第十七話 祖国の話Ⅲ

(侵略者視点)

今年少将に任官されたばかりのバルト・ファイナーは洋上の船の上で次々と上陸していく部下たちを見ながら満足そうに葉巻をふかしていた


「いやぁ、私は運がいい!なんせ技術の遅れた野蛮な国を攻め落とせばその地の長官に任命してもらえるというのだからな!」

「誠にすばらしいことです、はい」

副官は揉み手をしながらバルトの言葉に賛同の意を示す


それがまたバルトを上機嫌にさせる。

彼は軍務経験がほとんどないものの金とコネの力で少将になった男だ。

その分周りから能力がないと言われ続けたために承認欲求が人一倍強いのである


「そうだろう、そうだろう?」

鼻歌混じりに葉巻の煙で器用に煙の輪を作って高笑いをしていた


「ところで上陸後の作戦はどうしましょうか?」

「はっ、こんな弱小国相手に作戦など仰々しい物はいるまい。適当に大きな都市を占領して降伏させておけ、あぁそれとくれぐれも民間人に手を出すなよ?この地はこれから私の財産になるんだ傷つけることはあってはならないぞ?」

副官が尋ねてくるのを鼻で笑いながら釘を刺す


「しかしですよ閣下、兵たちも息抜きがなくては戦争なんぞやってられません。

そうでしょう?」


とてもではないが本国の参謀将校達に聞かせられないようなことを言う副官に対して

バルトは暗い笑顔で言葉を返す


「だろうな、だから私の見ていないところでは何が起こっていても看過はするまい。まぁ清廉潔白な我が隊のことだ特別厳重に見張らずともよかろう。違うかな?」


「えぇ、間違いなどございませんとも

では私めも部隊を指揮して上陸して参ります。」

この言葉を聞いた副官はニタニタと笑いながら頭を下げ軽い足取りでさっていく


「まったく、上陸作戦の陣頭指揮もできないような勇気のない腰抜けが」

その背を侮蔑した目線で見送ったバルトは吐き捨てるように言った

自分も同じように陣頭指揮などできないのだがそんなことは棚に上げて先ほどの副官を腰抜けと蔑んだ


「だが、事前情報を聞いた時には半信半疑だったがまさか本当に海上戦力がいないとは…」

バルトはあまりの上陸のしやすさに拍子抜けしていた。だがその反面これだけの大軍を持ってすればこんなものかとも思っていた。


「しかし、奴らもよく働いてくれたものだ内部からの工作があれほどうまくいくとはな…これでは最後の仕込みも必要なかったかもしれんな」

この後直接会うことになるであろう内通者達の顔を思い浮かべため息をつく


「バルト少将!“六の目”より入電!ヨウイ完了 イツデモ アイズ送ラレタシ

とのことです!」

通信技師が内通者からの電文を読み上げる

「さて、仕上げだな」

そのままバルトは軽快な足取りで甲板から船室に戻っていった


船の外では上陸する兵達の凄まじい雑踏と叫び声それを鼓舞するようにラッパの音が鳴り響いていた

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