第124話 岩清水が大声で叫びながら俺の耳を押さえる

 陽菜がみんなを連れて戻ってきた。これで部屋の中にいつもの昼ご飯のメンバーがほとんど揃った。

 ゆうきがいないがアイツがいると場が混乱しそうなので今回はいなくて正解かもしれないと思う。


 大きな座卓の長い辺に俺たち三人がついてその後ろにもう一列三人が並んで座り、座卓を挟んで反対側には琴乃刀自が座っておりその後ろに黒服リーダーさんが控えている。他の4人の黒服さんは衣服の乱れや打撲あとこそないものの肩で息をしていて部屋の外に控えている。


 小烏こがらすは涼しい顔をして息一つ切らさずに俺たちの後ろの列で藤岡と丸川の二人と一緒に控えていた。優秀なボディーガードであるはずの黒服さん達に全く仕事させずに完封して息も切らさないと本当に異常な戦闘能力の高さだ。

 藤岡と丸川の二人は琴乃刀自と面識があるらしく少し緊張している。

 まあ、琴乃刀自のボディーガードの黒服さん達の格好をまねてるわけでただ単に気まずいのかもしれないが。


 座卓について琴乃刀自の正面に座っているのが俺で俺の右隣が岩清水、左隣が陽菜となっている。

 さあ、ここから岩清水のことを琴乃刀自に分かって貰わないと。俺は名乗ったうえで話し始める。


「しずくさんは俺たちの高校ではクラスの委員長を務めていてまとめ役としてクラスをけん引してくれています。

 そして学校の成績も学年一位、その上他人に対する気遣いも出来て本当に面倒見がいいです。

 俺は12月に真冬の川で溺れかけてそのまま2か月以上入院していたんですけどその時にしずくさんがいなかったら、こうしてみんなと一緒に進級することは出来なくて留年していたと思います。

 クラスでも慕われていて、今すぐに婿を探さなくても本人がこれから生徒会長になったり自身で会社を立ち上げたり、そういう無限の可能性を持った女性です。

 琴乃さんがお孫さんの将来を心配していろいろと準備してあげたいという思いは理解できるつもりですが、これからのしずくさんをもう少し見守ってあげて欲しいです。

 だから今回のお見合いだけでなく少なくともしずくさんが自分でお見合いさせて欲しいという希望を持つまではお見合いなんてさせないであげて欲しいんです」

 学校での俺が知っている岩清水について語る。だが琴乃刀自はなかなか頑固なようだ。


「それはそれとして、別に見合いをして色々な男について知ることは悪いことではあるまい? しずくも男に興味を持つ年ごろであろう。その証拠にしずくの本棚には……」

 ワーワーワー!! 岩清水が大声で叫びながら俺の耳を押さえる。本棚に何があるのか聞くことはできなかった。


「多々良恭介、それがお主の本心か? 本心を隠してたままで動かせるほど私は軽くはないんだがのぅ」

 うう……岩清水には返しきれないほどの恩がある。

 ここは俺が全部を正直に白状するしかないのか? 俺自身が今回のお見合いが面白くないからここに乗り込んで潰しに来たって告げるしかないか?

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