第203話 もし玉砕したら骨は拾ってあげるね
しずくに告白された。正確にはしずくに告白したら付きあえるって言ってもらった。
今の俺たちの置かれてるおかしな状況の中での最大限の告白、この貞操逆転世界だと女の子から告白はそれほど珍しいことじゃない。
とはいえ相手はあの岩清水しずくだった。
俺がこの世界に来てから一番お世話になった女の子。
この子がいなかったらこうやって立ち直って問題なく学校に通ってみんなと仲良くなれたかも一緒に進級できたかどうかも分からない。
俺を登場人物にした同人誌を描いているのには驚いたがあれだって俺のことを好きだからっていうことに間違いはないし、内容にもものすごく愛情を感じたから何も言わなかった。
俺にとっては恩人としか言いようがない、そして大好きな女の子からの告白が嬉しくないはずがない。
桜の木の下で二人きりになってしずくと向かいあう。今日のしずくは最近やっと見慣れてきたお嬢様スタイル。
委員長の頃のイメージも強いけど、眼鏡を外してからのしずくにはずっとドキドキさせられてきた。しずくと付き合う自分を想像してみる。絶対に幸せになれるし絶対に幸せにできると思う。どんな困難でも二人で一緒に乗り越えられそう。でも……
「しずく、俺は心に決めた人がいてその人に告白しようと思ってる。だからしずくに告白することはないんだ、本当にごめん。勇気を出してくれたのに」
「ううん、正直言うと私に脈がないのは分かっていたから。だって私のことを見る目とあの子のことを見る目が全然違うんだもん、あんなの勝ち目がないって何度も思わされちゃっていたから」
「そうか、そんなにわかりやすいのかな? なんかあんまり伝わってないような気がしていたし、彼女の心には俺以外の誰かがいるってことも分かっていたから……でも、もう決めたんだ。俺の方から告白するって」
「そうなんだ。応援する……とは言えないけど恭介さんが告白するつもりってことは何も言わないでおいてあげるね。でも他の誰かって……そんなことあるのかな」
しずくの最後の一言は小さな声、聞こえてはいるけど俺に返事を求めているわけじゃないらしい。
「この後、俺に出来る全力で惚れて貰って告白するから」
「そう、もし玉砕したら骨は拾ってあげるね。何なら玉砕した者同士で付き合ってあげてもイイよ」
「フラれる前提で話すなよ」
そこまで話してしずくの顔を見る。今は微笑んでくれてるけど微笑みが痛々しい。
俺が上手くいったらその後はしずくはまたお見合いをさせられたり、琴乃
いや、そんなことを俺が心配したらダメなんだ。それはしずくを侮っていることになるし失礼すぎる。
「とにかく、明日からはランニングには参加しないから陽菜ちゃんと仲良くね。私はここから直接家に帰るから……荷物も実は陽菜ちゃんの自転車に積んでここまで持って来て貰ってるんだ」
相変わらずどこまでも先読みして行動してるんだな、しずくは。もう一度ごめんと出そうな自分の言葉を意志の力で抑える。
「それじゃあ、GW明けにまた学校で。学校では今まで通り仲良くしてね」
そういうとしずくは待たせている陽菜の方に歩き出した。
その後、しずくは陽菜の胸で号泣し陽菜と一緒に陽菜の家へ歩いて帰っていった。
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