第8話 『プリンがふみたいもの』 その1


 プリンは、お金が欲しかった。


 そりゃそだろう。


 地球では、お金がないと、なにもできない。


 『われわれ』の里では、お金自体がない。


 それは、『食べる側』と『食べられる側』との関係から生まれる。

 

 『われわれ』の里には、地球のような土地がない。


 作物は、空間で作るのだ。


 そのためには、ある種のノウハウや、機械が必要になる。


 作物を作るための空間は、『食べられる側』の専有である。


 その空間は、縦とか横とかの概念ではない四次元空間で作られる。


 しかし、彼らには、そうして作物を作る、ノウハウや機械類がない。


 それらは『食べる側』が供給する。


 しかも、一回行ったら、そのノウハウや機械類は、それでおしまいになる。


 次回には使えないのである。


 作物が出来ると、それらは消えてしまうから、どうしようもない。


 ノウハウというのは、それ自体が、新しく毎回作られるもので、一回使うと、それは役に立たなくなる。


 空間の物理法則は常に変わって行く。


 作物を作る短い期間だけ、一定に維持することが可能だが、長期間は維持できない。終わると、そのノウハウは空間が受け付けなくなる。


 不思議だが、それが法則である。


 その一周期は、『われわれ周期』では、百万年とされる。


 ただし、地球の時間には、換算不能らしい。


 事実上、同じ手法は使えない。


 そこらあたりを計算しつつ、毎回違うノウハウを作り出すのが、専門の『農作監理官』であった。


 大変に高度な作業が必要で、失敗は絶対にできない。


 だから、農作監理官は、重役である。


 官吏の中でも、最高位に当たる。


 実際の作業を指揮するのが、『農作代官』であり、その手下たちだ。


 まあ、農作監理官が上級の神様ならば、農作代官は天使長で、手下は下級天使である。


 これは、たとえだけれども。


 実際には、神様はいない。


 前にも言ったが、『われわれ』の『食べる側』は、直接民主制であり、首相にあたる議長や各役職は、持ち回りである。


 しかも、入れ物は常に同じで、中身が入れ替わる。


 だから、まあ、見た目は、いつも同じ姿になる。


 それは、要するに、ノスタルジーらしい。


 もともと、地球人類の仲間である。


 肉体を捨てたとは言え、そこが、精神的な拠り所らしい。



 なので、『食べる側』には、通常実体がない。


 しかし、食事や会議や、パーティーの時など、必要に応じて実体を構成する。


 そのほうが、判り易いからだが。


 むかし、地球のSFドラマでも、あったような感じだ。


 ただし、実体は作りものであって、中に誰かが入った時だけ機能する、人形とかロボットみたいなものだ。


 どうやって子孫を残すのか。


 精神合体方というものである。

 

 まあ、説明はできないけれど。


 『食べられる側』には、肉体がある。


 ただし、常に三次元空間というわけではないので、そこから三次元空間に渡ると、各自がそれぞれに、勝手に独自の姿になる。


 だから、妖怪は、ややこしいのだ。



     **************


  

 


 

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