してもらえるようになるまで待ったらどうかな」
ゆうかちゃんはいきなり結婚とかそういう話を聞いて目を白黒してるけどここにいるメンバーの中で私と恭介くんが別の世界の人間っていう事を知らないのはゆうかちゃんだけだもんね。
後でゆうかちゃんにも
「そんなこと言ったって……」
ゆうかちゃんのことより今は恭介くんだ。18歳になったらすぐに結婚できるって思っていたみたいでちょっとだけ拗ねちゃってる。うう……私の彼氏が可愛すぎる件。
「恭ちゃん、恭ちゃんがずっとそうやって私と結婚して幸せにしたいって思ってくれてるのは本当に嬉しいよ。でも焦らなくても……私は、
そう言って手を繋ぐとちょっと恥ずかしいけどみんなの前で恭介くんのほっぺにキスをする。
「陽菜……幸せにするから」
恭介くんが真っ赤になりながらみんなの前でぎゅぅって抱きしめてくれる。
「うん、うん、私は元気だし絶対元気な赤ちゃん産むから……みんなもいるし絶対幸せになろうね」
恭介くんが未来を想像して満面の笑みで答えてくれた。
後日、
(ヒナ視点)
「恭、誕生日おめでとう」
私はそう言うと恭のお墓にひしゃくでお水をかける。あの世で喉が渇いてないと良いなって思う。
恭は絶対に天国に行ってると思うからひどい目にあってる心配はしてないけど。
「ヒナちゃん、お線香火をつけたからあげてくれる」
日奈子さんから赤く灯ったお線香を渡される。お線香立てにお線香を立てて手を合わせる。
今は6月6日の18時。水泳部の部活が終わってから日奈子さんの家に行って仏壇にお参りした。その後で「今からお墓参りにも行ってくる」と伝えたら車を出してくれて日奈子さんも一緒に来てくれた。
恭のお墓までは家から自転車で30分の距離だから自力で行って帰ってくるつもりだったけど子宮頸がんの手術が終わってまだ一ヵ月の私のことを配慮してくれているのもあるし、女子が一人で遅い時間まで出歩くことを心配してくてるっていうのもあると思う。
「恭、私は毎日頑張ってるから。あのね……この前子宮頸がんの手術をしたの……赤ちゃん、産めなくなっちゃった。でもね、恭がいないこの世界で赤ちゃんを産みたいなんて思わないから。それでしずくがね……」
小声で恭にいろいろと最近あったことを報告していく。恭がいたらそうならなかったかもしれないこともいろいろとあるけど今の私は友達や村上みたいないいやつに囲まれて幸せだ。
病気で苦しかった記憶しかない小学生時代、荒れてしまって爛れた生活をした中学生時代、そして恭と一緒に過ごせた高校時代と裏切ってしまった苦い記憶、みんなと一緒に過ごすようになった今を思い浮かべる。
気付くと私の頬は涙で濡れていた。
「恭、恭、恭……」
唱えるように恭の名前を呟き続ける。お墓の前でしゃがむようにして手を合わせている私の体を後ろから覆うように日奈子さんが抱きしめてくれる。
「ヒナちゃん、何度だって言うけど恭介はヒナちゃんを助けられたことが一番幸せだったはずだから……ヒナちゃんはヒナちゃんの思うままに生きてくれていいんだからね。恭介は……私の息子は絶対にヒナちゃんが幸せになることを願ってるから。私には分かるの」
日奈子さんの声も涙で震えている。でも子供を守る母親の声、日奈子さんは私のことも……他の世界から来た私のことを受け入れて
たっぷり10分は時間がたっただろうか、私は立ち上げがると日奈子さんに決意をこめた笑顔を向ける。
「帰りましょう、日奈子さん。なんだか恭が笑顔でいる気がして……明日からも頑張れそうです」
空を見上げる。私と入れ替わった陽菜は笑顔になれてるといいな。
そんな風に他人を思いやれる余裕が自分に生まれたことが少し不思議で誇らしかった。
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ちょっとした小話
(誕生日パーティーがお開きになった後、多々良家のカーポートにて)
日奈子「それじゃあ、みんな車に乗って。私とさちえで送っていくから」
恭介「みんな今日はお祝いに来てくれてありがとう。ゆうきに
まる「今日は泊ったらダメなんだよ?」
陽菜「ま、まるちゃん!? ゆうきくんとゆうかちゃんの前だからね」
ゆうか「はぁ……陽菜先輩。隠せてるつもりなんだったらとっくに私は知ってるんで気にしなくていいですから」
陽菜「え”っ!? いつの間に(私と恭介くんが
ゆうか「それは(みんなで集まってそういうことしてるのは)気付きますよ。金曜日の夜は絶好の配信スケジュールのはずなのに二週に一回はみお先輩が用事があるって言うし……まる先輩とかひより先輩って金曜日は朝からソワソワしてるし」
陽菜「ん? ひょっとして……ああ、ゆうかちゃんが気付いてるのって
ゆうか「ん? ひょっとして陽菜先輩……さらに隠し事してます?」
陽菜「(ギクッ)えっと……今度ゆっくり恭介くんと一緒にゆうかちゃんには説明するから」
ゆうか「なんで私に説明? ああっ!!? ひょっとしてお兄ちゃんはもう隠し事の内容知ってるんでしょ! ズルいから! 」
ゆうき「ボクときょーすけは親友だからね。親友との間に隠し事なんてないから」
ゆうか「ムキーッ! 陽菜先輩、絶対約束ですからね!」
後日、ゆうかにも元の世界との入れ替わりの秘密を説明した。
★ここまで長いこと番外編を書いてきましたが、大体これで埋まっていなかった部分の物語が埋まったかなって思っています。
去年書かなかった恭介くんの誕生日を書くことが出来ました。
そこをゆっくり埋めていければというのとここから約3年後の結婚式に参加してくれた人との絆を描くのが番外編の目的でほぼ時系列に沿って物語を書くことができました。
ここから先は2年生で描いた行事と被る場面も多くなるので番外編の在り方をちょっと検討中です。希望とかこんなの読みたいとかあればコメント欄にリクエストお願いします。
新作のアイディアもいくつか出てるのでそっちに注力していくかもしれないです。
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