番外編⑩ 貞操逆転女子……鬼が好きすぎな件(陽菜視点)

 2月3日は節分。そして今年の節分は土曜日だった。

 恭介くんと私たちは二週に一度みんなでみおちゃんのマンションにお泊りしてるんだけど今日はちょうどそのお泊りの日に当たる。

 というか金曜日土曜日の二日間のお泊りだから今日の節分はみんなで過ごす初めての節分だ。


「去年の節分はまだ入院してたからなぁ……病院食に小さな袋の大豆がついてたけど年齢分歳の数も食べてないよ」

 大豆をフライパンで炒っているしずくちゃんの手元を覗き込みながら恭介くんが去年のことを思い出しているらしい。しずくちゃんが持ってきた地元の大豆……この辺の名産品に黒大豆があるけど今炒っているお豆は普通の大豆だ。

 というか、大豆を炒ってるところって初めて見たよ。うちのお母さんは普通に炒り豆のパックのやつを買っていたから。


 しずくちゃんがお豆を炒っている間に私は手早くご飯にすし酢を合わせて酢飯を作る。今日は手巻き寿司。

 恵方巻を買うよりも手巻き寿司の方が喜ぶ人がうちは多そうだから……絶対に喜ぶのは恭介くんとまるちゃんだ。

「ひなちゃん、卵焼きと胡瓜は切り終わったぞ。後は魚肉まぐろ蟹蒲かにかまと鶏肉にで良かったか?」

 ひよりちゃんがてきぱきと中に入れる具材の準備をしてくれる。う~ん、カニカマを脳内でひよりちゃんがどう認識しているかがちょっと気になる。漢字で書かれたカニカマなんて生まれて初めてかも。


「おに~のぱんつはいいぱんつ~つよいぞ~ つよいぞ~♪」とまるちゃんが歌っている。ああ、そんな歌あったなぁ……恭介くんと一緒に幼稚園の頃に歌ったし、何なら一緒に豆まきもしたことを思い出す。

「とら~のけがわで出来ている~エロいぞ~ エロいぞ~♪」

 おかしな替え歌にしてるのはみおちゃんだ。もう、子供の教育に悪いから……ってまるちゃんは同い年で子供じゃないんだけどね。


「陽菜は知らないかもしれないけど、元の世界だとトラ柄のビキニの鬼のヒロインがいてちょっとエッチなんだよ」

 恭介くんがトラのパンツのエロさについてみおちゃんの替え歌に乗ってしまった。

「へぇ、やっぱり貞操逆転してると女の子にトラ柄着せたくなっちゃうんだね。こっちの世界だと鬼そのものがエロいんだけどね。パンツ一丁でムキムキで上半身裸とか……もうセックスアピール凄すぎて……女の子からは下手すると桃太郎より人気があるかも」


「なるほど……確かにこの世界貞操逆転世界で男の鬼はエロいな」

 恭介くんが訳の分からないところで感心している。

「というわけで恭っち……あーしはちゃんと恭っち用にいろいろ準備してるからちょっとこっちに来て」

「まるも手伝うんだよ」

 お皿を並べたりという手伝いをある程度終えて手すきになっていた恭介くん、みおちゃん、まるちゃんの3人がダイニングキッチンを出ていく。

 可愛い女の子2人から手を引かれたら恭介くんが抵抗するわけがないわけで……この後のオチは容易に想像がついた。


「いつもは私たちがコスプレの準備する時に籠っている配信部屋に恭介さんを連れ込んだってことは、やっぱりそういう事よね」

「ああ、恭介が鬼役をしてくれるなんて……吉備津神社の豆まきよりもご利益がありそうだな」

 しずくちゃんとひよりちゃんがちょっと興奮気味。う~ん、私は元の世界の感覚で男の人の上半身裸はあんまりエッチに感じないから他のみんなの興奮がいまいち理解できない。


 ついでに言うと昨日の夜だってみんなで裸の恭介くんといっぱい愛しあったのに……

「「陽菜ちゃん、それは別腹!!」」

 しずくちゃんとひよりちゃんから分かってないなぁって感じで言われる。うん、多分一生分からないよ。恭介くんの体はカッコいいって思ってドキドキするけどエッチだって思うのはおちんちんくらいだもん。


バタンッ!


「じゃ~ん、本日のメインイベント。豆まきタイムだよ!」

 ドアが開いて頭に角をつけられてトラ柄のパンツを履かされた半裸の恭介くんが配信部屋から出てくる。手で胸を隠すこともないし堂々と立ってるから上半身が丸見えだ。

 恭介くんも恥ずかしくないから別に気にしてないんだけど……


「キャーーーーーーッ! 恭介さん最高!! 写真撮影は? 撮影はOKなの?」

「恭介……ちょっと待ってくれ。あまりにもいい体すぎて……豆をぶつけるなんて……くっ、私の負けだ……殺せ」

「いや~、恭っちって筋肉質だしここまで鬼のコスプレが似合うなんて……これはめちゃくちゃバズると思うよ」

「きょーちんは世界一カッコイイ鬼なんだよ」

 貞操逆転女子この世界の女の子……鬼が好きすぎな件。


 この後トラ柄のベストを着てから写真撮影になりました。みおちゃん!! ベストまで準備してるなら最初から着せてあげて! あと、恭介くん。分かってて上半身裸で出て来たでしょ!


「鬼は~外~、福は~内~」「「「「鬼は~内~、福は~内~」」」」

「ちょっと待って……私だけ鬼さん恭介くんを追い出そうとしてるみたいになってるし!!」

「あはは、こんな恭っちみたいな鬼ならずっと家にいて欲しいっしょ?」

 みんなで豆まきをして恵方巻を食べて……夜は鬼退治エッチ? で盛り上がったよ。


 鬼の金棒……うう、恥ずかしくて内容は書けないよ。私まで鬼が好きになっちゃう節分の一夜でした。

 -----------------------------------------------

 ちょっとしたこぼれ話

陽菜「でも鬼ってもじゃもじゃ頭じゃないとダメなんじゃないの? 恭介くんみたいにサラサラのストレートヘアって違うんじゃないかな?」

しずく「陽菜ちゃんって小説は読むけどあんまりマンガは見ないんだっけ? 最近の鬼で髪の毛がモジャモジャだったりパンチパーマだったりするキャラクターはいないよ」

まる「まるが見てる深夜アニメに出てくる鬼もたいがい長髪でカッコいいんだよ」

ひより「桃太郎に出てくるようなみたいな鬼は少ないのだな」

みお「恭っち……あーしが清楚モード(※生徒会長選挙参照)の時に使ってるウィッグならあるけど……使ってみる?」


恭介とみおの2人が一旦配信部屋に姿を消す。


ガチャッ


陽菜「かっ……カッコいい!!!!!!! 恭介くんのロンゲ!!! ロンゲの恭介くん!!!! はぁはぁ……」

パシャパシャシャシャシャシャシャシャッ!


一同(確かにカッコいいけど……陽菜ちゃんって結局彼氏がどんな姿してても好きなんだなぁ)


という会話があったとかなかったとか。


 節分ひとつとってもおかしなイベントになっちゃう皆は凄くエッチだと思います。

 次回更新は2/11を予定ですがバレンタイン2/14に合わせるかもしれないです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る