* * *


 松永にあんなセリフを吐いて、後悔しなくもない。

 せめて、確証でもあれば。


 笹埜は、遺留品のノートを眺めた。コピーではなく、実物をどうしても見ておきたくなったのだ。

 誰も重要視していないから、見せてもらうのは容易だった。

 どうも気になる。裏表紙の見返しが目に留まる。


 光の加減で、小さな跡が残っているのに気づく。

 書いてみたものの、消しゴムで消したらしい筆跡。


 筆圧で、紙がわずかにくぼんでいる。鉛筆の芯を横にして薄くこすってみる。

 白抜きとなった文字が浮き上がって、読み取れる。


 思わず息を飲む。そこには、こう書かれていた。


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