第131話 一緒に四人で花見をしようよ

「ああ、二人とももう来てたんだ。ひょっとして待たせちゃった?」

 暗室の「現像中」の札を裏返しながらさんご先輩に聞かれる。


「今来たばっかりですよ」「暇つぶしのおもちゃがあったんで」

 正直に答えると俺と藤岡。丸川のことを暇つぶしのおもちゃはひどいと思うが感覚としては凄くよく分かった。丸川といると退屈だけはしない。


「え~と、多々良くんからの話っていうのは桜祭りでの小烏こがらすさんの奉納舞の撮影を光画部にお願いしたいってことでいいんだよね」

 さんご先輩が端的にまとめてくれる。当日、実は俺は後半の剣舞の手伝いのためにステージに上がらなくてはならない。

 もっとも元々撮影の腕もまだまだだし、一週間でどうのこうのと努力するくらいなら先輩と藤岡に任せてしまった方がいい。


「ええ、さんご先輩が写真撮影を、みおがビデオ撮影を担当してくれると助かります」

 みおのiPhoneは特撮の撮影で使われて劇場で公開するクオリティの映像が撮れる優れものだ。

 それを使ってインフルエンサーのみおが録画をすれば、#刀剣女士の新たな目玉になるに違いない。

「みおには小烏のメイクもお願いしたい。小烏を日本一の巫女さんにして欲しい」


「まあ多々良くんの頼みとあれば断る理由もないし、桜の写真自体は撮りたいと思っていたからちょうどいいんだけどね。週間予報では天気もいいんだっけ?」

「はい、週末まで晴天が続く予定です。桜の満開もちょうど重なるみたいで今年の桜祭りはかなりの人出が予想されてるそうです」

 町内会の人たちとの打ち合わせで聞いた話を伝えておく。


「じゃあちょっと早めにいかないとね。みおちゃんはそれで大丈夫?」

「ええ、あーしも始めた責任はあるし、撮影もフォローも続けるから安心してイイよ。恭っちのそばにいられるチャンスでもあるし」

 巻き込んでしまった俺からするとありがたすぎる言葉。

「二人ともありがとう。このお礼は必ずするから」

 二人に頭を下げる。本当にどんどん頭が上がらない人が増えていくな。

 助けてくれる人がいてくれるのは本当に幸せなことだ。


「じゃあ、撮影が終わったらひよりっちも一緒に四人で花見をしようよ」

 藤岡が言ってくれて、さんご先輩も賛成してくれた。

 まるの方を見るがまるはそこには混ざるつもりはないらしい、あくまでもおやつの時間にこだわるようだ。


「あんまり時間はとれないですけど、俺が弁当作っていくんで撮影が終わったら小烏こがらすも一緒に四人で昼ご飯を食べながら花見をしましょう。

 それとさんご先輩明日からの春休みも写真撮影のトレーニングに来ますから協力お願いしますね」

 さんご先輩に挨拶してから部室を後にする。


 当日は忙しそうだがとても充実した一日になりそうだ。

 -----------------------------------------------

 7/1,2は1日5話特別公開

 6,9,12,15,18時の1日5話更新となります

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る