第38話 女子高生の教え子に変な視線を向けたりしない

 本鈴がなって先生が来たので小烏こがらすとの会話を終えることが出来た。まだ心臓がバクバク言っているけど。


 心臓がバクバクいってるといえば、元の世界にはバイアグラというED(勃起不全)の治療薬があって心肺突然死の原因になると考えられていたことがあった。

 こっちの貞操逆転世界の視覚効果だけではほとんど勃起できない男性が多いために様々なED治療薬、もはやとでも呼べるものが何種類も存在している。

 毎日しょっちゅう勃起してしまう、元の世界から来た性欲過多の男子高生である俺には関係ない話だけど。


 小烏こがらすの言っていたクスリというのはこの勃起薬のことで、そこまでして子作りしたいとか同級生こがらすに言われてしまうと今まで意識したことのない女子でも気になってしまう。


「多々良くんが学校に出て来てくれて、やっとクラスの36人全員がそろいました。今日が3月2日だから三学期も残り一ヵ月ないけど、一年生の最後をこのクラスで元気につつがなく過ごしてね。

 困ったことがあったら先生も力になるからいつでも相談してね」

 明後日な事を俺が考えていた間もクラス担任の谷垣先生が教壇で朝のホームルームをしている。こちらの世界と元の世界で違っていることの一つが担任教師の性別だったりする。


 元の世界の担任は男子教師でちょっと薄くなった髪を横になでつけていて、まるでバーコード状だったので科学部がドローンで上空から先生の直上につけて写真撮影したらバーコードとして読み込まれて数字が表示されたという噂が流れていた。


 そんな元の世界のバーコードリーダー浜地とは違い、このクラスの担任は美人教師の谷垣ちさと先生(26歳独身・国語担当)であった。

 大人の色気があるがさっぱりした性格の先生で入院中も何度かお見舞いに来てくれたが、俺の学校復帰に向けていろいろ相談に乗ってくれた。


 この貞操逆転世界の女性である以上は男に対する性欲はあるのだろうが、病室で寝ている俺にも真剣に向き合ってくれて真面目な先生という印象を受けた。

 まあ、元の世界の男性教師だってほとんどは女子高生の教え子に変な視線を向けたりしないしそういうものなんだろう。


「ああ、そうそう、多々良くん。今日の放課後ちょっと用事があるから開けておいて欲しいけど大丈夫かしら」

 同級生こがらすからの種付けおねだりでガチガチに硬くなっていた獣のヤリが気になって、谷垣先生の話に集中できていなかった俺はと裏返った声で返事をしてしまい皆に笑われた。

 うう……ちょっと恥ずかしい。


 放課後は水泳部(まだ3月なのでプールは使えずトレーニングに励んでいるはず)を見学しようかと思っていたが谷垣先生の所に行くことになってしまった。


 午前中の授業は何度もお見舞いに来て授業の進度を伝え、俺が自習だと分からないところを丁寧に教えてくれた岩清水のおかげでどうにかついていけた。

 本当に岩清水は生まれついての委員長って感じだ。前の世界でも委員長だったし本当に面倒見がいい。岩清水には足を向けて眠れないほど感謝している。

 なのでお見舞いで唾をつけていた云々の朝の失言は聞かなかったことにしておこう。


 昼休みになったら陽菜がお弁当を持って訪ねてきた。

 なんでだ? 陽菜ってこっちの世界の多々良恭介とは疎遠だったんじゃなかったの?


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