第4話 『プリンがみたいもの』


 『なにを、みたい?』


 と、聞いたぼくは、愚か者かもしれない。


 しかし、プリンは、あっさりと答えたのであった。


 『ひょうが。』


 『む。』


 さあ、これは、困ったぞ。


 なんで、ひょうが。なのか?


 確かに、プリンの故郷には、ひょうが。は、無いだろうな。


 『われわれ族』に、頼むわけにはゆかない。


 ぼくたちは、いわば、流民である。


 シューマンさんの『流浪の民』は、ご存じであろう。


 『なれしこきょうをはなたれて〰️〰️』と、うたうのだ。日本では、石倉小三郎さまの訳詞で知られている。


 ぼくたちには、住民登録もない。


 だから、海外には出ようがない。


 また、プリンには、行く先の選択権は、なかったのである。


 さあて、『できません。』と、言いたいが、それでは、哀しい。哀しすぎる。


 それで、『覚』様に、尋ねに行ったのだ。


 『覚』様は、ひとの心を読む妖怪として、怖れられるが、故郷は、やはり、『われわれ』らしい。

 

 ただし、政府に反発して自発的に地球に来たのではないか、とも言われる。相手の意思を読むのは確かに可能だが、実は、優しいのである。また、なんでも知っている。偉い存在である。


 『久しぶりだね。』


 と、『覚』様が言った。


 『ああ、ひょうが。ね。この子がなにをしたと? ああ。プリンね。たわいもないことで、いまだに、いじめをするか。あわれなり。』


 日本にも、ひょうが。は、あるが、ちと、小さい。それならば、イェティさんを、ネッシーさんに乗せてきてもらい、ヒマラヤに連れてってもらいなさい。とのこと。


 『イェティさんは、くまさんだったとか?』


 と、ぼくは、尋ねた。


 『カモフラージュさ。』


 とのことで、『覚』さまが、電話で、ネッシーさんと、イェティさんに話をつけてくれたのである。


 『陸上は、どうやって、移動するのですか?』


 と、重ねて尋ねた。


 『なに、仲間の飛行機でね。』


 とのことだったが、あまり、話したくは、ないらしい。


 あとから、プリンに尋ねたら、アネハヅルという鳥さんが、乗せてくれたという。


 プリンも、イェティさんも、小さいのである。



         ⌒(ё)⌒ 







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