第27話 『プリンの正体』


 『あの子は、食べられる側の思想的指導者、チー・キン・ラー・イスの孫に当たります。』


 『なんと。』


 チー・キン・ラー・イスは、ぼくの祖父の先生だったと聴く。


 祖父は、高弟のひとりだったらしい。


 まあ、ぼくには、関係がない訳だが。


 自宅には、チー・キン・ラー・イスから貰ったというペンがある。

 

 かなり、そうしたものは、怪しいとは思っていたが。


 しかし、もしかしたら、多少の所縁は有るのかもしれない。


 『でも、そうだとして、なにが問題になりますか?』


 『山谷くんは、権力とか、権威については、むかしから、無頓着だったもんね。わたしは、むしろ、反体制的だった。でも、客観的に考えて、そういうのは、しばしば、反対派のシンボルになるわけなのです。拠り所になりやすい。だから、逆に『われわれ』の指導者にとっては、危ないかもしれないわけ。そこで、さっさと、ぷりんの盗み食いとかの、訳わならない罪を着せたのでしょう。』


 『よく、知ってますね。』


 『だから、わたしは、情報の吹きだまりな訳なのです。そのなかから、いま、役に立つものをよりだし、いつか役に立ちそうなものは、近くに置くわけです。そうでないものは、溜めておく。』


 『ぼくは、役に立ちそうな訳ですか?』


 『まあまあ、そう、ひがみっぼく分類はしないでください。あなたは、生きている。ただの情報ではない。大切な命です。かけがえのない命です。わたしにとっても。』


 『む。』


 ぼくは、感じるところはあったものの、どこか、ひっかかっていた。


 じょうめ、が、ただの個人ならともかく、国家を背負ってるとなると、はたして、いま、信用できるのか?

  

 それは、長い歳月のなせる哀しい技でもあった。



     😢💦


       


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る