第3話 オーディオ
ばっひゅうううううん!
{{そろそろみえるはずね…ハイロゥの出力を上げ、随時行動にでて…あぁ、今回も例によって
天自───
{{うっかり踏まない様に…ジザザ、じゃあおーば}}
「了解、作戦行動に移る」
一度天高く飛び上がった天使は再び地表へと姿を現した。
どぉぉぉぉおおん!!
がくう!
爆発物が入り乱れて飛び交い、それは総て一つの場所に集約する。
ギャオオオオオ──────ンンン!!!!
『今度は反応するのか!』
一心に炎を受けるその怪獣は前回現れた個体とは違い、廻自の攻撃に反応を見せた!
二足歩行するトカゲのような見た目は前と変わらなかったが、次の瞬間、首回りにパラボラアンテナのように襟を展開する。そして、怪獣は口を閉じたまま鳴いた!
ギャオオオオオ───────ンンンン!!!
その咆哮はあごの後ろについた
『うわああああああ!』『ぎゃあああああ!!』
丁度顔の前を飛んだヘリにその収束した爆音は襲い掛かったのだ。鼓膜をいともたやすく消し破り、もはや言葉を持たなくなったヒトによる
『音響兵器を使ってくるのか!? 不味い! いや、光線でも防ぎようは無かったが…』
司令官は被っている帽子を脱ぐと頭を掻く。
『攻撃をつづけますか?』
『やむを得ない…今までいくら税金泥棒と呼ばれたか、そもそも退く道などないのだ。攻撃再開! できる限り頭部の前を横切るな!』
『攻撃再開! 音響攻撃に注意し、今まで通り肉質の弱そうな部位を集中して攻撃せよ! フィードバックも忘れぬように!』
どどどどどどどどどど!!!国家予算を忘れたかのような量の爆薬を投じて怪獣の行動をなんとかして食い止めようとする。その勢いと言うのも武器を持ってない状態でマンモスに挑むようなあまりにも無茶で無理で無駄すぎる進退だった。
その時だった!
キイイイイィ─────────ン!!!
ずばぁぁぁあんっ!
空からの突如の急襲、言わずもがな…
『またあいつか!』
「アンゼルただいま現着……、いやダサいって」
20mの純白の天使は、物理法則を無視した加速と急制動で地上へ降り立った。
「周りには生きてる集落は無い、ハイロゥ
怪獣は大地に仁王立ちするその害となるであろう勇者を魔王の如く見下ろすと、パラボラをゆっくり展開する。
『まずい! 食らってしまうぞ!』『よけないのか?』
前線の自衛官たちはその異様な光景に攻撃の手を止め、ただ見つめるしかなかった。
そして咆哮!
ギャオオオオオ──────ンンン!!!!
音の壁が一気に鋼の天使を容赦なく叩き付ける…だがその中で
「チャージ残り30…遅いな。出力加速さらに10%」
いたって冷静に数字とにらめっこしていた。
全くひるむことなくこちらを見上げる勇者に少しばかり異変を感じた怪獣は再び肺を膨らませる…この単純な決断が間違いだった。
同じように大地を抉る様な音撃を見舞ったのだった怪獣だったが…
「100…よし」
その目に見える音の結界の中でその天使は右手を討つべき目標に向ける。
「ハンドバスター………!」
そう一言付け加えると、
蒼い光が真っすぐと伸びていき間抜けにも向けてきているその頭部をコンマ1秒も足らずに吹き飛ばした。その光が5000憶5000万光年程先にある小惑星に、放たれてからアインシュタインの考えを全く無視して到達し消滅させたのは、この地球が残っている内で知る者はいなかった。
「地表には嫌でも掠るなんてできないな…」
圧倒的オーバーキルを指をくわえて見ることしかできなかった実質税金泥棒達に見せつけると、
キィィィィィ─────────!!!
甲高い音を残して空へと飛び去って行った。
『追跡は?』
『やはり無理です』
『そうか…このまま動ける者たちは墜とされた隊員の捜索を開始する』
『了解』
「音響攻撃…ねぇ、ぶっちゃけ耐えられるか怪しかったけど何とかなったみたいで良かった!」
「えぇ…」
想定外にも耐えたこの鋼の天使を下から見上げ、自分でも少し怖くなった。だが、乗らない選択肢は無い。
「とりあえず改めて…お勤めご苦労様」
比較的クールな声でそう言うと、
ピピピピピピッ!
雑用ロボの35号が何やら喋りながらコーヒーを持ってきた。
「今日はミルクを入れてもいいかい?」
ぴぴ!
頭の上のトレイに乗ったミルクを器用に展開したアームで掴むと、パキ! と蓋を開けてコーヒーカップへ投入…あっという間にミルクコーヒーの完成だ。
「うん、ありがとう。また頼むよ」
ぴぴぴっ!
35号はコーヒーと交換に来ていた耐圧スーツの上着を受け取るとどこかへ向かって行った。
ミルクは入れたがシロップ無し故の柔らかい苦味が、口の中で優しくムーンウォークする。
ふぅ、とため息を付くとトレーニングルームへと向かった。
『研究結果が少しながら出ています』
廻天自衛隊指令室幹部の女性士官がパソコンのファイルを確認し報告、
『そうか、コイツはバラキエルと呼ぼう』
それを見た司令官は直ぐにそう言った。
『先の怪獣…"ヘルツァ"もですが、名前はどう決めてるんです? 司令官?』
男心の分から無い女性士官はそう質問した。
『んん……怪獣は特に考えてない、だがこの謎の巨人はしっかり天使の名前から取ってきたぞ?』
司令官は少し悩んでから返した。
『バラキエル…と言うと堕天使ですが?』
幹部の女性が再び聞くと
『そうだ、人と交わる事を決めた堕天使…雷みたいな攻撃もするしピッタリだよ。もし元々怪獣の仲間だったなら、さらにドンピシャじゃないか?』
頷いて司令官は答える。
『まぁ…そうですね』
女性幹部は苦笑交じりだがちょっぴり納得した様子で反応した。
『司令官? データの確認を…』
男性の士官、こちらは先の士官より階級は低いがそれでもしっかり話題を戻す。
『うむ…そうだな! 皆、モニタースクリーンを見てくれ』
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