第97話 朝から付き合ってくれてありがとう(陽菜視点)

 翌日、朝7時になったので私はそわそわしながら自転車のグリップを握って家の前で恭介くんを待っていた。


 今日の格好は中学時代のジャージ。高校になってからのジャージもあるのだがテスト週間の間に掃除の時間に使っていたので昨日持って帰って洗ってしまって乾いていないのだ。


 仕方なく中学時代のジャージを着たが胸の所に大きく「姫川」って書いてあるし、そもそも胸がパツパツできつくって文字が引っ張られて変形してしまっている(なぜかお母さんが絶賛していたが)。

 この一年で胸ばっかり成長して身長が伸びていないのは私の秘かなコンプレックスだ。


 ガチャ


 ドアが開いて恭介くんが自分の家から出てくる。玄関をずっと見ながら待っていたので慌てて顔をそらしてから今気づいたっていう顔で恭介くんを見て「おはよう」って挨拶。


「おはよう、陽菜。朝から付き合ってくれてありがとう」

 恭介くんがにっこり笑って挨拶してくれるので自転車を漕ぐ前から心臓がドキドキしてしまう。もうこの時点で心臓のトレーニングになっていそう。


 今日の恭介くんの格好は水色の地のジャージだが、私と違ってちゃんとしたスポーツメーカーのもので背が高くてシュッとしてる恭介くんが着ると様になっていてすごくカッコよかった。見惚れそうになる。


 私がちょっとボーとしていると手に持っていた黒いバックからゴソゴソを何かを取り出しパシャッ! と一枚撮られた。

「おおっ、よく撮れてる。流石オートフォーカス……あ、事後承諾で悪いけど陽菜の写真撮らせてもらったけどいい?」

 恭介くんが大きなカメラを構えながら言った。え? 今のボケッとした顔、しかもこのパツパツ中学ジャージの写真撮られちゃったの? 消させるべき? でも私の写真をあげるって言ってるくらいだから写真を撮られるくらい……頭の中がグルグルしてわぁーってなる。


「い、いいけどお化粧してないから恥ずかしいかも」

 必死で思いついた言い訳をする。

「陽菜は化粧なんてしなくても可愛いよ」

 一瞬で撃墜しに来る。相手は空軍のエースパイロットか何かだったの?

 ちょっと恥ずかしいけどすごく嬉しい。もう負けでイイや。


「カメラをカゴにあずかっててよ。これ、衝撃吸収バッグだからもし落ちても大丈夫なやつだから」

 と言いながら前カゴにあまり大きくないカメラのバッグを入れている。


「光画部……えっと、写真部の練習でいい風景とかあったら写真撮ろうと思って。それと陽菜の写真も撮らせて貰えたら嬉しいな」

 ええ~!? ひょっとして私エッチな写真を撮られちゃうの?

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 本日1日3話公開

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