第5話喫茶店
昼休みになり、昼食を食べるため屋上へ向かおうとした時だった。
ポケットに入れているスマホが振動し、画面を見ると加藤からの着信だったので電話に出る。
彼女から伝えられた場所は図書室だった。
そこへ向かうと既に加藤が待っていた。
ガラガラッ ドアを開けると、彼女がこちらを振り向いた。
「人気者が昼休みにこんな所に居てもいいのか?」
「昼休みに友達に会いに来るのは変な事かな?」
質問を質問で返された。
だが、彼女に笑顔で友達と言われると反論が出来ない。
「変では無い」
加藤の取り巻き達に見つかると、俺が面倒なんだよ。と頭の中で思っていた。
「それより用件は何だ?」
「友達に会うのに用件とか必要なの?」またもや同じことを言われる。
「必要だろう、少なくとも俺には」
「私にはないよ」
「……そうかい」
「そんなことより、事件の話じゃないのか?」
「それは放課後って連絡いれた筈だけど」
確かにそう言われた気がする。
「そういえばそうだったな」
加藤は溜息をつく。
「颯太くんって意外と抜けてるよね」
「放っとけ」
「最近オススメの本とかない?」
「急に何の話だ?」
「読書感想文の課題が出たから、何か参考になる本が欲しいなって思って」
「そう言われても、あまり詳しくないからな」
「じゃあ、これは」
俺は本棚から一冊の小説を取り出した。
「これは有名な小説だね」
「そう」
「うん、読んだことはないけど名前は聞いたことがあるよ」
「前に読んだ時結構面白かった気がする」
「そうなんだね、読んでみるよ」
「それなら良かった」
その後、彼女と他愛もない会話をしていたらチャイムが鳴った。
午後の授業開始の予鈴だ。
彼女は立ち上がり、スカートを軽く叩く。
そして教室に戻る途中、彼女は振り向いて言った。
───またね 彼女の言葉を聞いて、一瞬ドキッとした自分に腹が立った。
帰りのHRも終わり、帰っている時。
後ろから誰かが近づいてきた。
振り返ると、そこには加藤理沙がいた。
加藤は俺の顔を見てニヤッとする。
そして俺の腕を掴み、引っ張るように歩き出した。
「おい、何処に行くつもりなんだ?」
「いい所」
そのまま腕を引っ張られ、俺は加藤に連れて行かれた。
「ここって……」
連れて来られた場所は最近新しく出来たカフェだった。店の中に入ると、店員さんに案内されて窓際の席に座る。
「ここはパンケーキが美味しいらしいよ」
「詳しいんだな」
「クラスの子から聞いてね」
「なるほど」
「それで、事件の謎は解けたのか?」
「全然、まだだよ」
「そうか」
「颯太くんは解きたいと思う?」
「興味はない」
「本当に?」
「本当だよ」
「ふーん」
彼女はメニュー表を手に取る。
「私はこのスペシャルパンケーキにする」
「俺はコーヒーだけで良い」
「遠慮しないで頼んで良いよ」
「いや、大丈夫だ」
「分かった」
加藤は呼び出しベルを押し、店員を呼んだ。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「はい、これとこれをお願いします」
加藤は指で2つを指しながら、オーダーした。
「かしこまりました、少々お待ち下さいませ」
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