嫌いな鏡
あーる
嫌いな鏡
私の心は他の人たちから見たら空っぽかもしれない
でも私の心は私から見たら溢れ出してる
相棒が死んだ
大好きで 相棒で 片割れで 親友で
そんな双子の妹が死んだ
細胞が分裂するときから一緒 生まれる前も その後も
いく場所も やることも 考えてることも 何もかも一緒
体がふたつあることがおかしいくらいに
心はひとつだった
妹は小さいときから私の後ろをついてきて 私から離れなかった
私はそれが心地よかった 頼られることが誇らしくて 自信にもなっていた
なのに 最近は妹が隣にいると 居心地が悪い
名前を呼ばれることが嫌になった
姿を見ることが嫌になった
そばにいられることが嫌になった
あの日もそんな気持ちになって
学校から家に帰る時も 追いかけるから先に行って
そう言ってしまった。
妹は私の後ろじゃないとダメなのに
妹に追いつかないくらいの時間を学校で過ごして 私も家に帰る
学校と家の中間くらいの位置になって 人だかりを見つけた
なんだろうとは思ったけど興味はなかった だから横を通り過ぎようとした
でも 通り過ぎる私の横で妹が倒れてた
私の興味は一気でそちらに向いた
妹のことを考えると居心地が悪かった
でも今は違う居心地の悪さが私にはあった
それから気づいたら病院にいて みんな泣いてた
妹は寝ていて 何も反応してくれない
私が先に家に帰ってと言ったから怒っているのか
そんなのはいくらでも謝るし
これからは嫌と言われても一緒に帰るから 機嫌を直してほしい
でも手に触れた妹の体温がそれを許してはくれなかった
葬式とか学校のお別れ会とかがあったけど
覚えてない
みんな私を心が空っぽになってしまったって言ったけど
違う
私の心は妹でいっぱいだ
私は妹がいつも使ってた手鏡をずっと覗いてた
この手鏡は『形見』だから大切にしないといけないらしい
でも私はこの鏡が嫌いだ
私が見たいのは私じゃなくて妹だから
最初この鏡に映った自分が妹だと本気で思った
今でもたまに一瞬間違える時もある
遠くで私を呼ぶ声が妹の声に聞こえたり 遠くにいる人が妹に見えたりもする
でもいつか妹の声も聞こえなくなって 姿を見間違えることもなくなって 鏡を嫌うことも無くなって
妹を忘れるてしまうのかな
忘れたくない
妹が後ろにいることが 私の誇りで自信だったから
何より妹がいないと居心地が悪い
ずっと一緒だと思ってた
生まれる前から一緒で
今までも これからも一緒がよかったのに
鏡に映った自分の顔が情けなくて笑える
なぜか妹に笑われた気がした
いつかこの鏡に映る自分を真っ直ぐ見れるかな
そのとき後ろには妹がいてくれるかな
いつかこの鏡を大切にできる日が来るといいな
今までも これからも 心はひとつなんだから
嫌いな鏡 あーる @RRR_666
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