第六話 彼女の正体
マリーはバックハウス家の侍女だった
だがべつにこの国において侍女という存在は珍しくはない
少し裕福な家で1人か2人ほどの使用人を雇っていても何もおかしくはないのだ
彼女は今の職場にとても満足していた
いいや、言い直した方がいいだろう少し前までは満足していた
最初は優しい旦那様と話のできる奥様によくしてもらっていた
だが、奥様がお子様をご出産なさってから少しづつ何かが変わってきたことに気づき始めた
その違和感の正体はなんなのだろうか?
そう自問してみるがやはり原因はつい最近生まれたばかりのルーク様だろう
どうして違和感を感じるのだろうか、生まれた頃は普通のかわいい子供だったように感じる。だがいつからだろうか?
この子の目に他のことは違う知性を感じるようになったのは…
最初はこの家族にほだされすぎた為に親バカ的な何かを持つようになってしまったのではないかとも本気で悩んだがそう言う感情とは何か違うように感じる
ベビーベッドからしきりに外を眺める姿や壁に貼ってある国勢地図を凝視していたり
していて何か意味のあることを考えているように見えてしまうのだ
極め付けにルーク様は1歳から2歳にかけて日中ずっと泣き続けていて奥様と手を焼いていたのだが3歳になった途端に突然夜泣きすらしなくなったのだ。
やはり旦那様のお子様ですから何かが違うのでしょうか?
これは要注意かもしれませんねそう思い彼女は今日も定期連絡を入れる
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その日も私は奥様と旦那様が出かけた折りを見はからってルーク様を寝かしつけ自室に隠してある無線を取り報告をする
「こちらスピオニラ、本部応答願います」
『こちら本部 スピオニラ潜入ご苦労 何か動きはあったか?』
ノータイムで本部局員が応答する
「いえ、いまだに動きは見られないため計画はまだ実行されることはないかと」
『そうか、それにしては声に覇気がないが何か思い当たることでも?』
図星だ。流石に本部の通信局員をしているだけはある
「はい、ですがまだご報告するほどではないかと」
『ふむ、まぁお前が言うなら問題はないのだろう。奴らは確実に何か反乱作戦を考えていることは間違いない』
「何か言い切れる証拠が?」
『いや、確たる証拠はないだが長官殿が仰るのだ50年前あれほどの苛烈な抵抗を見せた彼らがたった半世紀でその牙を失うわけはないと』
証拠もない潜入に10年の歳月をかけている点を見ても長官の入れ込みようがわかると言うものだ
「一体どれほどの抵抗を見せたのやら…、ではそろそろ失礼いたします」
『あぁ、くれぐれも潜入を悟られないようにでは、通信終わり』
通信を終えた後彼女はため息を吐く
「あー、これでいいのかな…?」
そう言いながら彼女はまた日常に戻っていく
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