散る花に手を伸ばす
佐久間清美
本編
プロローグ Graduation *桃子*
最後の1期生 1/2
*
最後のアンコール前の、MC。
今日も楽しかった。
テレビ番組で歌を披露するのも楽しいけれど、やっぱりライブで、ファンのみんなの前で歌うのが一番楽しい!
沢山の愛と熱気を感じて、私たちはそれに応えて。
アドレナリンが出まくったせいか途中の記憶がない。
多分ミスはしてないはず。
というか、アドレナリンのせいじゃないかも。
これから私は大切なことを話さなきゃいけないから。
他の人がリーダーだったら、きっと上手く話しの流れをもっていってくれたんだろうなあ。
もしくは、同じ1期生がいれば。
残念なことに両方無理。
私が27人をまとめるリーダーだし、最期の1期生だもの。
息を深く吸って、ゆっくりと吐く。
全国ライブのオーラス。
みんな楽しく終わりたかったよね。
わかってるけど、ごめん。
今日を逃したら、ファンのみんなに直接伝える機会は当分ないんだから。
メンバーが一通り喋り終わった後、一歩前に出る。
「アンコールの前に、少しだけお話をさせてください」
ざわつく会場。
メンバーも戸惑ってるんだろうな。
だって、これは事務所とプロデューサーと話し合って決めたこと。
他の人には話していないこと。
「私たちは2014年に、6人でデビューしました。事務所の先輩方がTVで活躍する中、私たちは全然売れなくて。TVに全然出られなくて。どうして売れないんだろう
どうして、どうして……。ずっとくすぶっていました」
胸がぎゅっと苦しくなって一呼吸おく。
ざわざわしている会場。
きっと私がなにを話したいのか、わかっている人は沢山いるんだろう。
また深呼吸をして、話を続ける。
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