乙女ゲーム大好きな主人公は、寝ている時でも、プレイ中のゲームの夢を見るほど。
しかしその夢の内容というのが、自分がゲームに出てくる悪女、ソウビになっていて、推しキャラに殺されるというもの。
どうせ夢で推しに会えるなら、もっとラブラブしてもいいんじゃない? まったく、とんだ悪夢を見たものです。
しかし、災難はこれで終わりません。再び眠って見た夢ではまたもソウビになっていました。
前回の夢と違って、殺される直前ではなく序盤のストーリーからのスタートだったので、いきなり殺されることはありませんでしたが、最後は悲惨な末路を辿ることに変わりはありません。
こんな悪夢、早く覚めてしまえ。そう思っているのに、覚めない、覚めない、どれだけ経っても、ぜんっぜん覚めない!
もしかして、夢の世界から出られなくなった? このままずっと、悪女ソウビとして生きていくしかないの!?
そんなの冗談じゃありませんが、それを言ったところで何が変わるわけでもありません。
ならばとるべき道はただ一つ。推しに嫌われないように、殺されないように、ゲームのソウビみたいな悪女にはならないということ。
ゲームで描かれた悪行を行わなければいいのだからそんなの簡単と言いたいところですが、なかなかうまくいきません。
この辺のうまくいかなさが、実にお見事。歴史上、悪女と言われる人達は何人か存在しますが、もしかしたら彼女達も、本人の意思とは関係なく、他人の思わくや偏見によって、悪女という汚名を着せられただけなのかも。
しかしそんな最悪な状況の中でも、嬉しいことはあるのです。
なにしろここは大好きなゲームの世界で、すぐ側には推しがいるのです。推しが目の前にいるのを喜ばないヲタクはいません。
例え最後は殺される運命だとしても、その幸せを噛み締める? いえ、やはりそんなものでは足りません。せっかく推しと出会えたのですから、嫌われるようなことがあっていいはずがありません。
脱、悪女。脱、死亡エンド。そして何より、脱、推しに嫌われること。
幸せと不幸が紙一重のこの世界で、ハッピーエンドを迎えることはできるのでしょうか。
王の妃という立場を利用して、国を傾かせるほどのわがままをしまくる、乙女ゲームの悪役ソウビ。
主人公はそんなゲームをプレイして楽しんでいたのですが、目が覚めると毒婦ソウビになってしまっていたのですからさあ大変。何故ならゲームのシナリオ通りに進んだら、ソウビは殺されてしまうからです。
悪役令嬢転生ものの本作。この手のお話の例にもれず、どうにかして死を回避しようと、ソウビは頑張ってくれます。
しかし死を回避するのも大事ですけど、そこは大好きな乙女ゲームの世界。
当然、推しの攻略対象キャラだっているわけで、推しから優しい言葉を掛けられ、美麗な顔で見つめられると、ズキューンと心臓を撃ち抜かれるくらいの衝撃を受けて、ゲームのシナリオ関係無しに死んでしまうのではないかってくらい、キュンキュンさせられます。
推しキャラにドキドキさせられる様子がとても丁寧に描かれていて、読んでるこっちまでキュンとさせられました。
せっかく転生したのですから、死亡回避だけでなく推しとも幸せになりたいですよね。
乙女ゲーマーの妄想とハラハラ、幸せが詰まった本作。推しイケメンに翻弄されながらも未来を変えようとするソウビを、応援してあげてください。