第68話 いきなり藤岡が崩れ落ちる

「それじゃあ三人ともお弁当を頼むよ。好き嫌いはないけど、栄養素とか含めて気になることとかリクエストはその都度させて貰うから。

 あとあんまり高い食材は使わないこと、特に小烏こがらす。今日みたいな弁当ばっかり作っていたら道場の復興の前に道場が破産しそうだ」

 俺が言うと小烏こがらすが苦笑している。今日のお弁当はお小遣いで買うには高い食材が多すぎた。


「じゃあごちそうさまでした。本当に美味しかった、ありがとう。」

 俺が言うと三人が嬉しそうに笑ってくれる。ちょっと不満そうなのがゆうきと丸川だった。料理が出来ないのが悔しいらしい。


 皆で机をバラして元に戻していると視界の端に白ギャルの藤岡に近づいていく小烏こがらすの姿が見えた。

「藤岡師匠、明日からもまた今日みたいにいろいろと教えて貰ってもいいだろうか?」

 話しかけられた藤岡がニヤッと笑っている。


「イイよ。アンタのことは気に入ったし、風紀委員やってる奴とこんな風に話するようになるとは思わなかったよ。嫌われてるとばっかり思っていたし。

 それに、あーしには敵に塩を送る趣味はないけど、アンタら三人見てたら毒気も抜けちゃうよ。

 はぁ……女同士ってもっと男を取り合ってギスギスするもんじゃないのかねぇ」

 藤岡はそういうと俺、岩清水、陽菜の順で見た後で小烏こがらすに視線を戻す。


「ま、あーしにはあーしのやり方があるし、負けるつもりもないけどそこまでストレートにお願いできるのはアンタの強みだと思うよ。

 当たって砕けても砕けても当たり続けるくらいがアンタには似合ってるって。話くらいなら聞いてやるから頑張りなよ……っておいっ」

 いきなり藤岡が小烏こがらすの顔を掴んで間近にジロジロと眺める。


「アンタまさかそれですっぴん?……スキンケアくらいはしてるんだろうけど……全然メークしないでこの状態って」

 いきなり藤岡が崩れ落ちる。orzってなってる。動きが派手過ぎて周りがびっくりしてるぞ。


「ひ、日焼け止めくらいは私だってしている。お、女だからな」

 驚いて返す小烏こがらす。常在戦場の心構えで生きていそうな小烏こがらすをあそこまで動揺させるとはやるな藤岡。


「日焼け止めはメークじゃねぇし。ああもう、本当にどうなってるんだアンタは、どうせ風紀委員が化粧をするわけにはいかないとかアホなことを考えて生きて来たんだろうけど、校則の中で問題ないメイクを教えてやるから一回うちにおいでよ。

 あーしはメイクアップアーティスト目指してるから結構コスメに詳しい自信あるし。ただし、アンタはただの練習台だからそこは覚悟してきなよ」

 ニヤリと笑う藤岡。口では何と言ってもアネゴ肌で面倒見のいい藤岡のことだから意外な友情が生まれそうな予感がする。

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