四話 良き妻、良き友

?「ほんとお前様は忙しいですね」

氏邦「悪いな、福」

彼女は福。私の妻でよく私に尽くしてくれる。私の最愛の妻だ。

福「いいのですよ。お前様が元気でいれば。

今度の戦は勝てるのですか?」

氏邦「いいや、少し難しいかもしれぬ」

?「氏邦殿の言うとおりだな」

氏邦「義父上!」

彼は藤田康邦。福の父親で私にとても良くしてもらっている。

康邦「今度の敵は信長の後を継いだ秀吉だ。要する軍は十万よりも上だろう」

氏邦「さすが義父上。氏規…」

プチッ

福「あら、お前様、草鞋が…」

氏邦「氏規?」


小田原城


?「氏直様。秀吉が二十万の大群で出陣したとの由にございまする」

氏直「わかった。下がって良いぞ。小太郎。」

小太郎「はっ」

彼は風磨小太郎。我が北条氏に100年付き従ってくれている忍び、風磨衆の棟梁だ。

氏照「小太郎はなんと?」

氏直「秀吉がついに出陣したようだ。叔父上、皆に召集をかけてくだされ!」

氏照「ハッ」


一刻後


氏直「では手筈通りに」

家臣達「ハッ!」


箱根口


総大将 北条氏直 一万五千

副将  北条氏照 一万

副将  北条氏邦 一万

先鋒  藤田康邦 三千

同上  間宮康俊 三千

次鋒  清水康英 三千

同上  松田康長 二千

三鋒  垪和康忠 二千

後詰  松田憲秀 二千



松井田口


総大将 大道寺政繁 一万三千

副将  北条氏光  七千

先鋒  和田信業  五千

同上  笠原正尭  五千

次鋒  上杉規富  五千

同上  成田氏長  五千

後詰  山角定勝  三千

同上  山角康定  二千

遊軍  猪俣邦憲  二千

同上  由良国繁  千

同上  伊勢貞運  千

同上  小笠原康広 五百

同上  伊藤政世  五百


氏直「いざ出陣せよ!」

一同「ハッ」


美濃国 岐阜城下

?「ついに北条攻めか!」

?「そうはしゃぐな市松」

福島正則「はしゃぐなと言われてもよ、北条を滅ぼせばついに天下統一だぜ〜」

?「まだ奥羽の伊達、最上、津軽らが残っておるが」

正則「虎之助は固いんだよ」

加藤清正「固くない!」

正則「おっ!他のやつも来たみたいだ」

清正「俺は固くない 断じて固くない!」

正則「わかったから わかったわかった」

?「清正と正則ではないか!何しておるのだ?」

正則「おお佐吉、平馬!そうかお前らもこの戦は前に出るのか」

石田三成「佐吉ではない!三成だ。」

大谷吉継「そこはどっちでもいいだろう三成」

正則「にしてもこの四人が揃って戦うのは賤ヶ岳以来ではないか?」

三成「ああ。俺と吉継は事務的なことを多くやっていたからな」

清正「そろそろ軍議だそうだ。本陣に戻るぞ。」

三成「かしこまった」

正則「やっぱり固いな二人とも」

三成・清正「固くない!」


岐阜城本丸

?「少し面倒くさいこととなった」

?「どうしたのだ?官兵衛殿?」

黒田官兵衛「内大臣(信雄)様 いや北条家が小田原から出たとのことで。」

織田信雄「それでは野戦にて蹴散らせば良いのでは?」

官兵衛「そう簡単にはいかないのですよ」

信雄 「何故?」

官兵衛「向こうには地の利と、箱根の要塞があります。それを上手く使われると少し厄介な相手です」

?「それを破る策がある。そうであろう官兵衛」

信雄 「秀吉様!」

官兵衛「その通りです。秀吉様。箱根口が難しいならば他から攻めれば良い。すでに松井田に構えておる笠原新六郎(正尭)、上杉十郎(規富)はこちら方に内通しております」

秀吉「さすがは官兵衛じゃな。この戦の先鋒に三成・吉継を選んだ理由もすでにわかっておろう」

官兵衛「ええ。完璧人間のように見えるであろう三成に敗北をさせることで、周りの人間に、三成でも戦は苦手なんだと、認識させることでしょう?」

秀吉「うむ。しかし、三成に死なれては困るゆえな、戦上手の吉継をつけておいた。これで大丈夫であろう」


この時の誤算が後になって大きくなるのを秀吉達も、氏邦達も誰も見えていなかった。



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