第167話 一歩一歩、進んでるのかな?

 二度目の休憩と気付け薬のブランデーを皆に配ったが、皆が今度は何故かチビチビと飲み始めたので、この隙にこれまでの事について理解したかを聞いてみた。


「どう? 今までの所は理解した?」


「理解したというよりさせられたが正解じゃがな」


「セガール爺ちゃん、まぁそれが正解でだよね。だって、現実に目の前に証拠もあるし、実際自分達でもやったからね。あぁそうだ! それで思い出したけど、ルイス爺ちゃん、さっき鑑定した皆の作ったポーションはどんな感じだった?」


「あれか、あれはバラツキがあったな。特に予想通りの出来になっていなかった物が幾つかあったな」


「それで、それは誰の作った物?」


 俺がこれを聞く時点で誰の作った物かは既に予想は付いているんだ。それは称号の加護の神の違いのある人。そうルイス爺ちゃんとルベリ爺ちゃんの二人が作った物です。二人以外の加護は全員が技巧神の加護だから、当然スキル持ちのロジー婆ちゃんは別格としても技巧神の加護持ちの人達は違ってくる。だが、正確にはそれだけじゃない。だってルイス爺ちゃんはバラツキがあるといったでしょ。


「それは先ず俺と親父じゃな。だがそれでも少しだが違いはあったぞ。それと次にエンター、モリー、マイカは違っていた。スキルはないがこの三人は母さんに近い物を作っていた。そして最後に残った人達だがこれも個人で違いがあったな」


「ルイス爺ちゃんそれって、僕がポーションの事について話した時の+の部分の違いの事だよね」


「マーク、わしの鑑定にはそこまでは出ないが、効果の違いは出るからそれでわしは判断したぞ」


「マークちゃん、この違いは称号の商業神の加護と技巧神の加護の違いだね。それに加護のランクの違いもあるね。後は個人の技能の問題もあるかね」


 マイカ婆ちゃんは流石にもう理解しているようだね。ただ、今回は錬成陣を共通にしたからこれだけハッキリと答えが出たけど、この錬成陣に違いがあったらもっと苦労してるとは思うけどね。


「マーク、マイカさんとモリーに属性魔法が二つあるのも加護のランクの違いかい?」


「そうだよマリアベル婆ちゃん。だけど当然努力しないと持てない物でもあるけどね」


 そりゃあれだけ二人は酒の熟成に執念を燃やしたから出来た事で、そうじゃなきゃ加護のランクが上がろうと増えない人は増えない。その証明が父ちゃんだしね……。


 ここまでは、曲りなりにも皆理解しただろうけど、さてこの後はどうしようか? 


 ・ポーション

 ・付与魔法 (錬成陣)

 ・温度計

 ・錬成陣による金属加工

 ・ベアリング、板バネ


 この五つのうちポーションは完全に終わったが、錬成陣と加護の話で他の物はまだやれていない。だけどこれから先は皆の加護とMPが足りていないから、魔力消費は出来ても実感出来ないんだよな……。あぁそうか! 加護のランクアップ条件を教えないと、この先皆のテンションが上がらないな。


「ここまでの事で、加護のランクアップが色んな面で大きな違いを生むことは分かってくれたと思うんだけど、このランクアップの条件が何か誰か分かった?」


「「「……」」」


「まぁちょっと難しいよね。ステータス三人分じゃ。もっと分かりやすように全員分を書き出しても良いんだけど、時間もないから、答えを言うよ。答えはねHP、MPが共に500を超える事。これが加護のランクアップ条件だよ」


「それじゃ、私ら夫婦は当分無理だね……」


「確かにマリアベル婆ちゃん達はかなり努力しないと無理だね。でもそれはあくまで魔力増量法だけでやればという事だよ」


「マークの言いたい事は分かるが、わしらは革職人と彫金師じゃぞ。それも行商もしていないし、王都の外に出る事も少ないから、レベルを上げる機会が殆どないんだ」


「だったら、僕のダンジョンでレベルを上げれば良いよ! 当然僕達も協力はするよ」


「マーク、そうは言うけどな。わしらは戦闘でという意味だが剣を握った事が殆どないんだぞ」


 マルクス爺ちゃんは、剣の鞘を作る時には剣を触っているから、だからわざわざ注釈をつけて来たんだな。そんな事言わなくても意味は通じるのにね。本当に律義な人だよ……。


 確かに王都組のレベルを上げるにはソラのダンジョンが一番だが、王都組は殆ど戦闘力のない人達だから、気軽にレベル上げと言っても無理があるんだろうな。――だが、それなら、物理じゃなく魔法で倒せば良いんじゃないかと思うんだよね。実際、この後話そうと思っていた魔法はイメージと大きく関係してくるからやる意味はあるな。


「マルクス爺ちゃん、別に物理じゃなくても魔法で倒すという方法もあるよ。実際マイカ婆ちゃんやルイス爺ちゃんが攻撃魔法を使っていたでしょう。それにね、これからやる錬成陣の付与魔法と金属加工はその魔法の良い練習になるよ」


「マーク、その付与魔法というのは金属にする物だろう。だったらわしのような革職人は必要ない物じゃないのか? まぁ彫金師のマリアベルなら使えるかも知れんが……」


「何言ってるのさ、マルクス爺ちゃん! アイテムバッグは何で出来ているの?」


「ちょ、ちょっと待て! マークは今何と言った!? アイテムバッグが何で出来てるじゃと! お前がそう言うという事は、付与魔法でアイテムバッグは出来ているという事か!?」


「う~~~ん、マルクス爺ちゃん、そこは厳密に言うと付与魔法と魔法陣魔法のどちらでも作れる物だね」


「また、分からない言葉が出て来たよ。リストには出ているから後で話す内容だったんだろうけど、その魔法陣とはどんな物なんだい?」


 これは少し早まったかな? でも魔法はイメージという事を突き詰めれば魔法陣にも行き着くんだよな。


「マリアベル婆ちゃん、それはこれの事だよ」


 マリアベル婆ちゃんに魔法陣とはどんな物かを見せる為に、初めは両親と初めて行ったソラのダンジョンで、手に入れた魔道具のランプを見せようと思っていたんだが。アイテムバッグの話が出てしまったので、俺とソラで作ったアイテムバッグを見せてしまった。


! アイテムバッグか!?」


「モ、モリー! あんたの息子は何ていう物を持っているんだい!?」


「いやいや、母さん、あなたの孫でもあるんですよ。何故、他人のように言ってるのよ。それにもうそろそろ慣れた方が良いと思うけどね。だってマークは特級ダンジョンを持っているですよ」


 そうなんだよね。どうしてみんな俺が特級ダンジョンを所持している事を、直ぐに忘れてしまうんだろう? それをいつも意識してたらこんな事では驚かないと思うんだけどね……?


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