第81話 オタクの童貞男子先輩並みに教えたがり

 桜島先輩のパーカーは桜島先輩にはちょっと大きめだったおかげで、少しピチピチ感があるものの俺も違和感なく着ることが出来た。


「本当にすみません。パーカーは洗って返しますから」

 恐縮して俺が言うと

「イイよ、今日は暖かいからトレーナー一枚でも平気だし、そんなことよりそんな薄着で誘惑するみたいな格好で男子高生が出かけたらダメなんだからね」

 まだちょっと赤い顔をしたままの桜島先輩にメッて叱られる。

 じゃあ行こうって言ってプイッと反対側をむいて歩きだしてまった。俺は慌てて後を追う。


 歩きながらお店に着くまでに先輩に言われたことをまとめると、今日買うのはデジタル一眼レフカメラの本体を中古で購入。カメラ本体以外のアクセサリーや機材バックは川に落ちていないし、他のものはこっちの世界の多々良恭介の部屋を探せば出てくるはずだからあんまり無理して買う必要はないという事。


 こちらの世界で有名なデジカメのメーカーはCan〇n、Nik〇n、S〇NY、RIC〇Hの4社あたりで、メーカーが違うと周辺機器(例えばレンズ)あたりが使えなくなるから俺の場合は今まで使っていた(ことになっている)Nik〇nのデジカメ一択になるという事だった。


 一眼レフの他にミラーレスとか種類があるのだが、今回は桜島先輩的には一眼レフを選んで欲しいという事だった。ここだけは桜島先輩がワガママを言わせて欲しいと言って俺にお願いしてきた部分だった。


 今後デジタルカメラからフィルムカメラに移行することがあったら、ミラーレス一眼では大きさが少し小さめなのでサイズの違和感があるうえに、光学ファインダーを覗かなくても写真が撮れるのでフィルムカメラとの違いで戸惑う可能性があるそうだ。


 元々持っているレンズが使えるって時点で一眼レフを選ぶのが正解となると、この後はお店を回って機能と値段の比較ということになりそうだ。


 予算の枠内で買えそうなものを見繕ってD7〇○という機種と、D71〇○という機種まで絞り込み、手に取らせて貰って桜島先輩と相談する。

 お店でレンズを貸して貰って動作確認などをしながら二台を比較する。


「う~ん、外見の傷がちょっとあるから値段が下がってるけど、こっちのD71〇○の方をお勧めするよ。やっぱり5年くらい発売日が違うし、画素数も倍くらい差があるとやっぱり欲が出ちゃうよね。機能が多すぎて覚えることは多いけどこれからずっと続けるなら少しずつ覚えていけばいいし、私もアドバイスしてあげるから……もちろん私にとっても勉強になるしね」

 うん、元の世界のオタクの童貞男子先輩並みに教えたがりで口数が多くなってるけど後輩を思う桜島先輩の想いが伝わってきてこの機種でイイかなって思えた。


「Nik〇n! キミに決めた!」そうして俺は生まれて初めてのデジタル一眼レフを手に入れた。


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 カメラの選択については作者が昔Nikon派であったためこうなりました。

 異論はいろいろあるかと思いますが、作中はその辺りの機種で絞り込んだということで。異世界なので伏字にしていますが、伏字にする意味があるのかどうか。

 しかし、D700が15年前の機種とは……時間が経つのが恐ろしいですね。恭介くん選択次第では自分と同い年のカメラを持つことになるところでした。

 興味がない方はそんなものだと思って読み飛ばしてください。

 なお作中の知識の間違いなどは全て作者の責任となります。


 6/17,18は1日5話特別公開

 6,9,12,15,18時の1日5話更新となります

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