第243話 今日の犠牲者はみおちゃんだった(陽菜視点)
私のお腹が盛大に鳴っちゃったので皆が泣き笑いになってなんとなく場が和んじゃった。
うう……食べすぎただけでお腹を壊したとかじゃないんだよ。たまにそういう音が出ることってみんなだってあるよね? そんなに笑わなくてもいいじゃない。
でも、私の顔のすぐそばでまるで
それにみんなも私が元々この世界にいた姫川
「よし、それじゃあ善は急げね。まずはパパとリモートで繋いでお隣から日奈子さんと旦那さんを呼んできましょう」
お母さんがそういって部屋を出ていく。それからは怒涛の展開。
あっという間に恭介くんの家族と私のお父さんにも私たちが別の世界から魂が入れ替わったって話を報告する流れになっちゃった。
恭介くんが泣いてる……日奈子さんに抱きしめられて、その日奈子さんの肩に恭介くんのお父さんが手をのせて慰めている。
そうだよね。入れ替わった多々良くんは生きているかどうか分からないんだもんね。
「それでもあなたが、目の前で恭介が生きている私は幸せよ。だって恭介であることには変わりないんだもの。恭介は別の世界でも私が産んだ恭介なんでしょ? 他人が恭介の体に入ったんじゃないんだから。
もしこっちの恭介があっちに行けなかったんだったら残された向こうの私の方が辛いはずだから」
「そんなことないよ母さん。辛さにどっちが辛いとかないんだから……俺のことを恭介って認められないならもっとちゃんと恭介になるから」
「バカ! 何言ってるのよ。あんたが溺れたって聞いてどれだけ心配したと思っているの。目が覚めてちょっと性格が明るくなったかなぁって思ったししょっちゅう夢精するし、おちんちんがヤンチャすぎるって思ったけど、若いからいろいろあるんだって思ってた。それでも恭介が生きていてくれるのが一番幸せなんだから」
聞いている私までもらい泣きしてしまう。ところどころ恭介くんの秘密がいろいろ暴露されちゃって私も周りにいるみんなもちょっと赤くなっちゃってるけど。
そうなのだ、恭介くんのお父さんとお母さんは日頃の恭介くんの話が聞きたいからと私たちも親子の告白の場面に立ち会わせてくれたのだ。
だからその後はちょっと湿っぽいけど和気あいあいとした空気の中でみんなでお話をした。まだちょっと残っていた私の誕生日ケーキを食べたりしながら何時間もお話をしていた。
みおちゃんのスマホに入っていた(実はコピーして貰ったので私のスマホにもひよりちゃんやしずくちゃんのスマホにも入っている)恭介くんの剣道大会決勝の動画を見て、日奈子さんが嬉し泣きしていた。
「こういうのはちゃんと親に見せなさいよ、恭介」
「はぁ!? 母さんに自慢話するなんてカッコ悪いこと出来るわけないでしょ」
ふふ、お母さんの前だと恭介くんってあんな感じなんだ。ちょっと新鮮。すっかり本当の親子みたい。
恭介くんのお父さんはリビングの隅っこで私のお父さんとリモート飲み会を始めている。たまにまるちゃんが恭介くんのお父さんにお酌しにいってあげてる。
いつもお家でああやってお父さんにお酌してあげてるのかも。
動画を見終わった恭介くんのお母さんは大人気だ。しずくちゃんとひよりちゃんは一生懸命恭介くんのカッコいいエピソードを力説している。
そろそろ時計の短い針がてっぺん近いのに一生懸命起きていたひよりちゃんが一緒にお風呂に入ったエピソードを恭介くんのお母さんに暴露してしまったりちょっとしたバタバタもあった。
「恭介に陽菜ちゃん以外にもこんなに仲がいい子が沢山いるなんて知らなかったわ。
お風呂まで一緒に入ったなんて、ひよりちゃんに責任取ってもらってちゃんとお婿にして貰いなさいよ」
「だから、俺の世界だと一緒にお風呂に入ったら責任取るのは男の方なんだって……ってどっちが責任取ってもひよりと結婚する話じゃん」
「わ、わたしはきょうすけと結婚できるなら責任なんてどうでもいい」
ひよりちゃん、寝ぼけてるけど寝ぼけてる間のことを忘れない人だったよね? 後ろから一発殴って記憶を飛ばした方がいいかもしれない。
隣からぎゅぅって恭介くんの腕を抱きしめる。
「恭介くんは私のだから。結婚の約束も小学校の6年生の時にしてるんだから」
おおッ! 周りから声が上がる。
「陽菜ちゃんズルい。私が一番最初にこの世界に来た恭介さんと仲良くなったのにそれよりもずっと前に結婚の約束してたんじゃ勝ち目がないじゃない」
しずくちゃんに抗議されるけどこれだけは譲れない。ズルくてもこの人は奇跡が再び合わせてくれた私の
「それじゃあ、夜も遅いからお暇しますね。お父さん、帰りますよ。恭介は泊っていってもいいわよ。積もる話もあるでしょ?」
「え? イイよ、帰るよ……流石に女子ばっかりの部屋に泊まるのは無理だし。みんなとはまた話せばいいから」
ガシッ
「さびしいじゃないかきょうすけ……さびしいから一緒に泊まっていってくれ」
ひよりちゃんだよ……寝ぼけてても身体能力はいつものままだから困ってしまう。前に泊まりに来た時は抱き枕にされて身動き一つとれなかったし。
ガシッ
「そうだよ、きょーちん。いつも師匠と一緒に寝てるなら今日も師匠と寝ればいいんだよ」
まるちゃん!? いつも恭介くんと寝てるわけじゃないんだよ。
ムグッ み、みおちゃん? 二人を止めようとした私の口をみおちゃんが塞いでくる。
「まあまあ、絶対に手を出さないって約束するから私たちも恭っちと同じ部屋で寝るくらいは許してよ。恭っちと陽菜ちゃんが寝てるベッドには誰も立ち入らないから」
「そうね、正直今はいろいろとありすぎて混乱しちゃってすぐに寝れそうにないもんね。出来たらいろいろと聞いてみたいし本当になにもしないから恭介さんも同じ部屋にいて欲しいかも」
そこまで言われると意地を張っちゃったら私が悪いみたいな気もする。今日みんなが私たちを受け入れてくれたのもすごく嬉しかったし、こんな時間までお話することになっちゃってるのも私が口を滑らせたせいみたいな部分があるし、私よりも恭介くんから話してもらった方が分かりやすい部分も多そうだもんね。
「うん、今日だけだからね。恭介くんにも迷惑かかっちゃうし。一応ひよりちゃんと恭介くんは大会近いんだから」
来週の週の中頃に水泳と剣道の地区予選があるそうなのだ。平日で私たちは授業があるから応援に行けないけど。
本当にちゃんと入部届けを出して真似事じゃなくて水泳部のマネージャーになっておけばよかったなって思う。
その後、結局恭介くんも入れて6人で私の部屋で寝ることになった。私と恭介くんがベッドで寝て、他の皆は床に敷いたお布団で寝てるんだけどちょっとぎゅうぎゅうで今日の
「計画が違う~、ひよりっち放して……みんなが寝静まったら恭っちの童貞を奪うつもりだったのに~」
すーーーー すーーーー
もうぐっすり寝ているひよりちゃんは起きる気配すらない。
その状態で安心してみんなでお話して限界だなっておしゃべりを止めたのは夜中の3時くらいだったと思う。
「漏れちゃう……ひよりっち放して。トイレに行かせて。お願い、この歳で友達の家でお漏らしとか恥ずか死んじゃうから……」
明け方みおちゃんの悲痛な叫びで目を覚ますと。まるちゃんが私のベッドにもぐりこんで恭介くんに抱きついて寝ていた。
それはもうプンプン怒っておいたけど思い出すとまるちゃんだけはベッドに行かないとか一言も約束していなかった。う~ん、一番油断できないのはまるちゃんなのかも。
あ、みおちゃんは恭介くんがひよりちゃんを起こしたら一発で起きたので膀胱破裂直前に救出されたよ。
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週四日の18時に最新話公開中
次回更新は8月11日です。
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