第47話 中古でイイから自分のカメラを
「多々良くん? それは年齢=彼氏いない歴の処女に対する嫌味かな?」
桜木先輩がこめかみをピキピキさせながら聞いてくる。どういうことだ? 日曜日にスケジュールが空いてるかどうかの確認をしたことが桜島先輩の処女となんの関係あるんだ?
「どうせ処女だし、彼氏だっていませんよ~だ。本当に意地悪なことを聞くんだから」
桜木先輩はぷんすこと音が出そうな感じで怒ってらっしゃる。
よっぽど日曜日の自分のスケジュールが空っぽだったことがご不満らしい。
この世界では女の子は処女に価値を見出していなくて捨ててなんぼだと思っている。丁度元の世界で男が童貞を後生大事に守ることに意味がないように。
しかも貞操逆転世界なので処女だから喜ばれるということがなくて、エッチが下手、痛がって上手にできない、血が出るのがイヤなど散々な評価なのだ。
だから女子は結構平気な顔で下ネタ会話の中で自虐で自分が処女だとカミングアウトしてしまう。
高校生くらいだと周りもみんな処女ばっかりだから自分だけ遅れているって感覚はないみたいだ。
閑話休題
で、最初の話に戻る。
「えっと……桜島先輩の処女をバカにするとか彼氏がいないからバカにするとかそういうつもりは全然なくて。
カメラのこと全然分からないんで中古でイイから自分のカメラを一台持とうと思いまして、カメラに詳しそうな桜島先輩と一緒にお店にいって
ほら、例の川で溺れたときにカメラごと橋から落ちたんで衝撃と水濡れで故障しちゃって、だから日曜日に一緒に買い物に行きませんか」
家に予備があればよかったのだろうが、壊れたカメラは結構高いやつだったらしい。
その機種を購入するために今までのカメラを両親に頼んで中古カメラ屋さんに売りにいって、購入資金の足しにしたんだそうだ。
多々良恭介は真面目だしそんなことしないと思うが、安易に援助交際(もちろん若い童貞をおばさんに奪われる)とかしていなくて良かった。
おかげで俺の体はまだ清いままです。
「ああ、あのカメラ壊れちゃったんだ。多々良くんは光画部デジカメ派の最右翼の上、買った時にめっちゃ自慢しまくるから思わず壊してやろうかと……いや、高いカメラだから残念だったね」
本音が漏れてるぞ、桜島先輩。そして多々良恭介……残念ながら桜島先輩に嫌われてたかも。
「うん……そういうことならイイよ。最近はスマホカメラの性能がよくなりすぎて一眼レフのデジカメの中古市場も下がってきてるしね。部室にある備品のデジタルカメラはちょっと旧機種すぎるし……ん? だったらここは多々良くんもこの部室にあるフィルムカメラの昔の名機を使って……えへ、えへへへ」
桜島先輩が光画部内のフィルムカメラ派の再興の光景を妄想して心がどこかへ行ってしまったので時間と場所だけ約束して帰ることにする。
「じゃあ桜島先輩、日曜日の朝10時に駅の南口で待ち合わせってことでイイですか? よろしくお願いします」
光画部を後にしてた俺はちさと先生の待っているはずの職員室へ向かう。
桜島先輩の行動って「部活の童貞男子部員が、後輩に入ってきた女の子が自分と同じ趣味と思ったらめちゃくちゃ優しくして手取り足取り教えたくなっちゃう」系の貞操逆転行動なんだろうなと思いながら職員室へ急いだ。
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※前半部分の桜島先輩がプンプンしてる理由を分かりやすくしてみました。
日曜日が何かの記念日なのにその日にカレシがいなくて暇だろうとあてつけされたと思い込んで怒ったようです。
写真関係のストーリーの準備のための光画部と桜島先輩の登場回でした。
次回よりメインストリートに戻ります。
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