白玉の昊 起章 ④

珠邑ミト

起章

序文

序文



 天孫瓊瓊杵ににぎ木花之このはな佐久さく両柱の合祀たる白玉の贄為りし五座の民よ。これは朝に権をほしいままとしし不死原による密謀である。

 延喜三年を迎え、我が身も朽ちる間際。流刑の地にて只只国家安寧を祈るばかりの身である。維城これざね様に罪は非ず。偏に権を欲する心こそ危うけれ。

 赤白の因果は、宮中および斎宮に秘されて久しい。大化の御代に二柱の神威を顕現したからの女王ひめみこかばねもって護国の柱とし、つきのいわながを此岸に留めた。是、四方大海に囲まれし我国を災厄にて沈むる物である。

 唐の斜陽やむなし。大国の乱世に備え護国荒神求むるもまた無哉むなし

 なれど黄泉比良坂の開道を謀略し、荒神の還御かんぎょ望むるは、此岸と彼岸を黄泉戸大神にて隔てたる伊弉諾大神への背信との謗りをうくるも已無し。

 こころざし有る五座の民よ。如何にして護国を果たさんと欲するか。

 天智帝の御代に草薙剣を新羅沙門が持ち出したは寶盗の為に非ず。荒神還御かんぎょし寶刀振るわば国土沈むは日本のみに非ず。類は半島にも及ぶ。荒ぶる神威に頼み護国求むは諸刃の剣。努努其の危うき轍踏む不可べからず


 是を仮名文字にて表せば即ち解読易く、われが五座の民に真実を照らすべく策を腐心した事を悟られ、是を廃棄さるるも知れず。因って神域の文字にて記す。また是が難解であった場合を想定し、物語に擬して伝えんともす。是即ち、竹取物語である。

 また我が身分を実直に晒すは係累に対する危難となると判断し、我が幼名をここに残す。


                                阿呼




 かつて五百の昔に、我等が祖先を支配した帝があった。

 帝は歴代に渡りその国を治めてきたが、強大な近隣国からの干渉に晒され続ける事に苦慮し続けてきた。せめて飲み込まれる事だけは避けたいという思いから、大国の弱体化と滅亡を望んだ。

 そこに、一つの遠き異国より死者が降り立った。その望みを叶えよう。自分達にはその力を持つ神があり譲り渡す用意がある。その対価として、お前達が持つ神とその力とを置き換えるのだ、と。果たしてその密約は成った。





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