異世界から魔法を使える🪳ゴキブリプリンセス🪳が転生してきて、詰んでる俺の人生をめっちゃ助けてくれました。
ゆきだるま
第1話 ゴキブリから放たれる痺れるほどの萌ボイスがめっちゃ助けてくれました。俺の人生を
「柳さん、……あの、桜餅の発注ってやって貰えてますか?」
コンビニでバイト中、バックヤードで在庫を確認しながらいかにも申し訳なさそうに言ってるのはここの店長の木島さん。木島さんは俺より10こ近く年下で、俺がバイトしてる大手コンビニチェーンの本社勤務で、SV(何店舗ものフランチャイズ店を管理する人)志望のエリートである。
対してこのエリート店長よりも5つも歳上な俺(柳翔太)は4年生の大学を単位ギリギリでなんとか卒業する就職が決まらず、バイトも短期間で辞めては転々としているうちに30歳を迎えてしまったポンコツ野郎だ。
そして木島さんは仕事が出来る割にやたらといい人で、将来性ゼロでポンコツな俺にも年上としての気遣いを見せてくれる。
そう、こんなミスばかり……ミス?
「あぁー! す、すみません! 忘れてましたぁ!」
と、頼まれていた発注を忘れていたことを今思い出した俺は慌てて地面に這い蹲る勢いで頭を下げる。
「あぁー、いや大丈夫! 大丈夫です! 一緒に発注をお願いしていたみたらし団子を幅広く陳列すれば大丈夫ですから」
と、頭を下げる俺にめっちゃ恐縮して慌てる木島さん。自分が悪いのに、年上ってだけで気を遣われるのってメッチャ気まずいよな。
いくら発注忘れてたのが発注数の少ない桜餅とはいえ、俺のせいで売上に悪影響が出るわけだし、この店舗での売上は木島さんの査定にも響くだろうに、本当申し訳ない。いくら桜餅が別に主力商品ではなく、和菓子を置いてるワゴンならみたらし団子で陳列の見た目上は誤魔化せるとはいえ……、とここで木島さんが手を止めてこちらを振り返る。
「……柳さん、もしかして、……みたらし団子も」
「………………すみません」
俺はものすごく、仕事が出来なかった。
♡ຼ☺︎♡ຼ☺︎♡ຼ☺︎
「はぁ〜あ、今日も疲れた、ってか無茶苦茶気まずかったなぁ」
バイトが終わり。一人暮らしの部屋に帰ってすぐにビールを開ける。そしてグイッと一口だけ飲むとテレビに繋いだサンダースティックTVで深夜アニメを流す。仕事の後は酒を飲みながらアニメを観る、これが俺の毎日のルーティーンだ。
「はぁ、いいなぁこいつ、めっちゃ羨ましいよ」
最近ハマってるのは異世界転生もの。なかでも好きなのは、”ダメ人間が異世界でチート能力を持って生まれ変わり、魔法とスキルで強敵をバッタバッタとなぎ倒して王様から感謝されたり美女からモテモテになったりするやつ”だ。
俺も、人生やり直せたらな。
情けないけど、そんなふうに思ってしまう。昔からモテなくても、勉強もスポーツも特別できるわけじゃなくて、学生から社会人(フリーター)になると仕事はもっと出来ないことに気付いてしまう。
だったら、もうどうせこれからの人生も底辺なんだろな、なんて思うと、心の拠り所なんてもう、目の前に広がるアニメの主人公に自分を重ねるくらいのもの。
「うわぁ、……いいなぁ」
目の前の画面では今、転生する時にもらったチート能力だけで国を救った主人公がお姫様にキスを迫られてるところ。
「…………ぐすっ」
何故だろうか、急に涙が溢れてくる。悲しいからだろうか? それとも、このアニメの主人公に心から共感したから?
辛いわけでも、嬉しい訳でもない。なのに何故か泣けてくるという謎の状態。
「もう、訳わかんねぇよ」
ついに俺は壊れちまったのだろうか。ガキの頃から自分に自信がなくて、何をやっても中途半端で、いつの間にかやる気も希望もなくした俺が、ついにメンタルまでぶっ壊しちまったのだろうか。
全く、世の中ってやつぁ、どんだけ不公平なんだよ。
なぁ、神様よぉ。ちょっとでもさ。この世界に、公平性とか、平等だとかいう概念があるんならさ。
贅沢は言わない。美少年の容姿も、チート能力も、剣と魔法のファンタジー世界も要らない。ただひとつ、これだけでいい。
どうか、俺に姫を。俺の事大切に思ってくれる、とびきり可愛いお姫様と出会わせてくれよ。
一目惚れされたいなんて、贅沢は言わねぇ。
ただ、もう一度、チャンスが欲しい。
誰もが惚れてしまうような、飛びっきり魅力的なプリンセス。
そんな誰かを、射止められるようなチャンスを、くれよ。
……マジでさ。
『その願い、叶えてしんぜよう』
「……え?」
急に聞こえたじじいの声に俺が驚くと同時。辺りが光に包まれた。光は目を開けてられないくらいに強く、白い。
「うっ……」
思わず目を閉じるが、光はまぶたを突破ってもなお眩しいくらい。
やがて光は止まり、俺は目を開ける。
……なんだったんだ。アニメの演出か?
画面に目を戻すと、そこに映っているのは先程主人公にキスを求めてた姫(めっちゃ強い)と主人公が2人で悪魔と戦っているシーン。この悪魔は主人公と姫がいい感じになるといつも現れる奴で、イチャイチャからのこいつとの戦闘はもはやお決まりの流れだ。つまり、話の流れ的に、急にわけのわからんジジイが「その願い、叶えてしんぜよう」なんてセリフを吐いて画面が強く光るシーンなんて入る余地がない。
うーん、と、いうことはもしや……。
俺はあまりの期待に踊りだしそうな心をなんとか押さえつけて部屋を見回す。ボロい机(1280円)、冷蔵庫(野菜室なし)、終わりかけの電子レンジ(リサイクルショップで780円)、いく、見てもさっきまでの部屋と何ら変わりない。
……くそっ、なんも、ないのかよ。
まぁ、そりゃそうだろうな。別に期待なんかしてねーし? 別に可哀想な負け組人生を歩む俺を見かねた神様のジジイが俺の為に異世界から姫(めっちゃ可愛くて優しくてノリがよくて俺の事を好きになる)を召喚してくれたとか? 別に1ミリも期待なんかしてねーし? 別に俺そんなガキみてーなもうそ……。
「いやいやいや、なんなのよこの汚ったない部屋は」
と、突然大きな声が聞こえる。女の声だ。ちょっと気の強そうな、だけど丸っこくて可愛らしい、そんな女の声。
ーーこれはもしや。
ジジイか? さっきのジジイなのか? 本当ガチに俺の妄想通り姫が? いやいやそれともメンタルが病みすぎて現実と妄想の世界の壁は破壊され崩壊した世界の中から堕ちるように手招いている闇の声? いやだけどもしそうだったら第一声俺の部屋をディスるのはおかしいからやっぱこれは俺とは独立した別の人格から発せられた声つまり異世界のビューティフォーな姫? いやいやそれともこれがいわゆる精神分裂病のはじま……。
「ちょっとそこの巨人! アンタがこの部屋の住人なの?」
また聞こえただと? 俺の頭は本当にイカレちまったのか? それとも本当に姫が……?
「何キョロキョロしてんのよ! あたしはずっとここにいるわよ!」
「え? どこにだよ?」
「はぁ? あんたがさっき飲んでたやつのあたりにいるでしょーが!」
言われてビールの当たりを見てみるも何もいな……いやいた。
いや居た、確かに生物はいるが、そいつは俺の期待した可愛らしいプリンセスなんかじゃなく、なんなら異世界から来た生物でしかない。ガキの頃から嫌という程見てきた、やたらとグロスの効いた焦げ茶色で、体長3センチ程、そう、そいつは、……ゴキブリだった。
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