第218話 生産職以外のステータス

 領主様に父ちゃんのMPが500以上あると教えたら、領主様の右腕である騎士団長で従士筆頭のロベルトさんが驚愕していた。当然領主様もだけど……。


「エンター、お前はどんな事をしたからそんなにMPが多いのだ?」


「それは領主様、当然レベルを上げたんですよ」


「まぁここでレベルを聞くのも問題だから聞かんが、目安としてどのくらいの魔物なら一人で倒せる?」


 おぉ~~、上手い聞き方だな。確かにこれだとレベルを直接聞いていないが、自分のレベルや部下のレベルと討伐可能な魔物は知っているから、それと比較すれば、大体の数値が想像出来る。さて父ちゃんはどう答えるかな?


「そうですね……オーク三体なら同時に対峙出来ますね」


 わぁ~~、これはまたうまい逃げ方をしたな。普通のオークを三体と言っても全部一度に倒すとは言っていないし、オークジェネラルでも大丈夫とは言っていない。


「微妙な言い方だな……。だがそれでも正直私やロベルトよりレベルは上だな」


「それはこれから、上げれば良い事ですよ。こんなに近くにダンジョンが出来たんですから」


「そうね! それなら私もレベルが上げられそうね。あぁそうだモリーのレベルはどの位なの? 同じ女性として気になるわ」


 この奥方様、やっぱり脳筋なのかな? どうも領主様を尻に敷いているみたいだし、戦闘も相当好きそうだ。服装はドレス姿なんだけど、立ち振る舞いが騎士のようなんだよね。付き添いの従者の侍女もどこかバトルメイドの雰囲気が漂っている。


「奥方様、私のレベルはお教えできませんが、エンターとさほど変わりませんよ」


「な、何ですって! そしたらあなたもMPが500は超えているの?」


「はい、それにエンターと同じくオークなら同時に三体は大丈夫ですね」


「「「……」」」


 母ちゃんがあまりに普通に答えたのが、相当に堪えたのか全員が黙り込んでしまった。そりゃそうだよね。父ちゃんはまだ体も大きいガチムチだけど、母ちゃんはかなり体の小さめなガチムチだから、想像出来ないよね。


「ロベルトよ、わしらはこれでも貴族か? 冒険者ならまだ分かるが、エンターは鍛冶屋でモリーは彫金師だが専業主婦だぞ」


「御屋形様、それ以上言わないで下さい。部下や今回一緒に来ている者達に示しがつきません」


「エンターさん、あんたの家はどうなっているんだい? 私はもう監視なんて怖くて出来ないよ」


「村長さん、そんなに怖がらなくても大丈夫ですよ。わしらの事は良く知っているでしょ」


「確かに知っていますけどね。それ以上に私はなんと無謀な事をしていたのか……」


 でも、俺からしたら、この村長さんも相当なものだと思うけどな。村長さんの職業を知らないからどんなスキルを持っているか……、あ! 俺はやっぱり抜けてるよね。俺には鑑定解析というこの世界では誰も持っていない物があるじゃないか。


 俺ぐらいレベルがあれば、恐らく俺が鑑定しても多分相手には分からない筈だから、こんな良い機会は無いんだから、全員の鑑定をしよう。



 名前 ロズベル・フォン・ザック(ザック男爵領、領主)32歳

 種族 人種

 状態 良好

 職業 騎士(軽騎士)

 レベル12

 HP 395/395  

 MP 180/180

 スキル  生活魔法 剣術 槍術  

 魔法 風魔法

 称号 【武神の加護極小】


 名前 マーガレット・フォン・ザック(ザック男爵領、夫人)28歳

 種族 人種

 状態 鉛中毒弱

 職業 騎士(姫騎士)

 レベル10

 HP 360/360  

 MP 150/150

 スキル  生活魔法 剣術 裁縫

 魔法 風魔法

 称号 【武神の加護極小】


 名前 ロベルト(ザック男爵領、従士)35歳

 種族 人種

 状態 良好

 職業 騎士(重騎士)

 レベル13

 HP 410/410  

 MP 170/170

 スキル  生活魔法 剣術 盾術 槍術

 魔法 風魔法

 称号 【武神の加護極小】


 名前 ロドリゴ(ザック村 村長)65歳

 種族 人種

 状態 良好

 職業 木工職人

 レベル14

 HP 400/400  

 MP 180/180

 スキル  生活魔法 木工 気配遮断 計算

 魔法 風魔法

 称号 【技巧神の加護極小】


 他の人の鑑定もしたけど、一人を除いては特段珍しい職業の人もいなかったし、変ったスキルを持った人もいなかった。その除いた一人と言うのが異世界物に転生して来た俺を褒めてやりたいぐらいだった。


 名前 カレン(ザック男爵夫人 専属侍女)35歳

 種族 ハーフエルフ(人種とエルフ)

 状態 良好

 職業 女戦士(アマゾネス)

 レベル15

 HP 460/460  

 MP 280/280

 スキル  生活魔法 拳闘  剣術 裁縫 料理

 魔法 風魔法 土魔法

 称号 【武神の加護極小】


 このカレンさんの職業とか種族なんかを領主様達は知っているんだろうか? カレンさんはハーフエルフに判別されているけど、見た目は良く見ないと耳が尖っているようには殆ど見えない。俺は鑑定で分かっているから、その位の違いでもそうなんだと判断出来るけどね。


 それにしてもエルフと言うのはハーフでも魔法に長けているんだな。うちの家族以外で属性魔法を二つ持っている人を初めて見たよ。それにこの人に俺が注目したのはそこだけじゃない。職業のせいなのかも知れないけど、拳闘と剣術の両方のスキルを持っている。それに裁縫と料理まで持っているから、領主様達が知らなくてもスーパー侍女である事は確かだよ。


 すげぇ~~恰好良い! 思わず年が吊り合うなら惚れてまう野郎と言いたいぐらいだ。ハーフエルフだからどこかで吊り合う時が来るかな……? めっちゃ美人だしな~~~。


 あぁそう言えばもう一人納得できる人が居た! そう村長さん。だってあの人スキルに気配遮断なんて持ってるんだよ。俺だって持っていないのに……。魔法で魔物や人の魔力を感知する事は俺でも出来るけど、自分の気配を完全に消すのは今の俺でも無理。勿論、それに特化して練習すればスキルも俺の場合は発現しやすいとは思うけど、どちらかというと俺の発言しやすいスキルは生産系なんだよね。


 あの村長がうちを監視していたのに俺達の誰も気づかなかったのは、この気配遮断のスキルのお陰なんだな。でも職業が木工職人なのになんであんなスキルを発現させたんだろう?


 森で魔物に出くわした時に何時も気配を消そうとしてたのかな? 冒険者でもないし猟師でもないから逃げる、隠れるが専門だったのかも知れない。まぁ村長らしく職業に似合わず、計算のスキルを持っているのにも感心した。


 今回の鑑定で面白い事に気が付いたので、領主様、ロベルトさん、村長のこの三人をこれからは「ロ三兄弟」と呼ぶことにした。俺の中だけでだけどね……。

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