嫌われSUMMER

ねがきゅーと

嫌われ者の夏が来た

 いつから夏はこんなに嫌われたのだろう。


 8月も中盤に入り、今年の夏休みも残すところ2週間ほどとなった。


「まだ、冷凍庫にアイス残ってるかな。」


 親が出掛けた頃合いを図り、一階のリビングまで降りると、テーブルの上に積み重なったクラフト封筒が目に入った。


『源次くん。2学期は行事が盛り沢山です。

 クラスの皆んなで待ってます。 仲川』


 担任のメモ書きが付いた封筒からは、はち切れんばかりの課題がつまっていた。


 もう、無理に課題を終わらせる必要はないのだ。


 アイスの蓋を開けながら、テレビをつけると、気象予報士が例年よりも平均気温が2.5℃上昇したことを訴えていた。


『東京では、熱中症患者の数は昨年の3倍に

 増加しました。

 皆さんくれぐれも外を歩くときには-』


 チャンネルを変えると、街頭インタビューを受けるサラリーマンが目に留まる。


『営業なので、やむを得ず外に出ますが、 

 やっぱり夏は辛いですね〜。

 秋がくれば、もうすこしは過ごし-』


 舌打ちをしながらテレビを消す。アイスを持って、二階の自分と部屋へと戻った。


 もう一年近く家から出ていない。所謂引きこもりで、不登校だ。だから外が暑かろうが、寒かろうが、エアコンの効いた部屋で過ごす僕には関係ないのである。


 不登校になったきっかけなんて無い。強いて言えば、体育の時間にペアを組む友達がいなかったことぐらい。あとは、お昼休みをずっとトイレでやり過ごしているのをクラスメイトにからかわれたことか。その程度だ。


 元々学校なんて好きじゃない。勇気を出して、学校の相談室に行った時だってそうだ。女性カウンセラーに、学校に居場所がないと打ち明けると、彼女はこう言い放った。


「それって本気の悩みなのかしら。

 私から見たら、そこまで深刻には見えない

 し、虐められているわけでもないのよね。

 

 あなた自身、変わろうと何か努力はしたの

 かしら。」


 何も言い返せなかった。同時に、そこから僕は学校に行くのをやめた。ちょうど去年の夏休みに入る前のことだ。


 こんな自分が学校に行ったところで、周りの人間を困らせるだけだろう。


 きっと今年の夏と同じ。嫌われ者が来た、って思われるのだろう。




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