物語の始まり

あーる

物語の始まり

なぜ生まれてきたのかなんて わからないけれど

生まれてきたからには 幸せな物語にしてほしい

別に望んだ覚えも頼んだ覚えもない

気づいたらこんな世界にいて ただなんとなく時間が過ぎていく


最初の声を出してから最後の息を吐くまで 名もない物語として終わる

帰る場所も目的地もない

それでも足を止めることはできないまま 持て余している


この退屈はいつか満たされるのか 


誰かが言っていた

泣きながら生まれてきた理由は 幸せで涙があふれたから

でも違うと思う 

生まれてきた理由はわからない でもその理由が

奇跡みたいに輝いてないこと

運命みたいに晴れやかでないこと

必然みたいに正しくないことはわかる

だから 生まれたことを後悔して泣いてるんだ


後悔で埋め尽くされた 錆びついたこの心を

退屈で染まった 鉛色のこの世界を

このまま終わらせてしまおうか そんなふうに思ってた


それでも 足を止めることもできず 意味もなく歩いていた日々の中に

偶然みたいに気まぐれに でも宿命みたいに決まっていたように 


この物語でキミを見つけてしまった


見つけたキミは泣いていたのに 声をかけること 動くこともできなくて

その姿にどうしようもなく惹かれてしまった


この心も この世界も

キミから生まれたその1粒に 溶けてしまった

溶けた世界は鮮やかで 今までの錆びついた鉛色とは何もかもが違う

目を背けたいくらいの世界だった


その世界で最初に願ったのは キミのことだった

キミの涙の理由はなんだろう

その理由がどんなものでも キミの隣にいたい

その理由がキミを傷つけるものだとしたら それがないところまで一緒に行こう

いつの間にか そんなことを思った


それはほんの一瞬だったような とても長い時間だったような気がするけれど

気づいたら泣いてたはずのキミが あの涙は幻だったみたいに

さらに美しくに笑った


笑ったキミと目が合って キミはこの世界は美しいと言った

退屈で鉛色のこんな世界よりも キミの方が美しいと思う

何よりも そんなふうに世界を見れる キミの心が美しいと思った


このまま終わらせるつもりだったのに

キミがいるこの世界でなら キミが美しいというこの世界でなら

もう少し生きてみようと思った


後悔で錆びついた心は 動くことを思い出して

退屈な鉛色の世界で 目的地を見つけてしまった

 

いつか涙の理由を教えてほしい キミの手を絶対に離さないから

そして温かい涙を流すその瞳に映る キミの世界を教えてほしい


その時 キミに伝えたいことがあるんだ

望んだ覚えも頼んだ覚えもない でも キミとだったらいいなと思うんだ

錆びついた心も 鉛色の世界も キミが溶かしてくれたから

キミがくれたこの美しい世界で どうしようもなく キミを求めてしまうんだ


だから聞いてほしいんだ 泣きながら生まれてきた理由と幸せな物語を

そして願ってもいいかな 幸せな物語を キミの隣で

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