第213話 更衣室で道着に着替えて道場に戻って

 今が5月の中旬で6月15日の大会まであと一ヵ月ちょっと。

 チームの最高戦力が小烏こがらすなのは間違いないから一人目は小烏で決定。

 俺は責任もあるしチームの一員になるとしてあと最低3人いないとエントリー出来ない。

 翌日が日曜日だったのでいつものメンバーに緊急招集をかけることした。午後ならどうにかみんなの都合がつきそうなので小烏道場集合で集まったらきちんと相談させて貰うことにする。

 今回は男女混成チーム(ただし男子は二人まで)ということになるのでゆうきにも声をかけている。


 小烏道場は俺の家と高校の最寄り駅から6駅も離れているので遠くまで来てもらうみんなにはちょっと申し訳ない。

 ただ現時点で学校の剣道部にお世話になれる話じゃないので今日に関しては最初から小烏道場を使わせて貰う。

「ひよりちゃんのお家に行くの初めてだからすごく楽しみ」

 陽菜はニコニコ顔。剣道の大会に出るために選手を決めるなんて伝えてないからね。

 陽菜にとっては新しく遊びに行ける友達の家が楽しみで仕方ないんだろう。ニコニコしてる陽菜が可愛い。


 最寄り駅で合流したしずくが何かを察しているのか少し緊張した顔をしている。運動神経がいいしずくにはちょっと期待している。

 丸川はいつものように楽しそう。反対側の駅からだからすでに電車に乗っていた藤岡に抱きついてなにか話している。丸川の運動能力にもかなり期待している。

 藤岡は……体力ないからなぁ。体つきはこのメンバーの中でも一番しっかりしているけど陽菜の家でのお泊り会後のランニングで走る前から轟沈していた姿が頭から離れない。


 ゆうきはさっきから俺の腕にしがみついて離れない。電車が揺れるって言ってもそこまでじゃないからやっぱり体幹が鍛えられてないのが問題なのか?

 体幹が鍛えられてないと剣道でも実力を発揮できないだろうから選手になってもらうのは難しいかもなぁ。でもせっかく男子が二人入れる枠があるんだから適性の確認はさせてもらいたい。


 小烏道場の門の立派さに一同で驚いた(とくに陽菜と丸川は開いた口がふさがらなかった)後、剣道場へ。

 騙し打ちのような形で剣道大会に出るために協力してくれと頼んだにもかかわらずみんな二つ返事で了解してくれた。

「当たり前だよ! ひよりちゃんのためだったら私たち頑張っちゃうんだから。それにひよりちゃんと恭介くんのお願いを断る人なんてここにはいないよ」

 陽菜の言葉に小烏が目じりの涙をぬぐっている。本当に俺たちの刀剣女士は涙もろいな。


「ありがとう。大会は勝ち抜き方式、つまり先鋒が勝っている限りは次鋒以降は竹刀を握る必要さえないから私が先鋒で全力で頑張ろう。

 死ぬ気で優勝まで全員抜きしてみせるからみんなは後ろで見ていてくれ」

 小烏が感動のあまりにとち狂ったことを言っているから小烏の隣に座っていた俺が頭を二度ほどポンポンってしてから正面に並んでくれている皆に告げる。

「ひよりはこう言っているけど大会だから何が起こるか分からない。だからこそみんなで少しでもいい結果が出せるように協力してくれ」


 まずは更衣室で道着に着替えて道場に戻って防具の付け方から説明だな。俺は何度か小烏に剣道の手ほどきをして貰っているからみんなのフォローに回ろう。

「ゆうき、男子更衣室はこっちだ。俺たちはみんなより早めに着替えて防具の準備をしよう」

「う、うん。いつも水泳部で一緒に着替えてるはずなのに改まっちゃうとちょっと恥ずかしいね」

 更衣室でゆうきが顔を赤らめている。

「そうか? あ、新品もあるから安心してくれていいぞ」

「し、新品? 新品って?」

「もちろんふんどしの。流石に下着の一種だから俺の使い古しとかイヤだろ」

「きゃっ」

「きゃ?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ゆうきの絹を裂くような悲鳴を聞いてみんなが男子更衣室に駆け込んでくるまで10秒もかからなかった。

 -----------------------------------------------

 7/23の5話更新はこれにて終了です。

 明日からは1日3話公開

 毎日朝6時と昼12時夕方18時に最新話公開となります

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る