第四話 ボス戦

 さて、【貪欲鬼どんよくき赤火せっか】との勝負だが相手は持っている武器の通りゴリゴリのパワータイプ。パワータイプにはスピードで対抗するのが定積であることが多いが‥‥‥


「それじゃあ詰まらねえよなぁ‼」


俺は定積を捨てて、目には目を力には力をの脳筋スタイルで行くことにする。

 といってもこれは勝負をする上で相手と同じ土俵に立つという俺のポリシーのようなものだ。今回の相手は力と巨大な金棒の質量という純粋な破壊力が主体の戦闘スタイルだろう。

 だが一つ気になる点がある。

 それは、名前にある貪欲鬼という字だ。貪欲とはひどく欲深いという意味、相手が名前に関連する何らかの能力を使えた場合、どういうものかは予想として三つの能力が考えられる。


①武器を奪う能力

②能力を奪う能力

③その両方


「どれかが正解だったとしてもかなり危険だな。特に能力を奪うだった場合俺になすすべはなく完全に詰む。」

〔マスターどういたしますか?今ならばまだ退避が可能ですが‥‥‥〕


はぁ?退避?そんなもんする必要はない!

 元々、喧嘩を売った時点でもう勝負‥‥‥いいや、殺し合いが始まっているんだ。退避なんてしたらそれはもう負けを認めるようなもの、諦めたらあそこで終了だ。

 それに諦めるということは俺にとって何よりも退屈でつまらないことだ。俺は嫌いなことをわざわざ自分から進んでするような人間ではない。

 そして今の俺の俺の目の前には、俺の退屈を紛らわせてくれる極上の獲物がいる。そんな奴を見逃すなんて俺は絶対にしない。


「さてと、まずは能力の確認だ。」


 俺は、瞬動を使い赤鬼との距離を詰め水月へ向けて全力の突きを撃つ。この時神通力による身体のる力の強化も行う。

 これは【仙術:剛腕ごうわんかた】とでもなずけるかな。

 と、それは後にするとして、強化された俺の腕力による突きはそこそこの威力だったらしく赤鬼がかすかに顔をしかめた。


「物理攻撃への耐性はあるようだが、無効化はできないと‥‥‥!」


今度は、赤鬼がお返しとばかりに巨大な金棒による突きを放つ。というかこの動き、さっきの俺がやったのとほとんど同じじゃねえか!動きは完全に同じだが威力の桁が違う、そもそも相手は巨体それだけの破壊力があるのは当然だ。


「にしても、いい意味の貪欲だったか‥‥‥。」


 この【貪欲鬼:赤火】の能力は戦っている相手の技術の模倣かなりめんどくさいが、能力を奪われるよりはましだな‥‥‥さて、と面白くなってきた!

 その時、不思議なことが起こった。

‥‥‥すみません言ってみたかっただけです。

て、誰に謝ってんだよ俺!

 起こったことはさっきと同じ悪魔族への変身だった。


「こりゃあいい懸念点だったリーチの差が多少は埋まる。」


俺は長杖を神通力で今の体格に合うように大きくする正確には近い素材を生成して伸ばしただけなんだがな。

 伸ばした長杖で赤鬼と殴り合う。

攻撃を互いに受けあい一瞬出来た隙を突き攻守が後退する。それを何度も繰り返しているうちに赤鬼の動きがだんだん洗練されていく。

 耐えて撃つという俺と赤鬼との攻防は次第に避けては打つ、避けては打つを繰り返していた。

 だが、このままではじり貧だと考えた俺は一つの賭けに出た。

 それは‥‥‥


「うおら!」


それは、【仙術:剛腕の型】により強化した腕力をさらに強化させた全力の打ち込み。

 突然変わった動きに赤鬼は対応できず、赤鬼の金棒と俺の長杖がぶつかり合い両方とも手元から離れる。赤鬼は状況に一瞬だけ混乱したが、その一瞬は戦闘において致命的な隙だ。俺はそこを突き全力の連撃を放つ。


「おら、おらおらおらおらおらおらおら!‥‥‥。」


連撃によって赤鬼が後退する。


「次は、素手での殴り合いと行こうか!」


 赤鬼も自分の得物を取りに行くの難しいと理解したのか同じように構えをとる。

 岩のように巨大な拳が眼前に迫るのはかなりの迫力だ。見た目通りの破壊力も持っているだろう。普通なら受け流すか避けるところなんだろうが、同じように俺も全力で赤鬼の拳を殴る。


「っいって~~!」


 わかってはいたが今の強化段階であいつに勝てるわけないよな。腕も折れてしまったが自動回復の戦術を生み出し腕を治す。【仙術:養老ようろうてん】って呼ぶか。これで、ダメージを受けたそばから回復できるな。次は、強化だが【仙術:剛腕の型】の重ね掛けだけじゃ足りない、ほかにも創るか‥‥‥【仙術:剛脚ごうきゃくの型】まだ足りないだろうな、【仙術:堅牢けんろうの型】自動回復があるとはいえ、さすがにダメージを受け続けてたら回復が追い付かなくなりそうだしな、【仙術:重金体じゅうごんたい】うん、これで攻撃と防御を同時に挙げられる、これで十分かな?

‥‥‥さ・て・と♪


「【貪欲鬼:赤火】退屈しのぎに付き合ってくれてありがとうな、おかげでお前の貪欲さがうつっちまったよ‥‥‥ここからは、蹂躙劇だ。」


 その時の俺はいつもの狂気じみた笑みを浮かべていただろう。それが自分でもわかるぐらい今戦いを楽しんでいる。

 そして楽しませてくれた赤鬼君には今出せる最大級の一撃という名のお礼をしようじゃないか。


「【仙技せんぎ仙鬼剛撃せんきごうげき重鎧じゅうがい】!」


 俺が現段階で思いつく限りの仙術を創り出しすべて使い強化した必殺クラスの一撃、その拳は先ほどまで苦戦よくていい勝負をしていた赤き鬼を一撃で鎧袖一触にする。


「ク、クク!クハハハハハハ!‥‥‥勝った、勝ったぞ!‥‥‥‥‥‥。」


 俺は、勝利の余韻に浸る間もなく気絶した。後でわかったことなのだが、魂氣を使いすぎると精神的な負担が少しづつ蓄積され消耗するため休憩を挟まなければいけなかったらしい。まさに精も魂も尽きたというわけだ。

 て、言うか先に言っといてほしかった‥‥‥。


〔お疲れ様です。マスター〕

「ああ、ヤシロ‥‥‥俺どれくらい気絶してた?」

〔ざっと、三〇分ほどです。〕


 結構寝てたな‥‥‥俺。時間は‥‥‥もう昼時だな。帰るか。


〔マスター、ご報告したいことがあるのですが‥‥‥よろしいでしょうか?〕

「ああ、昼飯食ってるときに頼む。」

〔了解しました。〕


 ゲームを終了するときは起動と同じで指輪の外部パーツを押し込む。

 すると、視界が暗転し目を開けると俺の部屋の天井が見えた。


「すー‥‥‥ふーーーー‥‥‥。」


 深く深呼吸をした後、昼食を作るためキッチンへ向かう。


「ああ、キッチンってなんでこんな落ち着くんだろうな‥‥‥。」


 キッチンは俺にとって一種の聖域のようなもので心を落ち着けたり精神統一するときはいつもここだ。古神家にはキッチンが二つありそのうち片方が俺専用の聖域もといキッチンだ。俺は基本的にここで料理をしている。

 量を作る時だけ、もう片方のキッチンを使っている。


「さて今日のメニューは‥‥‥チャーハンでいいか。」


 さすがに疲れたからな、簡単な奴でいいだろ。数十分後にできたチャーハンを食べながら、ヤシロの報告を受ける。


〔ご報告します。〕

「おう‥‥‥。」


 ヤシロの報告は、俺が【貪欲鬼:赤火】を倒したときの報酬とあの場にいたプレイヤーたちのその後、そして、俺が戦闘中に創り出した術や技を【アカシックレコード】に登録したということの三つだ。

 まず俺が赤鬼を倒したとき報酬に関してだが、まず手に入ったものは武器で名前を【仙鬼長杖せんきちょうじょう貪炎どえん】といい効果のほどはまた後で見るとしよう。

 そして、もう一つの報酬が【貪欲鬼:赤火】がいたエリアの購入権だそうだ。エリアってことは土地の購入ということになるが法的な意味で大丈夫なのだろうか?聞いてみたところ、そもそもアストラルボディーの状態で触れることができるものは俺たちが住んでいる現実の世界に何の影響もないので方には引っかからないらしい。

 報告その二、あの場にいたプレイヤーたちのその後。あいつらは俺が赤鬼を相手にしている間にヤタノカラスの指示に従い非難することに成功したらしい。ただ、相当な精神的ダメージを受けたらしく、メンタルケアにはかなり時間がかかるそうだ。

 報告その三、新しく創った仙術なんかを【アカシックレコード】に登録してくれたらしい。正直これはありがたい。縮地の時に一回やったが結構めんどくさかったんだよな‥‥‥。


〔説明は以上になりますが、ほかに何か質もはございますか?〕

「いや、特にないな。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る