刻の住む町
角千代
第1話 プロローグ1
この町に住んで1年が経ち、わかったことがある。ごはんが必要なのは私くらい。空を飛べないのは私くらい。勉強が必要なのは私くらい。みんなと違うのは私くらい。
人間は、私くらい。
____
「ごはんできたよー」
下の階から
「勉強は順調かい?」
食卓に着くなり
「まったく、最近たるんでるんじゃないか?」
「ほらほら華箭ちゃん、ごはんのときに勉強の話はしないの」
うんうんと頷いて、縁に100%同意する。まったく、華箭さんは相変わらず厳しいなあ。まあ、確かに最近、宿題がおざなりになってるような気も、しないことはないんだけど。
この二人、縁と華箭は刻子の今の家族だ。縁はやさしくてふわふわしていて、毎日おいしいごはんを作ってくれる。見た目も刻子と大して変わらない。大きなふさふさの尻尾があること以外は。対する華箭は、刻子に厳しい先生だ。口うるさいときもあるけれど、何もわからない刻子にいろいろなことを教えてくれている。こちらは見た目も刻子とおんなじで、人間にしか見えない。でも、実はとっても長生きで、センニンというんだと、華箭が教えてくれた。全然違う性格の二人だが、刻子は二人が大好きだった。そして、もう一人いるはずなのだが……
「四季音さんが来ませんね」
「寝てるのかも。刻子ちゃん、ちょっと見てきてくれる?」
縁に言われて気がついた。そうだった。私がこの1年でわかったことがもう一つある。
―――四季音さんは、いい加減だ
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