第2話スズランの過去
スズラン 授業中
「悔しいなぁ・・・・・」
黒板消しを握る手に力が入り、外を見た。
クラスメートが魔術を使い実技授業をしている。
悲しかった・・・・どうして自分は魔術が使えないのかと
魔術には魔力が必要であり火や水に変換して放つことで使うことができる。
そして魔力はすべての生物が持っているというのが研究の結果わかっている。
だが私の身体の魔力が極端に低くく変換の為の魔力が足りないらしい。
通常、器に水をためるように使わない時間に応じて魔力が溜まっていくはずのものが全くたまらない。
そのため最大値を調べてみたが器自体は大きいという。
こうして私は魔力放出病という人類初の病名をつけられることとなった。
魔力を常に放出し、常時魔力枯渇状態。
マジックポーションを使ってもすぐに放出されてしまうため、学園側から魔術を使えない人物として認定されてしまったのだ。
悔しくて泣きそうになりうつむいていたがこれではいけないと顔を上げると今度は街の結界が目につく。
その外は魔物がいる場所でありなぜか魔術の威力が下がってしまうため魔物を駆除できず人間が住める地域はないといわれている。
ドーム型の魔術結界があれば住めるため人々はその地に住むようになった。
世界にはこのような結界がいくつも点在しそこに街を作っている。
王国建設時からある王立研究所が結界を開発し世界全土で使われることになった。
しかし12年前に魔王という存在が突然現れ世界の西部を侵略してきた。
王立研究所のある街の結界を壊しその後すべて破壊していった。
そこに人が住んでいたと思えないほどに。
その勢いのまま魔王は魔物を使役して侵略範囲を東へと拡大し10年前主人公の暮らす中部にある街、マリーゴールドに魔物が襲撃してきた。
しかし王国中部への橋頭保を確保されるわけにはいかないと王都や周辺都市から援軍が駆け付け、西部と中部を結ぶ橋が落ちるという被害を出しつつも何とか防衛に成功した。
「お父さん・・・・」
ピンクの髪をいじりながら昔のことを思い出す。
兵士だった父タイムはマリーゴールド防衛戦に参加した。
避難所で座っていると当時3歳だった私と母が呼ばれ、戦時病棟に兵士さんに案内された。
「取り乱さないようお願いします。」
そういってドアを開ける。
ベットの上にいた父は左腕と右足を失い頭と胸には血の滲んだ包帯が巻かれていた。
「わたしは席を外しますので・・・・最後のお話を」
そういって案内した兵士さんは部屋を出て行った。
「あなた!!」
「お父さん!!」
「・・・・バーベナ・・・スズラン・・・・。」
「そんな・・・いやよ!あなた!しっかりして!!」
「いや・・・・自分も兵士として応急処置はしたことあるからわかる。これは無理だ・・・。」
「お父さん!!」
「すまないバーネナ、スズランを頼む。スズランはバーベナの言うことをよく聞くんだよ」
「いやだよお父さん!私、まだ魔術教えてもらってない!」
「そうだったな、5歳になってから教える約束だったな。すまない、バーベナに教えてもらいなさい。教えてもらったことは、ほかの人のために使いなさい。」
泣きじゃくる私は袖をつかんでうつむいて首を横に振った。
「・・・・お父さんの名前は私の父さんがつけてくれたんだ・・・・。
[勇気]ある人に、[行動力]のある人になるようにと、私もそれに倣ってお前に名前を付けたんだ。
スズラン・・・裏表のない[純粋]で[謙虚]な子になるようにとね。」
お父さんは表情を緩めながら続けた。
「兵士としてこの街を、お前たちを守ることができた上に娘にまで見送られて逝けるのだから私は誰も恨んでないし後悔してもいない。」
「スズランにはまだ父親が必要です・・・お願い・・・・死なないで・・・タイム」
「すまない・・・・バーベナ。君には苦労を掛けてしまうが許してくれ。酷なことを頼むが娘を頼む」
「・・・わかりました・・・スズラン、お父さんに約束しましょう?」
「・・・うん。わかったよお父さん。」
「バーベナ、スズラン愛している。[再び幸せな日が来る]ことを願っているよ」
そういってお父さんは息を引き取った。
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