夜
勝利だギューちゃん
第1話
私鉄の有料特急に乗っている。
この私鉄の特急は全て有料で、座席指定。
つまり、指定された席に座らないといけない。
わずかなとりでも、料金を取る。
がめつい。
「今日も、疲れた」
夜、さすがに仕事に疲れていた僕は、どうしても座りたくて特急に乗ることにした。
「同じことを考える人はいるんだな」
そう思う。
駅から列車に乗り、次の駅までは5分。
そこから、20分ほどは止ならない。
その次の駅で、たくさんの人が乗ってきた。
「少し寝よう」
そう思っていた時だ。
「あれ?もしかした・・・」
隣の席に座った女の人が声をかけてきた。
同じくらいの歳だろうか?
20代半ばだ。
「やはり、佐藤くんだ、佐藤亨くんでしょ?」
「そうですが・・・」
「私よ、私。」
「?」
「佐倉愛衣よ」
「佐倉さん?」
偶然だった。
高校の時の同級生。
卒業後は一切会っていなかった。
同窓会にも顔を出していない。
「久しぶりだね。すぐわかったよ。佐藤くん変わってないね」
「佐倉さんは、変わったね」
「女は化けるからね。今何しているの?」
「一応、デザイナー。佐倉さんは?」
「私は、看護師」
「大変だね」
「うん。さすがにね」
久しぶりの再会に時が戻った気がした。
他愛のない話で盛り上がった。
「あっ?佐藤くん。そのケガどうしたの?」
「少し擦りむいて・・・」
「待ってて。ばんそうこう持っているから」
「えっ?」
佐倉さんは、ばんそうこうを貼ってくれた。
「これでよしと・・・」
そこには、かつてとかわらない笑顔があった。
・・・
「ん?」
目が覚めた。
まだ特急のなかにいる。
「寝てたのか」
隣は誰もいない。
『まもなく、〇〇駅に到着します』
車掌のアナウンスが流れる。
「そっか・・・夢か・・・そんな偶然はそうそうないよな」
少しがっかりした。
前の駅を出てからの、ノンストップの20分間。
寝ていたようだ。
違和感に気づく。
「ばんそうこう?いつ貼ったっけ?」
夜 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます