『植物支配』の沈黙姫
26話 ポイントの大盤振る舞いに注意
「レオス様、少々よろしいでしょうか」
いつもと変わらない日常の日々。
獅子宮殿の各々のメンバーは好きに依頼を受けたり休日を満喫している。
執務室で仕事をしていた俺も、これが終われば昼間からマオと酒盛りでもしようかと考えていたところだった。
良いけど、何かあったのかファルシア?。
ファルシアがいつものメイド服ではなく、肌の露出を最低限にした服の上から革の胸当てだけをつけた軽装姿で部屋の中に入ってきた。
流石にそれを見て何かも問題がないと楽観視出来るほど能天気ではない。
「少し暇をいただきたく」
いとま? いとま......暇!。
あまりに衝撃的な内容に飲んでいた美味しくない紅茶を落としてしまう。
服にかかって熱いけれど、今はそんな事に気を向けていられない。
なっなんで! 何か気に食わない事があったか?。
最近、他の奴らが問題ばっかり起こすから嫌になったのか! ごめん、スグに言い聞かせるから!。
「いえ、そうではなく実家へ顔出しをしなければならない事となりまして」
ファルシアの言葉に一安心して小さな息を吐いた。
実家......世界樹の麓にある妖精郷『フォレスティア』にあるんだっけ?。
妖精郷は限られた手順を踏む事でしか踏み入れる事が出来ず、外界との交流も必要最小限しか行っていない。
ごく稀に、ファルシアや他のエルフ達のように外へ興味を示して外へ出る場合もあるけれどそれは少数だ。
「はい、具体的な日数は分かりませんが......」
そうか、もし何か俺に出来ることがあれば言ってくれ。
......今思えば俺が迂闊だったんだ。
別に後悔してるとかじゃないけどさ? でもこんな事になるなんて思わないじゃないか。
「実はこの前、100レオスポイントが貯まりました」
たしかグレア領に行く前にあげた奴だよな。えっそんな貯まったの?。
「はい、先日の騒動の際にポイントの大盤振る舞いをなさっていましたよね」
......そういえばポイント欲しいって言われたからあげた記憶があるね。
「そして100ポイントで1つ願い事を叶えてくれるとの事でしたよね」
言ってないけど......でもまぁファルシアの頼みなら聞くけどさ。
「そうですか」
ファルシアは、どこか嬉しそうに頬を緩めると一歩近づき俺の耳元で囁く。
「では私の恋人としてお母様へ挨拶へ行きましょう」
なんて?。
「まさか自分で言ったことを反故にするおつもりですか?」
えっいや! そうじゃなくて恋人? 誰と誰が?。
「私とレオス様がです」
話が飲み込めない。
どうしてそんな話になってるのかを考えても答えは出ない。
「......ダメですか?」
答えは出ない。
だけど、目の前で不安そうに視線を泳がすファルシアを見ればそんな事はどうでも良かった。
そんな訳ないだろ? 待っててくれすぐに準備してくる。
「いえ、その必要はありません」
え?。
「既にメンバー全員に通達済みです。さらにアリア様のご協力の元でレオス様の旅支度も既に完了しました」
わぁ流石ファルシアさん、仕事が早いねぇ。
コレはアレだな、どんなに抵抗しても意味のない奴だな!。
アハハハ! それであの......その手に持ってる魔工具はなんでしょうか。
「最新の捕縛用の魔工具です。もし抵抗が激しい場合に使う予定でした」
使う事が無く良かったと胸を撫で下ろしてるけどファルシアさん? 発想が怖いよ。
「獲物を前にしたら手段を選ぶなとお母様から教わりましたので」
良いお母様だね......でもさ、どうして恋人のフリなんかするんだ?。普通に仲間としてじゃいけないのか。
「実はお見合いをする事になってまして、その際に恋人を紹介すれば破談に出来るかと思いまして」
それなら断れば......。
「相手はエルフ族の第3王子なのです......最悪は会ったら最後、出る事は叶わないかもしれません」
そうか、そういう事なら分かった! 力を貸すぞ!。
恋人とか何をすれば良いか皆目見当もつかないけど任された!。
俺は虚勢を張ってファルシアの恋人役を引く受ける。
「ありがとうございます。レオス様」
正直な話、年齢=年齢の俺には完全に荷が重いけどファルシアが頼ってくれたんだ! 頑張るぜ!。
「まずは手を繋いでみましょう、練習ですので気を負わずに」
......ごめん、恥ずかしくて死にそう。
「前途は多難ですね」
本当にね。
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