第39話 冗談ではなく本気の質問だった
昼休みに入ると同時に丸川から「きょーちんお客さんがクラスに来てるよ~」と呼び出されて教室の外に出てみれば陽菜が待っていた。
「多々良くん……お昼ごはんの予定ってあるかな? 良かったらお弁当作って来たんだけど一緒に食べない?」
陽菜が聞いてくるが俺が登校時に思い描いていたお昼の予定はぶっ壊れていた。
元の世界では村上とつるんで学食で食べていたので、たとえこっちの世界で村上と疎遠でも昼飯を一緒にと学食に誘うくらいはできるだろうと思っていた。
村上(ゴリマッチョ)が村上(可愛い)にクラスチェンジして、永久脱毛してゆうきになってるなんて思わなかった。な……何を言っているのかわからねーと思うが、以下略
朝からゆうきのせいで頭がおかしくなりそうだったし、油断すると
陽菜が訪ねて来てくれなければ学校抜け出してコンビニ弁当を買ってきて三バカトリオと食べるあたりで手を打つところだった。
「え?……ひょっとして姫川さん俺にお弁当を持ってきてくれたの? 初めてだよね?」
ずっと疎遠だったと聞いていたので一応状況を確認する。
「えっと……助けてくれたお礼……川で溺れたときに泳げないのに私を助けようとしてくれたから。何もお礼してなかったから自分のお弁当のついでにもう一つ作って来ちゃった。
イヤじゃなかったら一緒に食べよ。」
背の低い陽菜からちょっと不安げに上目遣いで言われてると断るなんて選択肢は最初から存在しなかった。
「助けて貰ったのはこっちだからお礼なんて良いのに。でも、お腹空いていたからお弁当すごく嬉しいよ。姫川さんって料理できるんだ。凄いね」
元の世界のヒナは料理が全然ダメだった。
いつだったか付き合いだしてすぐにヒナがハンバーグを作ってくれたが表面はジャリジャリで中はほんのり生焼け、頑張って食べ切った俺はお腹を壊してトイレにこもるハメになった。
「保健室ってどこだったっけ?」思わず陽菜に確認する。
「もうっ、多々良くんひどい」
冗談だと思って笑いながら流す陽菜だったが、命の危険を前にして冗談ではなく本気の質問だった。
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