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「ねぇ、翡翠ひすい、占いに行かない?」


 ある日、小学校からの友人の愛唯めいが、私をそう言って誘って来た。


「何よ、いきなり。愛唯って占いとか信じたっけ?」


 私は、思いっきり怪訝な顔をして、愛唯に尋ね返した。










 緒方おがた翡翠。26歳。これまで、付き合った男の人は2人。どちらも、向こうから告白されて、私がフラれた。原因は、私が内向的すぎるから。外でキスとかありえないし、彼氏とは言え、家に行くのも、ぐずぐず言って、断わる事が殆どだった。


 別に、勿体付けてるとか、特別何が嫌、って訳ではなかったけれど、結局、目的は知れてるから、そんなに急がなくても、それが済むまでは、フラれる事は無いと思って、何かと理由を付けて、彼らの部屋には行かなかった。


 それは、本当に的中して、してからすぐ、2人からフラれた。2人とも、我慢できたのは、2人して、半年だった。結局、男ってそうなんだ。少し、見た目の良い女がいたら、とりあえずアタックして、それも、私みたいに断るのが下手そうな奴をうまい事見つけて、押してくる。それと、何気に体形をチェックして、出ている所が出ていれば良い、みたいな…。私も私で、26歳までに経験が2回でもあれば、まぁ、恥ずかしくはないか…と、何とも割り切った考えをしていた。


 そんな恋愛だけを2回したからって、男を知ったような口を利く私もどうかと思うけど…。でも、運命のような恋を、どこかで夢見てしまう。それは、幼い頃から、変わらなかった。


 幼稚園のお絵描きの時間は、必ず、お嫁さんとお婿さんを描いた。お婿さんは、お嫁さんより、背が高くて、足が長い。後は、子どもの絵だから、よく分からない。格好良いのか、短髪が好きなのか、ミディアムが好きなのか、…まぁ、ロングは、今の所、好きではない。きっと、あの頃も、ロン毛は、嫌だった気がする。


 そんなこんなで、好きになられた事も、なった事も、あったのか、なかったのか、今も、よく分からない。


 だけど、この日、愛唯に占いに誘われて、私の人生は、一変する―――…。





「ここ。ここ。すんごい良く当たるって、有名なんんだよ!予約に3週間かかっちゃった!」


「え?3週間?…すんごいお金取られたりするんじゃない?大丈夫?」


 私は、そんな心配が頭を過った。


“よく当たる”とか“順番を取るのに時間がかかる”とか、ぼったくりの典型だ。


「ねぇ、そもそも、なんで突然占いな訳?」


「実はぁ…、実はねぇ…」


 歯切れの悪い、愛唯に少し苛立った。


「何なのよ!早く言いなさいって!」


「もう、そんな怒鳴らないでよ。分かった!言うから。実はね、運命の人に逢っちゃったの!!」


「…はあ?」


 顔を真っ赤にして、お前は中学生か、みたいに目をギュっと瞑って、愛唯はそう言った。


「その人との、相性、占ってもらいたくて…。でね、何とか予約、取ったんだ!」


「なんだ、じゃあ、1人で来れば良かったじゃん。私、いる必要ある?」


「ある!なんか、悲しいこと言われたら、慰めてくれる人がいなきゃ、怖くて来られないよ!」


「はぁ…」





 私は、大きな、溜息を吐いた。


 でも、予想していなかった。

 この後、衝撃的な占いをされるのが、まさか、私だったなんて―――…。

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