第11話 ギーの決意

 連日寒さの厳しい日が続いていた。特に早朝は冷え込む。しかし千夜は幸福だ。GIIギーに立ち寄り、快適な室温の中でチョコレートを味わえるのだから。


「次の日曜、一緒に出かけない?」


 不意に掛けられた言葉に顔を上げると、ギーがデパートの広告を差し出してきた。


「バレンタインフェア。そっか。日曜日はちょうど、十四日だね」

「行こうよ」

「でも銀くん、お店は? バレンタインって書き入れ時じゃないの?」

「構わない。ね、行こう。一緒に」

「う、うん」


 気圧けおされて頷いた千夜に、ギーは満足気に「よし」と言った。


「でも私、GIIギー以上のものに出会えない気がする」

「乗り気じゃないの?」

GIIギーさえあれば良いんだよ」

「……くっ……君って子は」

「銀くん?」

「じゃあさ、こうしよう。フェアの中で、俺へのおすすめチョコを見つけてよ。俺に今度作ってもらいたい味とか、参考にしてもらいたい形とか。そういうの。チョコ通の千夜ちゃんなら、適任でしょ」

「それ楽しそう! 任せて!」

 

 まだ見ぬ未来の素晴らしいGIIギー製チョコの為にもなるのだったら、お安い御用である。千夜は一気にやる気がみなぎった。


 一方のギーはこの時、緊張に昂ぶる心を鎮めようと必死だったのだが、千夜の知るところではなかった。


――二月十四日。地球では、愛している人に想いを告げる日だそうだ。この日、告白しよう


 どれだけ千夜に恋しているか。

切実なこの想いに、応えて欲しいということを。

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