13: 地下水脈をさがす
「好きでやっているんでしょ?」 嫌味っぽくきみたちは言う
それはそうだ
きみたちのようにいやいややってるしごととはわけがちがう
きみたちのしごとは日々やってきて数をこなし 忙しくしてなにか大事なことを忘れてしまう
そのうち いったいなんでこんなつまらないことをやっているのか? と自問する
自問のために立ちどまっては困るので報酬をもらう 自問はとまる 思考停止
でもわたしたちのしごとはもっと深い
しごとにとりかかるまでものすごく時間がかかる
わたしは考える なぜ詩を書くか わからないから詩を書く
ことばをゼロからつむぐ 方法はない
わたしがつくる それは自由だけど厳しいしごとだ
退屈なときもある つらくくるしいこともある
でも自発的にしごとをやる わたしから離れて普遍的なところへ
まるで地下水脈のように 何度も砂漠を掘り 何度も荒野を探し
いちにちじゅう水がでないこともある
気がつけば夕陽が赤く空を染めている
それを見てわたしは頬を濡らしたことが幾度もあった
詩を書くのはしんどい もう限界だ
書きかけたことばをほうり出す 詩は置き去りにされる
だけどいつも詩になることばをさがしているわたしに気づく
詩のことばは ひょんなとき ひょんなところから見つかる
たとえば夜の散歩道の先に人通りのない小径で蛍が光っているような
たとえば見慣れた景色のなかに見慣れない景色と出会うような
そのときわたしは 詩を書いてよかったなと思う
安堵感と
充実感と
のちにくる焦燥感と 胸のざわめき
そのざわめきがわたしの何かをかき立てる
必死でことばをさがす
そしてことばをゼロからつむぐ
地下水脈がわたしに探してほしいと呼んでいる気がする
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