転生者の理想離れのガン萎え生活

トシゴロー

この日まではくっ殺を生で見たいと思ってた。

「くっ、殺せ」


これを生で言われるまで俺はこの言葉をいいものだと勘違いしていた。俺はこの日のことを忘れることはないだろう。いやできない!



くっ殺をなぜ知ってるか。それは俺が転生者であるからだ。よくある刺されたや、車に引かれそうな子供を救ってなどの転生ではなく、気づいたら赤ちゃんからやり直していた。



前世の記憶を持っていた俺は勉強はイージーモードで生きれた。前世の先生の「勉強は大切」というのは本当だと言うのを強く実感した。だがここは異世界、頭だけで生きていけるのは貴族や王族だけだ。

俺は貴族でも王族でもない。ましてや俺の家はかなり大きい騎士の家系。いわゆる剣術第一の脳筋家系というやつだ。


「神様~記憶持ちで転生させるならこの記憶を活躍できる家系にしてくれ~」


神に不満をぶつけてもしょうがないので不満を吐くのをやめ素振りをする。幸いなのは物覚えがいいことだ。剣術も上の中ぐらいまでの実力は15歳になる頃にはつけることができた。まぁ天才や脳筋には勝てないけどね。何考えてるかわからないしね。



15歳になり俺は成人を果たした。前世とは成人年齢が違い戸惑いはあったものの思ったよりも早く慣れた。慣れよりも怖いものはないだろう。



脳筋家系のおかげかエスカレーターで騎士の仲間入りだ。


「やったぁー。……はぁ」


嬉しくない。騎士になったからには敵国の騎士とも戦わないといけないしめんどくさい。できることなら家でのんびり暮らしたい。ヒモになって楽していきたい。そんなことは心の中でしか言えない。


「リト、早く稽古に行くぞ!」


そんなことを考えていると兄のクリスが呼びに来る。


「今日、体調悪いからいけない。」


「そんなん素振りしとけば体調は良くなるわ。」


脳筋兄がそうふざけたことを抜かしながら俺の部屋にずかずか入ってくる。


「これだから脳筋兄さんは‥」


「そんな余裕があるなら稽古はできるな。団長にしごいてもらおう。」


ぼそっと呟いただけでも脳筋兄は聞こえたらしい。脳筋で地獄耳とか誰得やねん。


クリスに無理やり騎士団長の所へ連れてかれた。


「最近、弟がたるんでるからしごいてくれないか?団長。」


「他のやつからもリトについては報告が入っている。リトのせいで最近我が騎士団も空気がゆるくなってるから見せしめとして一人で盗賊退治をしてもらう。」


「てなわけでリト一人で最近、猛威を振るっているデストロイを潰してこい。」


「ちょっと待ってください!団長も兄さんも俺を一人で行かすとか俺を殺す気ですか?」


「認めたくはないがお前には相当な知恵と力があるから大丈夫だ。少しは死に際の経験もしたほうが将来のためになるし戦闘の楽しさも知れるだろう。」


生粋の戦闘狂の兄さんがおかしなことを言いやがる。


「まぁそれが嫌ならクリスと私が一日中、相手をしてあげてもいいが無論、手加減はしないがな」


「喜んでその任務、遂行させていただきます。」その場か逃げるように任務へ向かった。



「本当に一人でいかせてよかったんですか団長?何人か連れてくこともできましたけど…デストロイって確か内の騎士団の中堅クラス10人くらいに隣国の俺らクラスの元騎士団長も盗賊の仲間入りしたってきいたけど大丈夫ですかね」


副団長が団長に心配そうに尋ねてきた。


「確かにお前が心配するのも無理はない。あいつの普段の行動や言動は上に立つような強者の風格や気迫は感じられんが…あいつは紛れもなく化け物だ」


「もちろん強いのは知っていますが、それでも騎士団の中の上レベルのリトにはデストロイは無謀な挑戦ではないでしょうか?」


「そうか、お前にはリトが中の上に見えるのか。なら、まだ騎士団長の役職は渡せないな。お前は普段の模擬戦での剣捌きを見てないのかあれは一朝一夕で身につくものではない。いかに怪我も負わずに最小限の体力消費で負けるかを考えている動きだ。あれは強者だからこその立ち回りだ。」


「確かに他国との戦争や盗賊退治で負傷してることは見たことはありませんが単純ににげているだけでは?」


「そうかもしれんが、お前も騎士団の誇りを持ってるのであれば逃げないだろう?」


「はいっ」


「そういうことだ。俺からリトについて言えることはもうない。そんなに知りたければクリスに聞け」


「承知しました。失礼いたします。」




副団長が出ていった後、団長の部屋では、

「お前の弟、力を隠しすぎてはないか?団員にも不安がられて仕事を押し付けれないんだが?」


「そうですね。リトにはリトなりの思惑でもあるのでしょう、根は優しいんで押し込めば何でもやってくれますしね。」


「そうだな、今回のだって副団長たちに行かせてたら騎士団にかなりの被害もくらっていただろう。あいつがいてくれて助かったわ」


「リトは俺ですらたどり着けない領域にいますから、俺や団長との模擬戦でさえ本気を出してませんからね。」


「そうだな…奴に弱点があるとするなら極端に女性に弱いことだな」


「後は…リトには人が殺せないこともですね。結局、圧倒的な力でねじ伏せるから負けてないんすっよね。幸いなことにデストロイには一人も女性がいないことですね。」



街から出た俺はデストロイのアジトを見つけるためによく襲われている付近を散策していた。


「クリスのせいで厄介事押し付けられたじゃねぇか。今日は給料日前だから残ってる金で夜の街へ出かける予定だったのに…うへっ、へ」


突然の任務に嘆いてると、森の奥の方から人らしい声が聞こえてくる。茂みに隠れながら、声の方へ近づいていくと、



「最近、ここら辺の商人たちの通り悪いっすね。ただでさえ最近入ってきた奴が女は誘拐すんなとかほざいたせいで商売上がったりなのに」


「でも誰もあの新入りは倒せねぇよ。リーダーですら手も足もでんかったんだぞ。次の計画でなんとかなるだろ、そしたら俺たちは女で遊び放題だ。」


どうやらデストロイの連中らは新たな計画を立ててるらしい。

「まぁ今夜で俺が壊滅させるから関係ないけどな。俺のプライベートを潰した罪償わせてもらうぜ。女で遊ぶのは合法が大切っていうこともな!」


俺は茂みから飛び出し、先に先輩と思わしき方を背後から峰打ちで倒してもう一人に剣を突きつけ、


「デストロイのアジトを教えろ。言わなければわかるりょな?」


「教えますので命だけは、勘弁してください。母の病気を治したくてつい、金に目が眩んで乗ってしまったんです。」


前世が日本という安全な所にいたせいか脅迫作業には慣れてないが今回は相手が良くハッタリでも誤魔化せた。情報を聞き出した後、縄で縛り付け気絶させといた。


どうやらアジトは森の奥の洞窟にあるらしい。早く遊びたいのでおれは走って向かった。


洞窟の中に入って行くと盗賊達が談笑しているのが聞こえたので気づかれないように慎重に近づいていく。


(不意打ちで襲うのは卑怯だけど大多数とはやりたくないから仕方ないが眠ってもらうか)


手前にいる盗賊達から順に眠らせにいこうとすると


ポキっ


運悪く小枝を踏んでしまったようだ。


「誰だ」


盗賊達が剣を構えようとするがそれをお構いなしに

倒していく。


「盗賊のリーダーを倒すとは中々やるな。私が相手になろう」


(妙な言い回しをするな。盗賊じゃないのか)


言動を不思議に思い相手をみると鎧を着ており明らかに盗賊らしさは見当たらなかった。もしかしたら敵じゃない可能性もあるのかと様子を窺っていると相手が先に仕掛けてきた。なんとか受け返すと、相手は一度離れ話しかけてきた。


「訳あって今は盗賊の仲間として行動してるんだが一応、隣国の騎士団長を務めていたから腕には自信があってね。確かめさせて貰うよ君の実力。」


(まじかよ。俺が戦ってる相手、隣国の元騎士団長かよ。兄さんクラスの強さの可能性があるってことか。相手が男でよかったぜこれなら本気を出せる)


闘気を高めて行くと相手が気づいたのか、


「凄まじい闘気だ私も本気を出すか」


相手も負けじと闘気を高めていく、お互いに緊迫した状況は長くは続かず、激しい打ち合いになった。お互いに拮抗した戦いは長く激しい戦いになり、やがて泥沼化した戦いになっていた。





、、、なんてことはなく、一瞬で勝負がついた。なんなら圧勝した。


(兄さんや団長と比べるとそこまで強さが感じられなかったな俺と同じで才能じゃなく努力で磨きあげた力だからこそ勝てたな)


俺は相手兜を外し首筋に剣を近づけ情報を聞き出すことにした。


「命が欲しいなら、お前が盗賊に入った経緯と隣国の情報を教えろ」


「お前らのような同盟国でもない奴に情報を渡すぐらいなら吐かずに死んでやるわ」


歯を食いしばりながらこちらに向けて殺せとの意志が伝わってくる。できれば騎士団に預ける前に情報を吐かせて罪を軽くさせたいため、さらに脅すことにした。


「今、吐けば拷問されることもなく俺が普通に過ごせるぐらいの保障してやる」


(元が日本で過ごしていたせいか誰であれ人々の苦しい姿は見たくないからなぁ〜)


「他国の奴に恩情をかけられるぐらいなら、くっ…殺してくれ!」


(今こいつはなんと言った?くっ殺せと言わなかったか?くっころなんて女騎士に言わせたい言葉ランキングNo.1のセリフだろ。遂に生で見れるとはな異世界転生は夢があるな。まて、こいつは!)


違和感を感じ騎士の方に目を向ける。そこには俺が理想としていた女騎士の姿はなくボロボロの鎧を着ているおっさんの姿が見えた。


おれが想像していた、透明感のあるブロンドロングで鎧が剥がれ質感のあるタワワを手で隠し恥じらいながら睨めつけてくる美人の姿はなく、


傷んでくすんでいる金髪に鎧が剥がれ手で隠すこともなく洗練された胸筋が隆起しており、恥じらうこともなく厳しい目で睨めつけてくるおっさんの姿があった。


(漫画で見たくっころと全然違うじゃねぇか。せめて性別くらい同じであっててくれよ。そこは男女平等にしなくていいから異世界)


俺が頭の中で落ち込んでいるなか、何もしないのを不思議に思ったのか元騎士団長が、


「いつまで待っても俺の意志は変わらないぞ」


「少し静かにしてろ。今、考え中なんだ」


俺の高圧的な発言に気圧されるかのように黙ってしまった。


「はぁ〜萎えたわ。もうお前拷問されろよ」


(お前のせいでくっころが180度変わってしまったじゃねぇかよ。今日せっかく娼館で俺のお気に入りだった女騎士のコスプレしてもらう予定だったのにもう見れなくなったじゃねぇか)


どうでもよくなった俺は元騎士団長を気絶させ縄で盗賊達ごと縛り付け帰ることにした。


「後のことはドSな兄さんに任せよう。流石に殺さないように頼んでおくか。あいつにとっては屈辱な恩情をかけてやろう」


騎士団長と兄さんに報告(仕事を押し付け)俺は今日のことを忘れるために夜の街へと掛けていった。



その後の元騎士団長はどうなったかは聞いてないが全てのことを吐き出したらしい


(兄さんやっぱ怖え〜)

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